ソニー製品との融合が進む新生「ソニーモバイル」、ゲームチェンジを目指すKDDI石野純也のMobile Eye(1月6日〜1月19日)(1/2 ページ)

» 2012年01月20日 19時48分 公開
[石野純也,ITmedia]

 モバイルの進化の歩みは、文字どおり日進月歩。スマートフォンへの移行が進む現在は、特にその傾向が顕著だ。毎日のように重要なニュースが流れ、気を抜くとあっという間に流れ去っていく。とはいえ、毎日PCに張りついて逐一記事を追うのも、状況によっては難しい。そこで、新たに始まる本連載では、2週間の中でモバイル業界に起こった必読のニュースを3〜4本程度ピックアップ。取材で得た情報や筆者独自の視点も交えながら、読者の皆様にお届けしていきたい。

2012 International CES開幕、ソニー・エリクソンはソニーモバイルへ

photo 米国・ネバダ州のラスベガスで開催された「2012 International CES」

 1月10日から13日にかけ、米国・ネバダ州のラスベガスで「2012 International CES」が開催された。世界最大の家電見本市というだけあって、このイベントに注目していた人も少なくないだろう。全世界でスマートフォンへの移行が進む中、関連製品も多数出展された。とは言え、Nokia、Samsung電子、LGエレクトロニクスの大手は、北米市場に向けた端末の出展にとどまっている。日本も含むグローバルに向けた発表を行ったという点では、Sony EricssonとHuaweiの新製品が強く印象に残った。

 中でも、Sony Ericssonについては、社名変更や新製品の発表があり、今後の市場動向を占ううえで、重要なアナウンスが多かった。ソニーは、CES前日に開催されるプレスカンファレンスで、新社名を「Sony Mobile Communications(ソニーモバイルコミュニケーションズ)にすると発表。同日、同会場で披露された「Xperia S」(日本では「Xperia NX」)および、米国・AT&T向けの「Xperia ion」は、ソニーブランドを冠して発売されることになった。ブースに展示された端末には、まだSony Ericssonのロゴが付いていたが、これはあくまでタイミングが合わなかったためだという。市場に出回るモデルはすべてSONYのロゴになることが予定されている。一方で、日本市場には「Xperia NX」と「Xperia acro HD」が投入されるが、こちらはSony Ericssonのままだ。世界市場に先駆けいち早く登場するため、これらの機種はブランド変更が行われないようだ。

photophotophoto Sony Mobile Communicationsの名称を発表する、ソニーの副社長 平井一夫氏(写真=左)。サービスを軸に、XperiaとSony TabletやWalkmanが分け隔てなく展示されていた(写真=中)。SONYのロゴを冠した「Xepria S」。グローバルでは、このモデルからSonyブランドとなる(写真=右)

 戦略的には、Xperiaシリーズで打ち出されていたソニーとの連携が、さらに強化されていく。ソニーブースの隅に置かれていた2011年のCESにおける「Xperia arc」とは異なり、今年はXperia SとXperia ionが各製品のコーナーにも展示され、連携性をアピールしていたことも100%子会社化の成果の1つと言えるだろう。実際、Sony Ericssonのチーフ・マーケティング・オフィサー、スティーブ・ウォーカー氏はXperiaシリーズのことを「ソニーグループのコンバージョン戦略を推進するための根幹となるもの」と述べていた。また、Xperia S/ionについても、オーディオはWalkmanチームと、HDMI連携はブラビアチームと密接に関わりながら開発するなど、今まで以上に製品面での融合も進んでいる。

photophoto ミュージックプレイヤーの音響効果や、テレビ連携時のUIなどに、ソニーのノウハウが生かされている

 一方で、Androidで蓄積したSony Ericssonのノウハウも重要になってくる。ウォーカー氏によると、Androidに注力するという方針に変わりはないことを明かし、最新OSに対しても積極的に対応していくという。ソニーグループの一員として、コンテンツやサービス、AV機器のノウハウという武器を手に入れた新生ソニーモバイル。CESでの発表内容からも、今後の展開に期待が持てた。

photo Androidに注力する方針は変わらないと語る、Sony EricssonのCMO、スティーブ・ウォーカー氏

KDDIがau発表会を開催、固定とのセット割引でゲームチェンジを目指す

 KDDIが、16日に「au発表会」と銘打った会見を開催した。“新機種発表会”でも“サービス発表会”でもないことからも分かるように、内容は多岐にわたり、アプリ500本や10Gバイトのオンラインストレージなどが使い放題となる「auスマートパス」や、FTTHとスマートフォンをセットで割り引く「auスマートバリュー」、グローバルメーカーを中心としたスマートフォン5機種など、幅広く発表された。これらに加え、新しいauロゴも披露され、同社が推進しようとしている「3M戦略」も解説された。

 一連の発表の中で、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏が「ゲームチェンジ」と呼び、期待を込めるのが「auスマートバリュー」。簡単に説明すると、これは、スマートフォン用の携帯電話回線とFTTHやCATVなどの固定回線をセットで利用する際の割引サービスのこと。2年間にわたり、「プランZシンプル」の月額使用料に相当する980円が無料になり、パケット定額プランの「ISフラット」が月額5460円から4960円に下がる。両方を合計すると、最大で1480円の割引を受けられるという計算だ。

 では、なぜこのサービスがゲームチェンジになるのか。質疑応答でARPUへの影響を問われた田中氏は「モバイル系のARPU、固定系のARPUという形ではなく、両方をセットにしたFMCでのARPUを考えていく」と回答しているが、ここにヒントがありそうだ。KDDIのライバルに目を配ると、例えばNTTグループは東西とドコモが分かれており、法規制もあるため同様のサービスを大々的に展開するのは難しい。ソフトバンクについても、KDDIのようなFTTHやCATVといった固定のネットワークは持ち合わせていないのが現状だ。セットでの割引で他社に対する優位性を打ち出せる上に、モバイルと固定のどちらか一方に加入しているユーザー/世帯をKDDIに引き込める――auスマートバリューには、このような狙いがある。まさに、モバイルはモバイル、固定は固定という“従来型のゲーム”を変えていこうとしているのだ。

photophoto グローバルモデル4機種とテンキー付きで注目を集めた「INFOBAR C01」が発表された(写真=左)。新たな施策を「ゲームチェンジ」だと語る、KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏(写真=右)
photophoto 会見の冒頭には、KDDIの思いを込めたメッセージが映し出された(写真=左)。auスマートバリューの概要。家族4人の世帯では、auひかりの「ギガ得プラン」が実質無料になる(写真=右)

 1480円という割引額も、絶妙な設定と言える。田中氏が「スマートフォン限定とご理解していただければ」と述べているように、auスマートバリューはフィーチャーフォンの料金には適用されない。パケット定額プランの上限が4410円(ダブル定額ライトなどでフルブラウザ非利用時)であったフィーチャーフォンから、5460円(ISフラットの利用時)のスマートフォンにユーザーが移れば、単純計算で、KDDIにとって1050円の増収になる。割引を実施したとしても、大幅な減収にはならないというカラクリがあるわけだ。むしろ、スマートフォンへの切り替えによって、積極的にパケットや、auスマートパスのようなサービスを利用するようになれば、モバイル、固定に加えてコンテンツ料や課金代行収入まで含めた、トータルでのARPUを向上させることができる。もちろん、今回の発表はこうした構想の一端に過ぎない。これから年末にかけ、さまざまなサービスを立ち上げていくことになるはずだ。KDDIの新たな戦略を、期待して見守りたい。

photo モバイルだけでなく、固定も含めた3M戦略が本格始動。マルチデバイスも推し進める

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