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» 2012年02月13日 15時00分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:子どものネット利用とプライバシーの問題(1)

シマンテックは、子どものスマートフォン利用を監視する「セーフティマインダー」を無償公開した。年齢や保護者の教育方針に合わせてWebのフィルタリングを行えるというが、どんな動作をするのか実際に試してみた。

[小寺信良,ITmedia]

 PC向けセキュリティソフトで知られるシマンテックが、Android版の監視アプリ「ノートンセーフティマインダー」を無償公開した。子どものネット利用を監視するためのもので、Webのフィルタリングとリポート機能を備えている。

 これに関してネットでは、子どものプライバシーはどうなるのかといった疑問の声も聞かれる。ただ、実際にどのような動作なのかを知らずに懸念だけしても仕方がない。そこで実際にアプリをインストールして、何ができるのかを試してみた。

 利用を開始するには、Android端末にアプリをインストールすることに加え、PCを使って「ノートンオンラインファミリー」というサービスにサインアップする必要がある。こちらのオンラインの方で、子どもの名前や生年、保護したい個人情報などを入力する。

 ここでは、守りたい個人情報そのものをシマンテックに預けることになるのが、ちょっと気になるところだ。しかも米国に送信されるとある。米国の法律改正次第で、米国人以外の個人情報がどのように扱われるか分からないのが、怖いところだ。

photophoto 保護したい情報は米国のサーバに格納されるようだ(写真=左)。小学生向けのフィルタリングプリセット(写真=右)

photo Androidアプリ側には設定項目は何もない

 フィルタリングされるWebはカテゴリー別に分けられ、年齢別のプリセットもある。左側にはインスタントメッセージやSNSへの制御機能もあるが、これはPC向けサービスの設定項目であり、今回無償公開されたAndroidアプリでは、Webのフィルタリング機能とリポート機能だけだ。

 Android側のアプリには設定項目などはない。子どもに対する注意書きがあるぐらいで、常駐していることを示すアイコンが通知領域に表示される。

 Android側の「設定」にある「アプリケーションの管理」からアンインストールを試みたところ、拒否された。報道資料によれば、ノートン オンライン ファミリーのアカウントとパスワード入力画面が出るはずだが、出てこなかった。テスト端末はちょっと古いので、OSは2.3.3である。このあたりは、Androidのバージョン違いで動作が異なる可能性もある。

 また「実行中のサービス」から強制的に実行を停止してみたが、できなかった。子どもが勝手にサービスを停止することは、簡単にはできなさそうだ。

監視機能の動作

photo 小学生の設定では、Googleの検索結果も見られない

 セーフティマインダーを実行中の端末で、「にちゃんねる」と検索してみた。今回の設定は小学生なので、オンラインチャットやSNSへのアクセスが規制されているわけだが、2ちゃんねるにアクセスする以前に、Googleの検索結果そのものを見ることができなかった。Googleの検索結果にはサマリーも表示されるので、そこで内容がだいたい分かるケースもある。それを懸念したものだろう。

 Webフィルタリングの設定を17歳に変えてみた。オンラインでの変更は、すぐに端末側に伝えられる。17歳でもアクセスが規制されている「自殺」のキーワードをGoogleで検索してみたところ、検索結果は見ることができた。

 またWikipediaの「自殺」を説明したページや、自殺を思いとどまらせるためのページにはアクセスできたが、2ちゃんねるの自殺掲示板にはアクセスできなかった。以前懸念されていた、適正なサイトまでフィルタリングされてしまう問題は、カテゴライズの見直しにより、うまく解決されているように思える。

 では保護者向けのリポート機能を見てみよう。子どもが遮断カテゴリのサイトにアクセスしようとした場合は、保護者宛にメールが届く。さらにノートンオンラインファミリーの管理画面では、アクセスが遮断された履歴を見ることができる。リンクをクリックすると、実際にアクセスしようとしたサイトを見ることができる。

photophoto アクセス遮断が発生すると、保護者にメールが届く(写真=左)。管理画面では、遮断したサイトのリンクが表示される(写真=右)

photo Googleで「にちゃんねる」を検索しようとしたことが分かる

 例えばGoogleの検索結果が遮断されたのであれば、何のキーワードを入力したのかが分かる。このあたりが、プライバシーの問題となるところである。

 ただ、どのように監視したいかは、オプションで選択することができる。サイトを遮断すれば遮断履歴が残るわけだが、警告を発するだけでサイトの表示を許可する場合は、遮断履歴は残らない。また閲覧は許すが、禁止されたサイトへのアクセス履歴は録るようにも設定できる。

 「概略」のタブでは、どのサイトカテゴリが多いかをグラフで見ることができる。このあたりも、子どもが何に興味を持っているかを知るにはいいが、見方によってはプライバシーの問題が懸念される部分だろう。

photo サイトアクセスの傾向も把握できる

 今回は動作検証を行なうのみとして、次回はもっと具体的に子どものプライバシーとリテラシー教育のバランスについて考えてみたい。読者諸氏もこの検証結果を踏まえて、一緒に考えていただけると幸いである。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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