Androidスマートフォンではバッテリーの持ちを向上させるために、省電力機能を備えているものが多い(機種ごとの省電力機能は前項の表を参照)。NTTドコモは同社のスマートフォン共通の「ecoモード」アプリをプリセットしており、独自の省電力機能を持つNECカシオモバイルコミュニケーションズ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、シャープ製以外の機種で利用できる。省電力機能やアプリを利用することで、Wi-Fi、Bluetooth、GPS、アプリの自動同期などが一括でオフに、ディスプレイの明るさが低輝度になるなど、バッテリー消費の大きい機能を簡単に停止できる。機種によっては、省電力にするための項目を自分で設定する、指定したバッテリー残量になったら自動で省電力モードに移行するなどの設定もある。
この中で特に工夫を感じられるのがシャープの「エコ技」だ。エコ技では「通常モード」「技ありモード」「お助けモード」という3つのモードを用意している。充電環境がない中でバッテリー消費を抑えたいときは技ありモード、1分1秒でもバッテリーを抑えたいときはお助けモード、といった具合に使い分けられる。初期状態は通常モードに設定されており、そもそもエコ技オフという概念はない。モードによって省電力設定の内容は異なるが、通常と技ありについては(Wi-FiはオフになるがBluetoothはオンにするなど)設定をカスタマイズできる。独自機能として注目したいのが「省エネ待受」だ。これをオンにすると、ディスプレイが消灯した際にバックグラウンドで動作するアプリの動作が停止し、無駄な通信を抑えられる。朝起きてスマートフォンをチェックしようとしたら、いつの間にかバッテリー残量がゼロになっていた――といった事態も少なからず防げるだろう。この省エネ待受が有効のときに停止するアプリは、「対象外リスト」でユーザーが決めることもできる。同リストで任意のアプリのチェックを外せば、そのアプリは省エネ待受の稼働中にも停止されなくなる。また、指定した時間に通常/技あり/お助けモードに切り替える機能もあるので、例えば就寝中はお助けモードにするといった使い方もできる。
ドコモが提供しているecoモードからも詳細な設定が可能だ。省電力設定をカスタマイズ、バッテリー残量に応じてecoモードをオン/オフ、ピクトエリアにバッテリー残量を常時表示、充電中にecoモードをオン/オフ、ウィジェットからワンタッチでecoモードをオン/オフにするなどが可能。バッテリー残量に応じて省電力機能を有効にするのは他機種でもおなじみだが、ecoモードでは、Wi-Fiオフは50%から、自動同期オフは30%から、画面の明るさ低輝度は20%からなど、自動で切り替わるバッテリー残量を“項目ごとに”設定できる。
京セラが「DIGNO ISW11K」と「HONEY BEE 101K」に搭載した「省電力ナビ」では、省電力モードを設定すると、待受時間がどれほど延びるかの目安が分かる。省電力の設定をカスタマイズできる「カスタム省電力モード」では、「Wi-Fiをオフにすると待受時間が約36分延びる」など、項目ごとの効果も参照できる。MEDIAS PP/LTE/CHに搭載されている「ecoモード」では、設定したバッテリー残量になると自動で稼働する「オート」、省電力設定の内容を自由に決められる「お好みecoモード」、より徹底して節電する「しっかりecoモード」を利用できる(MEDIAS BRではオートかオンのみ)。さらに、MEDIAS PP/LTE/CHには画面の自動回転、Wi-Fi、Bluetooth、GPSなどを一括で切り替えられるウィジェット「外出設定」「自宅設定」「就寝設定」などもある。環境や時間帯に応じて使い分けると便利だ。
GALAXY S II LTEとGALAXY S II WiMAXには同じ名称の「省電力モード」が搭載されているが、設定内容が異なる。GALAXY S II WiMAXでは省電力モードを即オンにできるが、GALAXY S II LTEではバッテリー残量が70%以下になったときからしかオンにできない(70%未満の他の%にも変更可能)。また、省電力設定に自動移行するバッテリー残量は、GALAXY S II LTEは先述のとおり70%からだが、GALAXY S II WiMAXは50%からとなっている。
このほか、富士通東芝は「エコモード設定」、Huaweiは「省電力モード」、HTCは「自動省電力機能」、Motorola Mobilityは「バッテリーモード」、パナソニック モバイルは「エコナビ」を用意している。「GALAXY NEXUS SC-04D」をはじめとするAndroid 4.0搭載スマートフォンでは、アプリごとにバックグラウンドの通信を制御できる。これはデータ通信量を抑えるために新設された設定だが、省電力にも貢献するだろう。
なお、iPhoneはここで取り上げたような省電力機能はプリセットしておらず、無線LAN、Bluetooth、GPS、画面の明るさなどは「設定」から個別に変更する必要がある。これはこれで手間がかかるが、iPhoneはAndroidほど省電力設定を施す機会は少ないのではないだろうか。というのも、iOSではAndroidに比べてアプリがバックグラウンドで動作して負荷を与えることが少ないからだ。iPhoneではホームキーを2回押すと、画面下部にこれまで使用したアプリ一覧が表示されるが、これらはあくまで「最近使ったアプリ」であり、すべてがバックグラウンドで動作しているアプリではない。実際、電源を切って再起動をしても、これらのアプリは画面下部に表示される。AppleのWebサイト(外部リンク)にも解説されているが、バックグラウンドでアプリが動作していても、メモリやバッテリーへの影響は少ない。画面下部のアプリ一覧からアイコンを長押しして「−」をタップすればアプリは終了するが、必ずしも終了させなくていいわけだ。
そもそもiPhoneにはバックグラウンドでの通信をオフにするといった設定がない(通知のオン/オフはできるが)。GPS、音楽やラジオ、VoIPアプリなどバックグラウンドでも動き続けるアプリについては、ピクトエリアにアイコンなどで動作中である旨が表示される。Androidでは必要以上に裏で通信をするアプリが多いため、必然的にバッテリーの消費が増す。せっかくのスマートフォンなのにWi-FiやGPSをオフにするのはスマートではないし、省電力設定なしで快適に使えるのが理想だろう。
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