ここまでバッテリー容量、連続使用時間、省電力設定などを見てきたが、実際のところバッテリーが持つのはどの機種なのか。これを調べるため、2月5日から2月23日にかけて、東京都江東区の室内にて35機種のベンチマークテストを実施。35機種で2時間強のYouTube動画を再生し、1時間後と2時間後のバッテリー残量を記録した。
計測条件は以下のとおり。
なお、スケジュールと充電環境の都合上、35機種すべてを同じ時間帯ではテストできなかった。完全に同一の環境下で実施したテストではないので、数値はあくまで参考値ととらえてほしい。
1時間後と2時間後に最もバッテリー消費量が少なかったのは、MEDIAS PPだった。最初の1時間では6%しか消費せず、2時間後の残量は唯一の80%台である80%だった。MEDIAS PPの「PP」は「Power Plus」を意味するが、バッテリー機能に注力したPPの面目躍如といえる。次いで好成績だったのが兄妹モデルのMEDIAS CHで、2時間後の残量は76%だった。iPhone 4Sのバッテリーも安定しており、auとソフトバンクともに1時間後が82%、2時間後が73%だった。バッテリー容量が最大のGS02も長持ちし、2時間後は64%だった。以下、GALAXY S II WiMAX(58%)、「STAR7 009Z」(56%)、103SH(54%)と続く。2時間後の残量は40%〜50%台前半が最も多かった。スペック上の連続待受時間が最長の103SHは7位、バッテリー容量が最小の101SH(1020mAh)は13位の50%で意外と持ち、必ずしもスペックに準じた結果にはならなかった。
一方、バッテリー消費が最も激しかったのがMEDIAS LTEで、2時間後にはわずか11%しか残らなかった。同じNECカシオ製のMEDIAS PP/CHとは対照的だ。MEDIAS LTEのバッテリー容量1520mAhはPPやCH(1700mAh)よりは少ないが、それだけでここまでの差が生じたとは考えにくく、LTE対応のベースバンドチップが影響している可能性が高い。次いで19%のARROWS Z、24%のSH-01Dもあまり持たなかった。
MEDIAS LTE、ARROWS Z、SH-01Dに共通するのがHD液晶を搭載していること。解像度が上がるとピクセルのサイズが小さくなり、バックライトの光が透過しにくくなる。したがって相応の輝度アップが必要になり、その分消費電力が増す。ただ、同じくディスプレイ解像度がHDで有機ELを搭載するGALAXY NEXUSは50%、GALAXY S II WiMAXの残量は58%で比較的長持ちした。MEDIAS PP/CHのディスプレイも有機ELだ。再生した動画は黒い背景が多かったため、自発光の有機ELは液晶よりも消費電力を抑えられたのかもしれない。そう考えると、HDに次いで高解像度の640×960ピクセルの液晶を搭載するiPhone 4Sは優秀だ。iPhone 4Sのバッテリーの容量は公表されていないが、1420mAh程度と言われており、2時間後の残量上位のモデルよりも少ない。ソフト側で消費電力を抑える高度な処理が行われているのだろう。
「バッテリーがあまり持たない」と言われるLTEスマートフォン(参照記事)ではGALAXY S II LTEの52%が最も長持ちした。ARROWS X LTEは41%、Optimus LTEは35%で、MEDIAS LTEも含めて全体的に低調だった。auのWiMAX搭載スマートフォンでは58%のGALAXY S II WiMAXが最も持ち、以下「MOTOROLA PHOTON ISW11M」(50%)、「HTC EVO 3D ISW12HT」(48%)、DIGNO (43%)、ARROWS Z(19%)と続く。WiMAX/LTE対応機は、どちらもSamsung端末が高い実力を発揮している。
1時間後 | 2時間後 | |
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F-03D Girls' | 74% | 47% |
ARROWS X LTE F-05D | 72% | 41% |
ARROWS μ F-07D | 76% | 53% |
Optimus LTE L-01D | 72% | 35% |
PRADA phone by LG L-02D | 74% | 50% |
MEDIAS PP N-01D | 94% | 80% |
MEDIAS LTE N-04D | 67% | 11% |
P-01D | 80% | 52% |
LUMIX Phone P-02D | 74% | 47% |
GALAXY S II LTE SC-03D | 76% | 52% |
GALAXY NEXUS SC-04D | 75% | 50% |
AQUOS PHONE SH-01D | 64% | 24% |
AQUOS PHONE slider SH-02D | 74% | 46% |
REGZA Phone T-01D | 66% | 31% |
ARROWS Z ISW11F | 62% | 19% |
ARROWS ES IS12F | 75% | 48% |
DIGNO ISW11K | 71% | 43% |
HTC EVO 3D ISW12HT | 74% | 48% |
Optimus X IS11LG | 67% | 29% |
MOTOROLA PHOTON ISW11M | 80% | 50% |
MEDIAS BR IS11N | 78% | 41% |
GALAXY S II WiMAX ISW11SC | 82% | 58% |
AQUOS PHONE IS13SH | 76% | 52% |
AQUOS PHONE IS14SH | 64% | 27% |
iPhone 4S(au) | 82% | 73% |
HONEY BEE 101K | 67% | 34% |
MEDIAS CH 101N | 90% | 76% |
LUMIX Phone 101P | 74% | 49% |
AQUOS PHONE THE HYBRID 101SH | 77% | 50% |
AQUOS PHONE 102SH | 72% | 41% |
AQUOS PHONE 103SH | 78% | 54% |
STAR7 009Z | 76% | 56% |
iPhone 4S(ソフトバンク) | 82% | 73% |
GS02 | 88% | 64% |
Sony Ericsson mini(S51SE) | 73% | 45% |
先述した省電力機能をオンにした状態ではどうか。SH-01Dでエコ技の技ありモード、ARROWS Zでエコモード(すべての省エネ機能をオンにした)を有効にしたところ、2時間後の残量はSH-01Dが36%(24%から向上)、ARROWS Zが33%(19%から向上)で、一定の効果が得られた。GS02の省電力モード使用後も、2時間後の残量は省電力モード未使用時の64%から、70%に上がった。一方、DIGNOの省電力ナビ使用後の残量は、未使用時の43%よりも少ない41%だった。今回のテストではバックライトが常時点灯していたので、あまり効果が得られなかったのかもしれない。
バッテリーをいかに持たせるかは、現在も各メーカーが苦心している部分だ。バッテリー容量、ディスプレイ、CPU、アプリ通信など、さまざまな要素からアプローチする必要があるだろう。一朝一夕に解決できるものではないが、スマートフォンの省電力化がさらに進むことを期待したい。
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