「スマートフォンを越えた体験をお届けする」――新生Sony Mobileが目指すものMobile World Congress 2012(1/2 ページ)

» 2012年03月09日 00時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

 Sony Ericssonがソニーの100%子会社となったことで、2月15日から「Sony Mobile Communications(以下、Sony Mobile)」に社名変更。2月27日から3月1日まで開催されたMobile World Congress 2012(以下、MWC)ではSony Mobileとして初めて出展し、新モデル「Xperia P」と「Xperia U」も発表した。Sony Mobileの強みはどこにあるのか。Head of Product portfolio Planningの大澤氏に話を聞いた。

100%ソニー傘下になったことで連携しやすく

photo Sony Mobile Communicationsの大澤氏

―― CESで発表した「Xperia S」「Xperia ion」と、今回のMWCで発表した「Xperia P」「Xperia U」の反響はいかがですか?

大澤氏 CESでは米国市場を特に意識して発表しました。弊社はこれまで米国でのプレゼンスはそれほど高くありませんでしたが、Xperia ionを発表したことで、非常に大きな反響を得られました。2012年のフラッグシップ機であるXperia Sは、Floating PrismやUI(ユーザーインタフェース)を含めて、「さすがソニーらしいアイコニックなデザインだ」とご好評いただいています。そして今回、Sに続くXperia P/Uを発表したことで、2012年前半戦のラインアップがそろいました。

―― Xperia S、P、Uそれぞれターゲットの違いはどこにあるのでしょうか。

大澤氏 Xperia Sはフラッグシップ機であり、ポートフォリオの頂点に立つモデルとして非常に高いスペックを実現しています。ディスプレイはスマートフォンの中でも高解像度の720×1280ピクセル、サイズも4.3インチと大きく、ソニーのモバイルブラビアエンジンやExmor R for mobile対応の12メガピクセルカメラを搭載し、特に画質と映像はフラッグシップとして恥ずかしくない仕上がりになりました。それに対し、Xperia Pはハイエンド機の一部として映像美にこだわり、ソニー独自の「WhiteMagic」技術を使っています。三男坊であるXperia Uのコンセプトは「自分ならではのXperia」。普及価格帯や女性でも手になじみやすいサイズにこだわり、すそ野を広げていくことを目指しました。

―― Xperia S、P、Uいずれも「NXTシリーズ」として展開していますが、NXTシリーズの基準のようなものはあるのでしょうか。

大澤氏 Androidスマートフォンに参入してから2年が経ち、今年で3年目を迎えました。今までは携帯電話そのものを良い物に仕上げることに注力してきましたが、今年は100%ソニー傘下になったことで、その先の強みが出てきました。端末だけでなく、ネットワークサービスやコンテンツを含め、ソニーのエンターテインメント体験をお客様に感じてもらえるかが重要です。NXTシリーズも含め、今後は、スマートフォンを越えた体験をお届けるするという意味を込めて"beyond smartphone"をキーワードに展開していきます。

photo 左から「Xperia S」「Xperia P」「Xperia U」

―― NXTシリーズでは商品名にアルファベット1文字が付きますが、今後もこのようにルール化していくのでしょうか。

大澤氏 今後の話についてはコメントを控えさせていただきます。また品目名について、日本では事業者様と一緒に決めていくことになります。

―― Xperia Sと同時に発表された「Xperia ion」はコンセプトが異なるということでしょうか。

大澤氏 NXTはグローバル共通、ポートフォリオの背骨になるシリーズです。一方、ローカライズも弊社の強みなので、各市場の動向に合わせた形が必要になります。

―― スマートフォンの枠にとらわれず、ソニーとの連携を推し進めていくと。

大澤氏 はい。ソニーの資産を使い、携帯電話そのものでは表現しきれない部分を表現していきたいですね。ソニー間の機器連携ももちろん考えています。HDMI端子を搭載しているモデルもありますし、ソニーのテレビと組み合わせたらどういう体験が広がるか、といった連携も進めていきます。

―― Sony Mobileになったことで、こうした連携もやりやすくなったのでしょうか。

大澤氏 そうですね。もちろん、Sony Ericssonもソニーグループの1つでしたので、これまでもソニーの技術やサービス連携はしてきましたが、100%子会社になったことで人員の交流も活発になり、さらに連携がしやすくなりました。

―― そこが一番のメリットであると。

大澤氏 ソニーデバイスの中でスマートフォンが重要な商品になると位置づけられています。今後スマートフォンがお客様の手元に一番多く届けられると予想されており、Xperiaは我々の提供できるエンターテインメントサービスの重要な入り口の1つになると思います。

photophoto テレビ、ビデオ、ゲームなどソニー機器やコンテンツとの連携も推進していく

デザインの根底にある「ヒューマンカーバチャー(Human Curvature)」

―― 2011年は裏面が反り返った形状の「Xperia arc」、そして2012年は透明素材を用いた「Xperia S(NX)」など、毎年ユニークなデザインの製品が登場しています。あらためて、デザインとUIにおける2012年のテーマを教えてください。

大澤氏 「ヒューマンカーバチャー(人間的な曲線)」という概念は2011年から変えていません。いかにお客さんにとって使いやすいか、人間の身体にフィットするかという考え方においては、どの製品も変わりません。Xperia arcの形状は握りやすさを考えた1つのアイデアですし、Xperia Sも裏面はカーブしているので手になじみます。

―― 形状は違ってもカーブ自体は変わらないと。

大澤氏 根本的なコンセプトは変わりません。お客様の手にいかにフィットするか、人間の使い勝手を考えたデザインになっているかが重要です。これは「Xperia X10」を発売したときや、それ以前から変わっていません。弊社の端末はどれを見ても、過度に四角いモデルは少なく、滑らかな曲線を使ったモデルが多いですね。

―― 個人的にはarcのカーブが最高でした。特に角の落とし方も絶妙で、よく手になじみました。「Xperia NX SO-02D」(形状はXperia Sと同じ)は少し角ばっていて、手に当たるのが気になります。

大澤氏 貴重なご意見として承ります(笑)。デザインは非常に難しいですね。同じものを続けると飽きられてしまいますが、良いものはいつまでも続く場合もあります。変わらないといけない部分と変わってはいけない部分をうまく組み合わせていきたいですね。特に携帯電話はサイクルが早いので、お客様に飽きられないよう、我々の普遍的な価値を考えていきたいです。その中でarcの第2弾があるかもしれませんし、このFloating Prismの第2弾があるかもしれない。ヒューマンカーバチャーという考えに沿っていれば、あり得ると考えていただいて結構です。

―― Xperia S、P、UはいずれもFloating Prismが採用されていますが、2012年に投入するSony Mobileのスマートフォンは、このデザインが基本になるのでしょうか。

大澤氏 現時点ではお答えできませんが、2012年前半はこのFloating Prismを持ったものがコアの商品群となります。ただ、後半については繰り返しになりますが、ヒューマンカーバチャーのデザインに沿っていれば、arcデザインを取り入れたモデルが出るかもしれませんし、Floating Prismのデザインになるかもしれません。arcのデザインに関しては、お客様から非常にご好評いただいており、それが我々の耳にも届いていることはご理解いただきたいです。

photophoto キーの下に用いた透明素材の「FloatingPrism」(写真=左)。違うアプローチでカーブをかけたXperia arc(左)とXperia NX(右)(写真=右)
photo アルミをボディに採用したXperia Pのレッド

―― 今回の新機種ではXperia Pの赤が格好いいという意見が多く見られました。

大澤氏 Xperia Pのレッドはパンチの効いた色として用意しました。

―― カラーに対する嗜好は国によってどれだけ違うのでしょうか。

大澤氏 「残念ながら」と言うと語弊があるかもしれませんが、特にスマートフォンに移行してから、カラーについては市場全体がやや保守的になっています。ホワイト、ブラック、シルバーあたりが基本色になっています。日本だけは別ですけどね。

―― 確かに、「Xperia acro HD SO-03D」のSakuraやAquaのような色は海外ではあまり見られません。

大澤氏 (グローバルモデルの)「Xperia arc S」でもSakura Pinkを提供しています。桜と日本はイメージが合いやすいので、「非常に優しくて良い色だ」とご好評いただいています。

photo カラフルなボディカラーが目を引く「Xperia acro HD SO-03D」

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