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» 2012年03月27日 22時30分 UPDATE

「HTC One」の日本登場は?:スペックよりも体験、マジョリティ層も狙う――HTCスマートフォンの向かう先 (1/2)

イノベーター層を中心とした“通好み”の機種が多いイメージのあるHTC端末だが、HTCは女性をはじめとするマジョリティ層も狙っていく。HTC Nipponの村井社長とHTC CPOの小寺氏が、同社の商品作りのあり方や、新しいHTC Oneシリーズを語った。

[田中聡,ITmedia]

 HTC Nipponが3月27日にプレスイベントを開催し、代表取締役社長の村井良二氏が商品作りの考え方を説明。また、HTC CPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)の小寺康司氏が、Mobile World Congress 2012(以下MWC)で発表した新製品「HTC One」シリーズの特徴を紹介した。

スペックよりも“最良の経験”が重要――村井氏

photo HTC Nippon 代表取締役社長 村井良二氏

 村井氏は2011年12月19日にHTC Nipponの代表取締役社長に就任し、「日本のスマートフォン市場の発展に貢献する」とコメントしていた。日本へのコミットメントを強める一環として、MWC会期中の2月29日には日本市場向けにカスタマイズしたスマートフォンをKDDI向けに開発していることを発表した。ただし今回の発表会ではこの日本向け製品の詳細には触れられず、「KDDI向け商品は後日別席できちんと説明する」(村井氏)とのことなので、今後の発表を待ちたい。

 村井氏が社長に就任後初めて登壇したイベントだったこともあり、HTCの商品作りの考え方をあらためて説明した。HTCの根幹を成す言葉である「quietly brilliant」は「HTC」ロゴの下に明記されていることもあり、多くのユーザーが目にしているはずだ。直訳すると「静かに輝く」といった意味だが、この言葉の裏には「あらゆる技術の入ったスマートフォンを、謙虚な姿勢で、お客様の目線に立って商品を作る」といった想いが込められている。プロセッサー、通信速度、カメラ、ディスプレイなどスマートフォンはスペックで語られることが多いが、HTCは「スペック競争のために商品を作るのではなく、お客様が実生活でどうやって商品を使いどう楽しんでいただくかという目線に立つことを基本としている」(村井氏)。こうした考えが、HTCスマートフォンのUIである「HTC Sense」のベースにもなっているという。

 HTCのブランドパーソナリティは「ユーザー中心」「サプライズ」「シンプリシティ」「内に秘めた力」の4つだと村井氏は説明。ユーザー中心については「どんな商品を作っても、気に入って長く使っていただいて、初めて商品としての価値がある」と考える。サプライズでは、日々使っている中で新しい発見や驚きを与えていく。シンプリシティでは、簡単な操作性や使い勝手のよさを追求する。加えて“全部入り”を目指すのではなく「使わない機能は何か、一番使う機能は何か」を重視し、村井氏はやみくもに数値(スペック)を求めない姿勢を強調した。「初級者から上級者まで、お客様のレベルに合わせてカスタマイズしていきたい」(村井氏)。実際、新モデルが採用する「クアッドコアCPU」「LTE」「HD有機EL」「Android 4.0」といったキーワードはMWCでの発表や今回のイベントでは大きく打ち出していない。内に秘めた力は「どうやって商品に謙虚に入れるか」を考える。これら4つの要素に「正直」「謙虚」「シンプル」「ダイナミック」「革新的」といった5つのキーワードを掛け合わせて商品を開発する。

 HTCの究極のテーマは「The best things in life are to be experienced――どうやったら最良の経験をしていただけるか」だと村井氏は説明。着信したときに、端末を裏返すと着信音が止まるなどの機能も、それ自体は大きく訴求するものではないが、こうした小さい積み重ねが満足度につながるとした。

photophoto HTCの概要(写真=左)と事業所在地(写真=右)。工場は台北と上海に構える。デザインやUIは台湾、サンフランシスコ、シアトルで共同開発している
photophoto HTCのブランドパーソナリティ(写真=左)。社員の名刺には、「ユーザー中心」「サプライズ」「シンプリシティ」「内に秘めた力」のいずれかを表すイラストが描かれている(写真=右)

デザインや素材感にもこだわり

 続いて小寺氏が、MWCで発表した新モデル「HTC One」シリーズの詳細を解説した。HTC Oneはグローバルのフラッグシップ機に位置づけられ、「HTC One X」「HTC One S」「HTC One V」の3機種が含まれる。最もハイスペックなのがHTC One Xで、HDサイズの4.7インチ有機ELや1.5GHzクアッドコアCPU搭載の「Tegra 3」、1800mAhのバッテリーを備える。ボディには頑丈さと軽さを両立させたポリカーボネートを採用し、同社のハイエンド機としては比較的軽い約130グラムを実現している。HTC One XのLTE対応版である「HTC One XL」もラインアップしており、こちらのチップセットにはQualcommの「Snapdragon S4」(1.5GHzデュアルコアCPU)を備える。

 小寺氏が「素材感や仕上げ感に力を入れた」と語るHTC One Sは、厚さ7.9ミリの薄いボディに、人工衛星にも使われている「microarc oxidation(MAO)」と呼ばれる表面処理でセラミック加工を施している。高密度の結晶構造により、従来のアルミニウムよりも4倍の硬度を実現した。「アルミの上ではなく層にコーティングをしているので、非常に硬い。ちょっと削れたくらいでは下地が出てこない。触り心地も金属とは異なる」(小寺氏)。この中では低価格帯に属する「HTC One V」は、「HTC Legend」のデザインを継承し、アルミボディを採用した。いずれのモデルもOSはAndroid 4.0で、UIはHTC Senseは4.0へ進化している。

photophoto HTC CPOの小寺康司氏(写真=左)。Mobile World Congress 2012でも発表されたHTC Oneシリーズ(写真=右)
photophotophoto HTC One Sのmicroarc oxidation加工の様子が紹介された

独自のカメラモジュールで撮影機能も進化

photo カメラ機能を強化した背景の1つとして、2011年に450億の写真がモバイル機器からFacebookにアップされたことを紹介

 HTCが「Amazing Camera(素晴らしいカメラ)」「Authentic Sound(本物の音)」とアピールする通り、HTC Oneではカメラと音楽機能を強化したのが大きなトピックだ。カメラは約0.7秒で起動し、オートフォーカスの速度も0.2秒に短縮された。撮影ボタンをタップするたびに写真が素早く撮影され、撮影間隔は「GALAXY NEXUS」の0.4秒よりもさらに短い0.2秒(HTC調べ)を実現した。HTC One XとSのレンズのF値は2.0で、F値2.4のレンズを搭載する他のハイエンド機種よりも40%ほど明るい写真が撮れるという。光のない/少ない場所でも美しく撮れるよう、被写体までの距離をカメラが判断し、それに合わせて5段階のフラッシュが作動する。HDR撮影にも対応し、iPhone 4Sの作例と比べてより自然な写真が撮れることも紹介された。動画の撮影中に静止画を同時に撮れるのも特徴の1つだ。これらのカメラ機能は、HTCが独自に開発したカメラモジュールや新しいソフトウェアによって実現している。

photophoto iPhone 4SやGALAXY NEXUSなどとカメラの起動・撮影速度を比較。HTC Oneが最速という結果になった(写真=左)。こちらは光の少ない場所での撮影性能を比較(写真=右)
photophoto 暗い場所や逆光の場所など、撮影環境が悪くてもきれいに撮れることをアピール(写真=左)。HTC独自のカメラモジュールを搭載している(写真=右)
photophoto HDRをオンにしてHTC OneとPhone 4Sで撮った写真を比較
photophoto カメラボタンをタップするだけで次々と写真を撮れる(写真=左)。録画中に右上のシャッターボタンを押すと、同時に静止画も保存される(写真=右)

 撮影時だけでなく、撮影後の使い勝手にも注力した。Dropboxとも連携し、HTC Oneシリーズのユーザーは25Gバイトのオンラインストレージを2年間無料で利用できる。Dropboxの新しい機能として、写真や動画の自動アップロードも可能になったので、バックアップツールとしても役立つ。また、周辺機器の「ワイヤレス・メディアリンクHD」を対応テレビのHDMI端子に接続すると、HTC Oneの写真や動画を無線環境で簡単に出力できる。「メディアリンクはHDMI端子のあるテレビならどれでも接続できる。(スマートフォンの画面で)3本の指で写真をフリックすると、写真がテレビに表示される。DLNAなどとは違い、お客さんにとっていかに簡単に使えるかが大事」と小寺氏は使い勝手の良さを説明した。

HTC OneにはBeatsのサウンド技術を注入

 音楽機能では、HTCが買収して51%の株式を保有するBeats by Dr.Dre Audio(以下Beats)のオーディオ技術を搭載し、パワフルで臨場感あふれるサウンドを楽しめる。「アーティストが表現したかった音をそのまま再現する」(小寺氏)のがBeatsのコンセプトだという。ただし、Beatsの音響効果が得られるのは、Beatsのヘッドフォンやイヤフォンを装着しているときに限られ、他メーカーのヘッドフォン・イヤフォン接続時やスピーカーの音質は従来モデルと変わらない。Beatsのサウンドが有効になると、ピクトアイコンやステータス画面に「Beats Audio」の赤いアイコンが現れる。HTC Sensationなどの2011年のHTC端末もBeats Audioはサポートしていたが、メディアプレーヤーでしか有効にならなかった。HTC Oneではメディアプレーヤーのみならず、YouTubeやラジオなどすべてのオーディオアプリでBeats Audioが有効になる。「そのままの音質で楽しんでいただくため」(説明員)、イコライザー設定は用意していない。このあたりも同社が掲げる「シンプリシティ」につながるのだろう。ミュージックプレーヤーや音楽系アプリを統合する「ミュージックハブ」も新たに用意し、音楽をより手軽に楽しめるようになった。

photophoto Beats by Dr.Dre Audioの技術を取り込んでいる(写真=左)。Beats Audioが有効になるのはBetasのイヤフォンやヘッドフォンを利用したときのみ(写真=右)
photophotophoto Beats Audioが有効になると、ピクトエリアやステータス画面にアイコンが表示される(写真=左、中)。音楽関連のコンテンツやアプリを統合したミュージックハブ(写真=右)

 車での音楽体験も追求し、周辺機器の「HTC Car Stereo Clip」を車のオーディオジャックに接続すると、HTC端末の音楽コンテンツを車の中で楽しめる。小寺氏は「Tunein Radio」アプリを使って世界中のラジオを車でも聴けることを説明していた。

photophoto HTC Car Stereo Clipを使って車内でも音楽コンテンツを楽しめる(写真=左)。車での接続時は、スマートフォンの画面も横向きになる(写真=右)
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