Tegra 3が実現する「最高の性能と最小の消費電力」――NVIDIA ザン氏が説明速さじゃなく“体験”を重視(2/2 ページ)

» 2012年03月30日 22時37分 公開
[田中聡,ITmedia]
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発熱量はTegra 2とそれほど変わらない

 薄いボディに高性能なプロセッサーを搭載することで、筐体が発熱しやすくなる点も懸念される。ザン氏はこの点について「Tegra 2よりも消費電力が少ないので熱も少なくなるが、クアッドコアを一瞬だけフルに回すと、その瞬間だけ熱は高くなるので、平均するとTegra 2とそれほど変わらない」と説明した。「Tegra 3のチップ上には薄い金属があるので、瞬発的な熱はヒートスプレッダーで少し緩和している」(ザン氏)とのことだが、劇的な効果はないようだ。

 Tegra 3の対応機が続々と発表されているが、端末側でパフォーマンスを最大限発揮するための最適化はどのように行っているのだろうか。「ハードについては端末メーカーと協業して最適化している」とザン氏。例えばPRISM Display Technologyを実装した際に、液晶パネルごとにチューニングする必要がある。「どれくらい強く補正をかけて消費電力を下げるか、画質に妥協しない点はどこか」などを詰めていくという。ソフトウェアについては「メーカーとGoogleが調整している部分もある。弊社から助言することはあるが、NVIDIAが1から10まですべて作っているわけではないので、各社の最適化に差が出ることはある」とした。パフォーマンスについては、メーカーの作り込みによるところも大きそうだ。

アプリのエコシステムも加速させる

 Tegra 3のGPUには、Tegra 2の3倍のグラフィックパフォーマンスを実現する12コアのGeForce GPUを採用する。これを最大限に生かし、Tegra 3に最適化されたゲームが、NVIDIAのポータル「Tegra Zone」で配信される予定だ。説明会ではTegra 3に最適化されたゲーム「Sonic the Hedgehog 4:Episode II」「Eden to GREEEEN THD」「Hamilton's Great Adventure THD」「Golden Arrow THD」「Dark Kingdom THD」の5タイトルのデモが披露された。「Tegra 2のゲームではコントローラーで遊べたら良かったのに、という感想をいただいた。確かにコントローラーに最適化されたゲームをタッチで遊ぶのは辛い」(ザン氏)ため、Tegra 3のゲームにはテレビに出力した際に、PS3やXbox、Wiiなどのコントローラーを使ってプレイできる。Sonic the Hedgehogは家庭用ゲーム機バージョンがそのまま移植されたので、テレビ出力やゲームコントローラーの対応を含め、家庭用ゲーム機と同等の体験を得られる。現在、Tegra 2に最適化されたゲームは40タイトルほどがTegra Zoneで配信されており、Tegra 2/3向けを含め、NVIDIAはアプリのエコシステムも推進する。

photophotophoto Tegra 3に最適化して開発されたゲームも登場予定
photophotophoto 同じゲームでも、Tegra 3に最適化されたものとされていないものでは、グラフィックの奥行き感や表現力が異なる(写真=左)。キャラクターの脚から遠くなると影が薄くなり、近くなると影が濃くなる「ソフトシャドー」の描画もされている(写真=中)。テレビに出力してコントローラーでもゲームを遊べる(写真=右)

 マルチメディア関連、FlashやHTML5などを用いたブラウザ関連など、ゲーム以外のジャンルでも、Tegra 3の性能を発揮できるアプリ開発を支援する。2012年にはTegra 3に最適化されたさまざまなアプリが登場する予定だ。説明会では、写真・動画の編集アプリ「Snapseed」のデモを実施。画像全体にフィルターをかけ、選択した部分のコントラストを調整する様子が紹介された。いずれもタップした直後に加工され、マルチコアプロセッサーならではの性能が見られた。「写真を補正するだけなら他のモバイルデバイスでもできるが、処理に時間がかかってストレスになることが多い。Tegra 3ならフィルターのパラメーターが、(調節する)バーをなぞるだけでリアルタイムに反映される」(ザン氏)。アプリ開発者に対しては、マルチコアで実現できる技術面での助言をする、開発キットを提供する、端末ごとに最適化する方法を助言する、連携してマーケティングする――などの形で支援する。

photophotophoto 写真をスピーディに補正できる「Snapseed」
photophotophoto こちらはさまざまな効果をかけて写真をスライドショーで再生できるアプリ

 2012年にはTegra 3を採用したスマートフォンが数機種登場する。大きく進化した省電力性能と、Tegra 3に最適化したアプリでどこまで新しいユーザー体験を得られるのか、早く試してみたいと感じた。また、2013年にはNVIDIAが買収した「Icera」製のLTEモデム内蔵ベースバンドチップとTegraの1チップソリューションや、(時期は未定だが)GCT SemiconductorやRenesas MobileとNVIDIAの協業によるLTEチップも登場する見込み。Tegraのさらなる進化と、それを取り巻くエコシステムの拡大が期待される。

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