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» 2012年06月08日 21時35分 UPDATE

石野純也のMobile Eye(5月28日〜6月8日):プラチナバンドとウィルコム連携に注目のソフトバンク/LTE強化を目指すイー・アクセス (1/2)

前回のドコモとauの夏モデルに引き続き、今回はソフトバンク、ウィルコム、イー・モバイルの夏モデルについてお伝えする。ソフトバンクモバイルは900MHz帯を使う「プラチナバンド」、ウィルコムはPHS+3G対応の「DIGNO DUAL」、イー・モバイルは新型LTEルーターが話題を集めた。

[石野純也,ITmedia]

 夏商戦の本格化を間近に控えた5月28日から6月8日までは、新商品が相次いで発表された2週間だった。まず、5月29日にはドコモとKDDIに続く形で、ソフトバンクが夏モデルを公開。会見がウィルコムとの合同開催だったことも話題を呼んだ。対するイー・アクセスは、5月31日にスマートフォンを、6月6日にタブレットとWi-Fiルーターを発表した。今回はこの2つのニュースに焦点を当て、発表や展示の内容を振り返っていきたい。

「プラチナバンド」と「ウィルコム」を生かしたソフトバンクモバイル

 5月29日に、ソフトバンクモバイルとウィルコムが夏商戦向けの新製品発表会を開催した。ソフトバンクのラインアップは、スマートフォン4機種と従来型ケータイ(フィーチャーフォン)3機種。これらの加えて、データ通信端末も2機種用意した。一方のウィルコムも、PHSと3Gに両対応した「DIGNO DUAL WX04K」という京セラ製スマートフォンを正式に発表。従来型のPHSも2機種、夏商戦に投入する見込みだ。

photophoto ソフトバンクとウィルコム合計で12機種を発表した。どちらの機種もソフトバンクの代表取締役兼CEO、孫正義氏が自ら紹介している

 ソフトバンクモバイルが夏モデル共通のセールスポイントとして打ち出したのが、7月25日に運用を開始する900MHz帯への対応だ。同社ではこの周波数帯を「プラチナバンド」と呼び、基地局も「一般常識の3倍、4倍のスピードで設置していく」(代表取締役兼CEO、孫正義氏)という。周波数は一般的に低い方が建物(内)などに回りこみやすくなり、1つの基地局でのカバーエリアが広がる。一方で、従来からソフトバンクモバイルが使用している2GHz帯や1.5GHz帯のような高い周波数帯は直進性が高く、そのぶん密に基地局を設置しなければエリアが確保できない。同社が900MHz帯を“プラチナ”に例えるのはそのためで、孫氏の言葉を借りれば「電波の届く範囲が3倍になる」。

photophotophoto ソフトバンクの夏モデルは、スマートフォンとフィーチャーフォンのどちらも900MHz対応している(写真=左)。建物に周り込みやすい電波の特性を示し、プラチナバンドのメリットを力説する孫氏(写真=中)。「ワイルドだろぉ〜」のギャグでおなじみ、芸人のスギちゃんも登場。CM出演を孫氏に懇願するひとコマもあり、報道陣の笑いを誘った(写真=右)

 もちろん、7月25日から急に電波状況が改善されるわけではないし、900MHz帯は電波が遠くまで到達するため干渉対策も従来以上に緻密に行わなければならない。こうした状況を踏まえ、孫氏も「一気に立ち上げると、他のネットワークに影響がある」と発言している。一方で「10月の段階で(基地局数は)数千のかなり上の方になってくる」(孫氏)ため将来的なエリアの拡大には期待できるが、端末を買い替えたらすぐに電波が入りやすくなるとは考えない方がよさそうだ。現時点では「iPhone 4/4S」「iPad 2」「新しいiPad」「PANTONE 4 105SH」が900MHz帯に対応している。これらの端末のユーザーが、900MHz帯のために焦って機種変更する必要はないことも覚えておきたい。

photo 孫氏はULTRA SPEED(DC-HSDPA)対応エリアの広さをアピールした

 エリアとともに、通信速度の向上にも取り組んだ。夏モデルは「ARROWS A 101F」「AQUOS PHONE Xx 106SH」が、下り最大42Mbpsの「ULTRA SPEED」に対応。下り最大21Mbpsの「HSPA+」もULTRA SPEEDと呼ばれていたためやや紛らわしいが、今回の2機種は「DC-HSDPA」という通信規格を採用している。DC-HSDPAは、簡単にいうとHSPA+の帯域を2倍使って速度を向上させる技術で、3Gの延長線上にあるためエリアも広げやすい。ソフトバンクモバイルはこの方式を、LTEまでの“つなぎ”として利用している。元々はWi-Fiルーターなどのデータ端末が対応していたが、夏モデルからスマートフォンにもDC-HSDPAを拡大したというわけだ。

 DC-HSDPA対応機種は、夏モデルの中でのフラッグシップに位置づけられている。ARROWS Aは、ソフトバンクのスマートフォン初となる富士通ブランドを冠し、押し込んで画面を点灯させることが可能な「スマート指紋センサー」や、使い勝手を高める「ヒューマンセントリックテクノロジー」に対応している。クアッドコアを搭載した他社製品に比べると機能は抑え目で、ドコモの「REGZA Phone T-02D」に近いスペックだ。他社で人気があるだけに、ソフトバンクユーザーからどう評価されるのか注目したい。一方のAQUOS PHONE XxはデュアルコアCPUの「MSM8260A」を搭載し、ディスプレイも高精細で省電力な「Super CG Silicon液晶」となる。「AQUOS PHONE 104SH」で好評だった「ダイレクトトラッキング技術」を継承し、レスポンスもいい。ソフトバンクの夏モデルでは、トップクラスのスマートフォンといえるだろう。

photophoto ソフトバンク初のARROWSとなる「ARROWS A 101F」。スマート指紋センサーなどを搭載し、DC-HSDPAに対応(写真=左)。DC-HSDPAに対応するシャープ製の「AQUOS PHONE Xx 106SH」。夏モデルでは最もスペックの高い機種に仕上がっている(写真=右)

 エリアや通信速度に加えて、ウィルコムとの連携が進んだのも夏商戦のトピックといえる。AndroidスマートフォンのDIGNO DUALは、音声をPHSと3Gで、データ通信を3Gで行う異色の端末。孫氏が「両方のよさを生かした、合体版のスマートフォン」と胸を張るように、通話品質が高く料金の安いウィルコムと、PHSに比べ通信が速い3G網を持つソフトバンクの“いいとこ取り”をした1台だ。3GとPHSの切り替えを通知パネル上に配置されたボタンで簡単に行えたり、待受けを両方で行いどちらの番号でも着信できたりといった工夫も凝らされている。3G回線はMVNOとしてウィルコムがソフトバンクモバイルから借り受ける形で、基本使用料やデータ定額が一体になった専用の料金プラン「ウィルコムプランD」を用意。「だれとでも定額」はキャンペーンで無料になる。また、MNPに対応しているため、他社から乗り換えたユーザーが、いつもの電話番号に着信させ、折り返しはウィルコムのだれとでも定額で行うという使い方が可能になる。ウィルコムからの機種変更でもメールアドレスが変わってしまうデメリットはあるものの、PHSとスマートフォンを2台持ちしようと考えているユーザーにはうってつけの機種になりそうだ。

photophoto PHSと3Gに両対応した「DIGNO DUAL WX04K」。京セラ独自の「すぐ文字」も利用できる(写真=左)。音声通話はPHSと3Gの両方に対応しており、通知パネル上のボタンで切り替えられる(写真=右)
photo ソフトバンクの「PANTONE 3 001SH」とほぼ同じ形状の「PANTONE WX01SH」

 ウィルコムとソフトバンクのコラボレーションという点では、PHS端末の「PANTONE WX01SH」にも注目したい。外観は、ソフトバンクモバイルが2010年11月に発売した「PANTONE 3 001SH」とほぼ同じ。ボディの金型を流用し、充電端子も3G用のものを利用する形だ。カメラのスペックが違ったり、ワンセグに対応していなかったり、お父さんコンテンツがプリインストールされていなかったりといった差はあるが、「PANTONEは340万台売れた、定番の機種」(孫氏)なだけに、ウィルコムでも人気が出そうだ。

 同じPANTONEブランドを冠した機種は、ソフトバンクからも発売される。それが、Androidスマートフォンの「PANTONE 5 107SH」だ。スペックはミドルレンジ相当だが、カラーバリエーションを8色取りそろえ、パッケージにはCMキャラクターの上戸彩さんを起用する。孫氏も「分かりやすくて、かわいくて、必ず売れる」と太鼓判を押し、専用料金を用意することも明かした。また、この機種には「放射線測定機能」も搭載されている。フォトダイオードで空間のガンマ線量を測定でき、仕組みとしてはエステーの家庭用放射線測定器「エアカウンターS」などに近い。小型のICチップはシャープが開発。測定した数値は「スマートフォンならではの強みを生かして、地図に自動的にプロットする」(孫氏)という機能も用意した。

 一方で、風評被害などを避ける理由で、ソーシャルネットワークなどへの投稿機能は非搭載になる見込みだ。孫氏も「地表から1メートルぐらいのところで測るのが標準的だが、人によっては地面にくっつけてしまう危険性もある。その情報をソーシャルで分け合ったときに、風評被害が問題になりかねない」と述べている。とはいえ、それ以前に表示された数値をどのように判断すればいいのか分からないという人もいる。孫氏も「啓蒙活動は、ずっと広げていかなければいけないと思う」と述べているが、PNATONEという機種の特性上、放射線測定器にまったく関心がなく、スマートフォンに不慣れなユーザーの手に渡ってしまう可能性も高い。ソフトバンクモバイルには積極的な対策を取ってほしいところだ。購入時にショップで正確な説明を行うなり、放射線に関する基礎知識を網羅した冊子を同梱するなりして、放射線に関するユーザーの理解を深めるための努力も必要になってくるだろう。

photophoto 放射線測定機能や、8色のカラーバリエーションが特徴の「PANTONE 5 107SH」。PANTONEケータイ初のAndroidスマートフォンでもある

 ここまで紹介してきた機種以外にも、冬モデルを900MHz帯に対応させマイナーチェンジした「AQUOS PHONE 102SH II」や、フィーチャーフォンの「THE PREMIUM9 WATERPLOOF 109SH」「COLOR LIFE3 103P」「かんたん携帯 108SH」が発表された。データ端末は「ULTRA WiFi 4G 102HW」と「ULTRA WiFi 102Z」の2機種。ウィルコムは「Casablanca WX05K」を用意する。「スマートフォンといえばソフトバンク」という孫氏の言葉とは裏腹に、バランスの取れたラインアップになっている。900MHz帯とDC-HSDPA、ウィルコムという、現時点でソフトバンクが持つ武器を最大限活用している印象も受けた。一方で他社と比べると、Androidスマートフォンに関しては、まだ選択肢が十分とはいえない状況だ。秋冬のLTEの開始に合わせ、ソフトバンクらしい端末が充実することを期待したい。

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