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» 2012年07月05日 21時32分 UPDATE

無接点充電の今と未来:電波干渉やサイズの課題を克服――対応機器とインフラが拡大する「Qi」 (1/3)

スマートフォンや充電機などで「Qi」の表記を見る機会が増えてきた。ワイヤレスで充電ができる「Qi」規格に対応した製品や、最近はQi対応充電器を試験導入する店舗も増えている。Qiの仕組みや利便性、今後の展開は――。パナソニックグループのエナジー社が説明した。

[田中聡,ITmedia]

 端末にケーブルを接続せずに携帯電話やモバイルバッテリーを充電できる「無接点充電」に対応した製品が増えている。無接点充電とは、充電台と充電池にコイルを搭載することで、金属接点を介さずにコイル間の電磁誘導で充電ができる技術のことで、日本では一部の携帯電話やモバイルバッテリーなどに採用されている。この無接点充電技術を、WPC(Wireless Power Consortium)という団体が国際標準規格にしたものが「Qi」だ。読み方は「チー」で、「気」の中国語読みが「チー」なので、それをアルファベットで表記した。NTTドコモの「おくだけ充電」もQiに準じている。このWPCの参加企業の1つで、設立当初から無接点充電の規格化に積極的に取り組んできたのがパナソニックだ。同社は7月5日に無接点充電システム技術の現状と展望を、メディア向けに説明した。

世界100社以上がWPCに参画

 そもそもQiはどのような経緯で誕生したのだろうか。パナソニックグループ エナジー社 充電システムビジネスユニット長の佐野正人氏は「たくさんのモバイルツールが普及している中で、家庭では充電器があふれており、それぞれに電源を必要とするので煩雑な状況が発生している。(携帯電話)本体を使わなくなった途端に充電器が廃棄物となってしまう。共通規格化されたユニバーサルな無接点充電環境があれば、充電器の数も減らせる」と背景を話す。使用環境と地球環境に配慮して無接点充電システムが開発されたわけだ。

photophoto エナジー社の佐野正人氏(写真=左)。エコと利便性を高めるために無接点充電を提案する(写真=右)

 コードレス電話や電動歯ブラシなど、Qi誕生以前にも無接点充電をサポートする製品は存在したが、数10ミリワット以下という小さな電流しか確保できないことが課題だった。その後は電力出力の向上に成功した無接点充電技術がWiiリモコンやインテリアライトなどの充電器に採用されたが、他の製品との互換性を確保するのが難しいという課題が残った。これらの課題を解消すべく、WPCは新しい充電方式の開発に着手した。

 2012年5月時点でWPCへの参加企業は109社となり、携帯電話メーカー、通信事業者、インフラメーカー、半導体メーカーなど世界のさまざまな企業がQiの標準化に賛同している。三洋電機はパナソニックグループ傘下となる以前からWPCに加盟していた初期メンバーであり、2008年12月のWPC設立にも尽力した。このWPCが策定したQiには、複数のコイルのうち端末に一番近いコイルから電磁波を送って送電する「多コイル方式」、1つのコイルから中心部に機器を引き寄せるマグネットを配置した「マグネット方式」、(端末の)受電コイルの位置を検出して(ワイヤレス充電パッドの)送電コイルを動かして充電を始める「ムービングコイル方式」という3方式がある。このうち国際標準規格に採用しているのはムービングコイル方式だ。

photophoto Qi以前はコードレス電話や電動歯ブラシに無接点充電技術が使われていた(写真=左)。ゲーム機リモコン(Wiiリモコン)や家電(インテリアライト)には、より高出力な無接点充電技術が採用された(写真=右)
photophoto 100社以上がWPCに参加している(写真=左)。WPCの概要(写真=右)

「ムービングコイル方式」を採用した理由

 佐野氏はムービングコイル方式を採用した理由を「送電効率が良く、安全性が高いため」と説明する。Qi対応充電器ではムービングコイルの上に「マトリクスコイル」が配置されている。このマトリクスコイルには検出コイルをX(横)方向とY(縦)方向に配置し、受電コイルとの通信で端末の位置(XとYの何番目か)を検出して充電を開始する。給電側と受電側のコイルが同じ位置にあるので、送電効率が良いという。さらに、充電エリアに金属片などがあると「電力が影響を受けて発熱することが懸念される」(佐野氏)が、ムービングコイル方式では充電エリアに干渉する金属片などを高い精度で検出し、異物が入っていると判断すると充電を止めるので、安全性が保たれる。

photo ムービングコイル方式の仕組み

 携帯電話には3G、FeliCa、無線LAN、Bluetoothなどのアンテナが多数搭載されており、携帯電話のバッテリーにQi規格を採用する場合、金属製のコイルが電波干渉を引き超す恐れもある。だがムービングコイル方式では「コイルと電磁波の影響を避けるための磁性シートを付ける」(佐野氏)ことで、電波干渉の課題もクリアした。一方、携帯端末向けマルチメディア放送「モバキャス(NOTTV)」搭載機にQiを採用した例はまだないが、モバキャス端末への対応も順次進めているとのこと。「マルチメディア放送については、ノイズが受信感度を劣化させないようにとお客様から要望をいただいている」(佐野氏)

photophoto Qiの製品には3つの方式のうち、ムービングコイル方式を採用している(写真=左)。ムービングコイル方式では送電コイルを動かし、マトリクスコイルが端末の正確な位置を検出するので、安定して充電ができる(写真=右)
photophoto 充電エリアに金属などの異物を検出すると充電が止まる(写真=左)。携帯電話のアンテナと干渉しないよう配慮した作りになっている(写真=右)
photophotophoto 「フリーポジション」を重視し、ワイヤレス充電パッドに端末を置くだけで充電できる。パッドに2台のQi対応製品を置いた場合、先に置いたものから順次充電が開始される
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