復興支援の専門チームを仙台に配置――被災経験を生かしたKDDIの災害対策(2/2 ページ)

» 2012年08月09日 12時22分 公開
[小林健志(K-MAX),ITmedia]
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 震災後、日本では先日再稼働した大飯原子力発電所を除き、原発が稼働していない。被災地がある東北6県は節電目標が設定されていないが、東北電力は電力事情によっては計画停電を実施する場合もあるとしている。

 大川氏は計画停電への備えについて、「もし停電があっても、この建物(仙台TC)は24時間以上稼働し、燃料補給ができるようになっている」と説明する。携帯電話事業者の重要拠点には独自の発電・変電施設があるが、KDDIの仙台TCも例外ではない。仮に停電しても24時間以上の稼働が可能で、それ以降も燃料補給によって継続的に発電できる。震災時に広域停電が起きた際も「発電機用の燃料が1日半で新潟回りで到着した」(大川氏)という。

 またKDDIは、基地局自体の省エネにも力を入れている。新たに開発された基地局は、空調設備を省いて屋外設置できるもので、消費電力を約40%削減した。この省エネ基地局は2010年秋から全国で導入中だ。また、太陽光・蓄電池・商用電源を利用したトライブリット基地局の導入も進めており、さらに太陽電池を使った基地局を東北地方でも2カ所稼働させているという。

photophoto 計画停電への対応(写真=左)。基地局の節電への取り組み(写真=右)

photophoto 仙台テクニカルセンターの発電装置(写真=左)と変電装置(写真=右)

photo KDDIの大内良久氏

 またKDDI TFオフロード推進室長の大内良久氏は、全国で整備を進めるau Wi-Fi SPOTについて、「東日本大震災では、データ通信は3GよりもWi-Fiがつながりやすかった。災害に備えた第2のインフラとして、Wi-Fiは注目を集めている」と語り、au Wi-Fi SPOTの展開や品質向上も一種の災害対策であるとアピールした。

photo 東北地方にもau Wi-Fi SPOTを多数整備し、災害時の非常用インフラとして活用の可能性を示した

自治体ごとにきめ細やかな対応目指す「復興支援室」

photo KDDI復興支援室長の阿部博則氏

 KDDIは7月1日、仙台市に復興支援室を設置。社員を東北3県の被災自治体へ出向させてICTソリューションの構築を支援するなど、地域の実情に即したきめ細やかな復興対策を進めている。

 KDDIは復興支援室を設置する以前から、ICTを使った被災自治体の復興活動に携わっており、被災者の健康管理支援システムや、被災した受験生向けにタブレット端末を用いたオンライン学習環境システムなどを構築してきた。復興支援室は仙台に拠点を構える同社社長直轄の組織であり、被災自治体への支援をより強化していく方針だ。なお、復興支援室の活動期間は5年間と予定されている。

photophoto すでに2011年度からICTによる復興支援を行っているが(写真=左)、今後は復興支援室を拠点に自治体へメンバーを送り込み、ICTを活用したさまざまな復興支援を継続していく(写真=右)

photo 復興支援室は、東北にゆかりのある6人のメンバーで構成されるという

 室長の阿部博則氏は「ICTが分かる者として、メンバーはできるだけ自治体の中に入って活動するようにしている。自分たちが自治体の企画に参画することで、ICTを活用した復興を行いたい」と語る。震災復興では、自治体の抱える問題に応じたきめ細やかな対応が必要だからだ。

 「(復興支援では)自分たちが良いと思ったものを売りに行くのではない。被災された地域の状況は自治体ごとに違う。その自治体がどう復興したいのか? それを内側に入って具現化させていきたい」(阿部氏)。そのためか、復興支援室のメンバーは東北にゆかりのある社員が選出されているという。

 東日本大震災以降も、近畿地方での大雨被害や九州北部豪雨など、生活インフラが寸断される災害が増えている。通信キャリアの災害対応にはより一層の厳しさが求められているが、KDDIは基地局の整備などハード面の対応に加え、災害復旧支援ツールの構築や被災自治体へのICTソリューション支援など、ソフト面での対応も充実させている。さまざまな防災対策により、今後の災害復旧対応がより迅速になることに期待したい。

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