第1部 「納得」は全てに優先する!――“奇跡”から始まったジョジョスマホNTTドコモに聞く「L-06D JOJO」(2/3 ページ)

» 2012年08月17日 18時11分 公開
[田中聡,ITmedia]

当初は外装のカラーはブラックだった?

―― 荒木先生は、どのような形で監修されたんですか?

岡野氏 荒木先生には、かなり深いところまで監修いただけました。外観に荒木先生にイラスト描いてもらうことは最初に決まっていましたが、こちらで勝手に具体的な構想を練ることはしませんでした。特にデザインは、荒木先生のお好きなようにやっていただきたいと思い、メーカーのデザイナーさんと僕らでディスカッションをして、こういう方向ならありえるんじゃないかという方向性を提示しました。黒だったらこのフレームが良い、白だったらこの素材感が良いとか。荒木先生がお考えになった外観が具現化されたと言っていいでしょう。

――ドコモさんが選択肢を提示して、荒木先生が具現化したと。

岡野氏 そうですね。プロダクトをお作りの方ではなく絵を描かれる方なので、立体的なものを最初からデザインしてくださいと丸投げすることはできません。デザイナーやアパレルブランドならそういうやり方もできるんですけどね。外観やデザインは、我々が「こういうものはどうですか?」と提案した上で、荒木先生に選択していただく形で進めていきました。

 本体色が白になったのは荒木先生の選択なんですよ。ジョジョは紫っぽい世界観があるので、最初は紫系の色で、ダイヤの模様やモノグラムが入ったものを提案したんですが、荒木先生は「もっとシックでスタイリッシュなものが良い」とおっしゃって。実は1度ブラックで決まりかけたんです。ただ、ベース機の「Optimus Vu L-06D」もブラックなので、似てしまうともったいないなと。ブラックにするにしても、Optimus Vuとは全然違う方向に……例えばマットにしたり、すごくキラキラする素材を入れたりとか、ベース機とは全然違うプレミアム感を出していきましょう、と提案をしていきました。で、決まりかけたタイミングで、荒木先生がぽつっと「白もいいんじゃないかな? 白も見てみたい」とおっしゃって。

―― 黒に決まりそうなところで、ですか?

岡野氏 決まりそうなところというか、デザインをフィックスしないといけない3日前です(笑)。でも白になってよかったです。白とシルバーの組み合わせもあったんですが、最終的には白とシャンパンゴールドがスタイリッシュ、ジョジョの世界観に合っているとなって決まりました。最終的にホワイトと言っていただけたことは、僕らにとってもすごく良い方向に転換しました。さすが「そこにシビれる!あこがれるゥ!」(※第1部で、ディオがジョナサンの初恋相手、エリナの唇を奪ったときに、ディオの舎弟が興奮して放ったセリフ)です。

許氏 本来はけっこう厳しいと思うけど、Optimus Vuが黒なので、本当は違う色がよかったんです。もう絶対白にしよう! と思って頑張りました。

―― 荒木先生も、最初は黒で納得していた。

許氏 そうですね。「ベース機が黒なんですけど……」と言っても最初は黒1本にされていました。

―― さすがに2色展開にするというのは厳しいですか?

岡野氏 ありうるんですけど、必要ないかなと思いました。ヱヴァスマホも、ものすごく色数を検討して最後はグレーにしましたけど、例えば3人で何色が欲しい? と議論しても、バラバラだと思うんですよ。やり始めるとキリがないんですよね。でもファンなら何色でも買うので、2色出すことは意味ないと。

―― 何色であろうとファンは買うと。

岡野氏 荒木先生が決めたものなら買うでしょう。僕らが決めたものなら買わないでしょうけど(笑)。

―― 「納得」は全てに優先する……!と(※第7部の敵、リンゴォとの戦闘におけるジャイロ・ツェペリのセリフ)。

岡野氏 「納得」は、全てに通ずる僕らのキーワードですね。

荒木先生からは週に1回のフィードバック

photo 商品企画担当の許氏。岡野氏や鹿島氏から出たアイデアを調整してブラッシュアップする役割が多かったようだ

―― 荒木先生とのやり取りは、どれくらい続いたんですか?

岡野氏 デザインは2カ月くらい。とにかく時間がなかったので、ハイペースで決まりました。スマホの開発期間は通常モデルでもだいたい半年なんですが、コラボモデルなので、やることが多いんですよ。荒木先生とやり取りできるのは、基本的に1週間に1回。情報をインプットしていただいて、お答えをもらう日が毎週決まっているんですが、毎週や取りをするので通常より時間がかかります。このデザインに決まったときは土日で、僕はプライベートで京都にいたんですが、そのときもずっとやり取りしていて……「ホワイトですか! マジっすか!」みたいな(笑)。

許氏 デザインが決まっては持っていき、実装しては持っていきの繰り返しで……。コンテンツも含めてかなりボリュームがあったので、つい最近まで何カ月も、荒木先生のところには毎週通っていました。

―― 回数で言うと何回くらいですか?

許氏 数え切れないですね(笑)。

―― 荒木先生はすべてを監修されたんですか?

許氏 全体が見えた段階で1度説明して、1つ1つのパーツのデザイン案ができた段階でまたお見せして。作り切ってから戻るわけにはいかないので、お見せして(荒木先生から)戻ってきて、また作ってお見せして……というやり取りをずっと繰り返していました。

岡野氏 そういう意味では、昨日(8月12日)のイベント(※渋谷で開催されたジョジョスマホ展)に置いたパネルなんかも、すべて荒木先生が監修していますから。

―― なんと! そこまで。そういうのは丸投げする方が多いのかと思ってました。

岡野氏 いや、全部見ています。ものすごい細かいですし、だからこそジョジョの世界観が注入されていくんですね。僕らファンから見ているジョジョと、荒木先生がお作りになっているジョジョがまったくイコールかというと、そうでもないので。荒木先生がお作りのジョジョをしっかり再現できたのは、それだけお時間を割いていただいて、本当に細かく見ていただいたからだと思います

―― ひょっとして、イベント参加者に配られた「うちわ」も……?

岡野氏 見てます。当初は、承太郎(※第3部の主人公、空条承太郎)の壁紙をただプリントするだけのうちわを作っていたんですよ。そうしたら荒木先生が「これはスマホ用に描いたものだから、うちわに使うときは、ちゃんとデザインを加工してほしい」とおっしゃって。それでピンクの背景を入れたり配置を変えたりしました。

photophoto 8月11日と12日に東京・渋谷で行われたジョジョスマホ展。こちらのパネルも荒木先生が監修したという。左は、参加者と「JOJO GO BATTLE」を繰り広げる鹿島氏
photophoto ジョジョスマホ展で配られたうちわ。裏面には連載中の「ジョジョリオン」が描かれている

―― 荒木先生とのやり取りで、一番苦労したのは何でしょう?

許氏 コラボモデルが初めてということもありますが、外装は大変でしたね。

―― ボディの質感はどのように決まったんですか?

岡野氏 サンプルをたくさん出して、LGのデザイナーとディスカッションしました。グロス、パール、ガラスフレーク、マットなど。色味も青色や黄色を加えたものを検討して、荒木先生に全部お見せしました。

―― 実際はマットな質感になっていますね。

岡野氏 ええ、マットでソリッドなものにしました。実は発表会で展示していたものには、パールを入れていたんですが、最終版では抜きました。パールが入っていると、(裏面に描かれている)徐倫(ジョリーン※第6部の主人公、空条徐倫)のイラストの精度が悪いんですよ。ちょっと線が太くなってしまって。よく見ると、眉毛がゴルゴみたいになっています(笑)。徐倫を繊細に、先生が描いたタッチになるべく近くなるよう線を細くしました。あと、パールが入っていると黒ずむので、もっと白がきれいに出るよう、ブラッシュアップしていきました。これはLGさんにも本当に頑張っていただきました。

―― (机に並べられた3種類のジョジョスマホを見て)確かに、線の細さが違いますね。これは3回変更したんですか?

岡野氏 いや、3つ以上、もっと段階はあります。

photophoto 左が最終版、右が試作版。最終版ではパールを入れておらず、イラストの徐倫の線が細くなるよう調整した。よく見比べると、右側は徐倫の眉毛の2本線がつながって太く見え、瞳もつぶれてしまっているが、左側は眉毛の2本線や瞳の輝きも分かる
photo 右から順に、新しいもの。一番左が最終版

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