「LTE」「端末」「サービス」から読み解く携帯3キャリア“冬の陣”石野純也のMobile Eye(10月6日〜10月19日)(2/3 ページ)

» 2012年10月19日 21時03分 公開
[石野純也,ITmedia]

個性派モデルをそろえつつも、ラインアップでの差別化には限界も

 ドコモは冬モデルとしてスマートフォンを9機種、タブレットを1機種、iモードケータイを4機種、フォトパネルとWi-Fiルーターをそれぞれ1機種ずつ用意。いずれも、先に解説した1.5GHz帯のLTEに対応するほか、ソニーモバイル製「Xperia AX SO-01E」、シャープ製「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」、富士通製「ARROWS Tab F-05E」、LG製のモバイルWi-Fiルーター「L-03E」では、800MHz帯のLTEも利用できる。KDDIは全10機種を披露し、内訳はスマートフォン10機種、タブレット1機種。ソフトバンクの冬モデルは、AXGP対応の4機種に、フィーチャーフォン1機種、フォトパネル1機種となる。同社はこのほか年明けに発売される春モデルも発表しているが、実機の展示がなく操作感などを確認できなかったため、ここでは割愛した。ドコモとKDDIは別途春モデルの発表を予定しているほか、KDDIは発表会で「INFOBAR A02」の投入を予告した。

photophotophoto ドコモ、au、ソフトバンクの新モデル。スマートフォンが大半を占めたが、ドコモとソフトバンクは従来ケータイも発売する

 各機種の紹介は各記事を参照していただきたいが、全体の傾向として、特にドコモとKDDIは品ぞろえが非常に近くなってきた。ドコモのXperia AXに対し、KDDIは「Xperia VL」を用意。いずれもグローバルモデルの「Xperia V」がベースになっている。また、夏モデルの売れ筋である「GALAXY S III SC-06D」とほぼ同スペックの「GALAXY S III Progre」も、KDDIのラインアップに加わった。本日(10月19日)発売となるドコモの秋モデル「Optimus G L-01E」に対しては、KDDIも同名の「Optimus G(LGL21)」を投入して対抗する。また、スペックは比較的キャリアによって異なるが、ドコモのAQUOS PHONE ZETAや「ARROWS V F-04E」に対し、auは「AQUOS PHONE SERIE」「ARROWS ef」を導入した。スマートフォン全盛の時代になり、OSも共通のAndroidが採用され、メーカーブランドの端末も増えている。KDDIの田中氏が会見時の囲み取材で「スマホの差別化はより厳しくなっている」と述べていることからも、こうした事情はうかがえる。

photophoto ドコモの「Xperia AX」と、KDDIの「Xperia VL」。ベースは同じソニー・モバイル製の「Xperia V」だ
photophoto ドコモのイメージが強かった「GALAXY S III」や「Optimus G」も、auから発売される

 端末単体では独自色を出しづらくなっている中、どのように“目玉”を作るかが各社の腕の見せどころだ。例えば、ドコモは他社にない5.5インチ端末の「GALAXY Note II SC-02E」に加え、NECカシオ製の「MEDIAS U N-02E」を取りそろえた。先に挙げたAQUOS PHONE ZETAも、ドコモだけがIGZO液晶搭載だ。「GALAXY S III」はCPUがクアッドコアになり、「GALAXY S III α SC-03E」として再登場する。GALAXY NoteとGALAXY S III αは、OSにAndroid 4.1を採用しているのも特徴だ。コラボモデルで特色を出しているのも、ドコモならではだ。「ARROWS Kiss F-03E」は、「Blush Pink」というカラーのみ女性向けアパレルブランドの「JILL STUART」とのコラボ。ほかにも、国民的人気漫画のワンピースとコラボした「N-02E ONE PIECE」や、ディズニースマホの「Disney Mobile on docomo N-03E」、デザイナーに佐藤卓氏を起用した「Optimus LIFE L-02E」を用意する。

photophotophoto 「AQUOS PHONE ZETA」は、3キャリアの中で唯一IGZO液晶を搭載したスマートフォン。他社にはない「GALAXY Note II」などもラインアップする。「GALAXY S III」はクアッドコアCPUを搭載し、「GALAXY S III α」として発売される
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photophoto キャラクターやブランドとのコラボも、ドコモの得意とするところ。ワンピーススマホや「JILL STUART」コラボカラーもラインアップした。「Optimus LIFE」はデザイナーに佐藤卓氏を起用。「Disney Mobile on docomo」も継続する

 KDDIも発表会では同社にしかない端末を「先進機能」モデルと位置づけ、訴求する。大容量バッテリーを搭載した京セラ製の「DIGNO S」や、モーション操作を売りにしたパンテック製の「VEGA」、タフネス性能を売りにした「G'z One TYPE-L」がこのカテゴリーの端末だ。さらに、台湾・HTCとのコラボレーションを一歩進め、5インチフルHD液晶を搭載した「HTC J butterfly」を導入。人気の高かったHTC Jの後継機がさらにスペックを上げ、最新のAndroid 4.1にも対応させた。「海外で同等のモデルが発表される可能性もある」(KDDI関係者)といい、台湾や香港に展開したHTC Jのように、日本発の成功事例を再び作れるかもしれない。

photophotophoto 大容量バッテリー搭載の「DIGNO S」や、タフネスモデルの「G'z One Type-L」、モーション操作が可能な「VEGA」は、auでしか選べない端末となる
photo 「HTC J butterfly」は、HTCとKDDIの協業によって生まれたモデル。5インチのフルHD液晶を搭載。圧倒的な解像度を誇り、auの冬モデルの中では唯一Android 4.1に対応する

 ソフトバンクは「AXGPの対応に時間がかかった」(メーカー関係者)こともあり、別枠で紹介された「Disney Mobile on SoftBank」の「DM013SH」を合わせ、冬モデルはスマートフォン4機種にとどまった。一方で、全25色のカラバリを用意した「PANTONE 6 200SH」のような仕掛けは同社の得意とするところだ。「ベースの本体カラーが2色で、背面カバーを店頭で交換して販売する仕組み」(ソフトバンク関係者)といい、フィーチャーフォンのころのような流通への負担も少ない。“ガラバリ”としてステッカーを用意したところも、面白い。

 他社にない端末として「Googleがモトローラを買収して初となる」(孫氏)という、「RAZR M 201M」を導入。孫氏によると、TDD方式の開発実績や、Googleとのつながりを重視してモトローラの採用に踏み切ったといい、「最もスマホに対して先進的に取り組んでいる、実質Google社のモトローラが日本で、ソフトバンクのみに端末を出すのは大変うれしい」と述べている。AXGP対応の早さという点や、発売当初から実質0円のコストパフォーマンスを考えると、中国・Huawei製の「STREAM 201HW」も評価できる1台と言える。

photophotophoto 発表翌時に発売されたHuawei製の「STREAM」。「実質Google」(孫氏)というモトローラ製の「RAZR M」も導入する。全25色展開の「PANTONE 6」は、ソフトバンクらしいアグレッシブな取り組みだ

 ただ、ソフトバンクについては、やはりAndroid端末の広がりに欠けている印象は否めない。iPhone 5を取り扱っているため、ドコモほどのラインアップは必要ないとしても、事実としてユーザーの嗜好は多様化しつつあり、Androidのシェアも伸びている。先日、Sprintの買収を発表した際に、「メーカーに対しての交渉力が増す」ということを理由に挙げ、「これからも続々と共通した、もっとハイエンドなAndroidスマホを手に入れることになる」と述べていたところにも、孫氏の本音が透けて見えた気がした。

photo 写真は、Sprint買収の会見で撮影したもの。スマートフォンの共同調達も、シナジー効果の1つとして挙げられていた

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