製品を効果的に売るにはマーケティングも重要だ。ホン氏はマーケティングには「消費者のニーズを把握して価値を創出すること」と「マーケティングツールを使って価値を伝達すること」という2つの役割があると話す。そうした前提で初代GALAXY Noteを投入する際に重視したのが「新しい体験」だという。GALAXY Noteの「Phone, Tablet? Feel Free, It's Note!」というキャッチコピーは、まさに新しい体験を表したものだといえる。「一般ユーザーは、ケータイ、タブレット、MP3プレーヤー、デジカメなど、カバンの中にいろいろなデバイスを入れています。我々は、1つの機器でたくさんの機能をカバーできる製品に対するニーズがあると考え、移動中に必要な機能をすべてNoteに盛り込みました」とホン氏はNote開発の経緯を説明する。
大きな注目を集めて登場したGALAXY Noteだが、「多くの製品を持ち歩かなくて良かった、新しいチャレンジができた」という好意的な意見があった一方で、「(端末が)大きすぎる、Sペンは本当に必要なのか?」という否定的な意見も見られたという。そこでSamsungは本格的なマーケティングに着手。「GALAXY Note WORLD TOUR」を各国の主要都市で開催し、多くのユーザーにNoteを体験してもらえる「GALAXY Note Studio」を開設。テレビCMも大々的に放映し、日常生活でNoteをどう使うかを重点的に訴求した。「こうしたマーケティング活動を通じて、否定的な意見が肯定的な意見に変わり、実際にNoteを体験して、大画面とSペンに満足した人が多かった」とホン氏は手応えを話す。
GALAXY Note IIでもこうしたプロモーションの手法は継承しており、100以上の都市でGALAXY Note Studioを開設していく。日本でもまもなく開設予定だ。なお、初代GALAXY NoteでオープンしたGALAXY Note Studioは、似顔絵師にGALAXY Noteで自分の似顔絵を描いてもらえることが話題を集めていた。GALAXY Note IIでも似顔絵師は起用するが、初代Noteよりはタッチ&トライコーナーでの体験に比重を置く。
韓国のソウルでは、永登浦(ヨンドゥンポ)のデパート TIMES SQUAREの1階にGALAXY Note Studio(の1つ)が開設されている。ここではGALAXY Note II、GALAXY Note 10.1、GALAXY S IIIなどの実機を展示するほか、2人の似顔絵師が待機しており似顔絵を描いてもらえる。描いてもらった似顔絵をバッジにプリントしてくれるサービスも行っている。今回のGALAXY Note Studioは鏡をふんだんに取り入れたデザインを特徴としており、担当デザイナーによると「子どもの遊び場所」をイメージしたという。屋外のスタジオには、鏡の内側にディスプレイを設けて天気予報などを表示させるタイプもあるそうだ。こうしたスタジオの独創的なデザインも、来場者の足を止めるのに一役買っているのだろう。
基本的に通信事業者が携帯電話を販売する日本とは異なり、海外ではSamsungブランドショップが多く展開されている。こうしたショップでも「体験」に重きを置き、「グローバルで3万以上あるSamsungブランドショップでは、Note IIの実機がすべてセッティングされており、売場のスタッフのNote IIについての教育も充実している」とホン氏は胸を張る。
GALAXY Note(SC-05D)が「思ったほど日本で売れなかった」のは、本体が大きすぎた、Sペンの操作性がいまひとつだった、Sペンの使い道をうまく訴求できなかった、日本仕様にあまり対応できなかった――などの理由が挙げられるだろう。GALAXY Note IIでは完ぺきとまでは言えないが、これらの問題解決に努め、スマートフォンとしても、ノートしても、ワンランク上の製品に仕上げた。今夏から日本でも4インチ台後半のスマートフォンが増えており、大画面に対する抵抗感も徐々に減りつつあるのではないだろうか。そして“誰もがクリエイティブになれる”というコンセプトは初代GALAXY Noteよりも分かりやすい。それでもカク氏は「日本ではGALAXY Note IIよりGALAXY S III α(SC-03E)の方が売れるのでは」と控えめだが、スペックはほぼ同等でNote IIには進化したSペンがある――と考えると、プロモーション次第では日本でのヒットも期待できそうだ。
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