「IGZO」搭載で“相反する需要”に応える――「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」完成までの道のり(1/4 ページ)

世界で初めて「IGZO」を搭載したスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」がいよいよ発売された。スマホにIGZOを搭載するメリットとは。そしてどのような困難を乗り越えてSH-02Eは完成したのか。シャープの開発陣8人に話を聞いた。

» 2012年12月07日 10時00分 公開
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 日本市場でスマートフォンが普及しつつある現在、スペックだけで差別化を図ることは難しくなりつつある。そんな中でシャープがドコモ向け冬モデルとして投入する「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は、同社が研究・開発してきた新世代ディスプレイ「IGZO」を、世界で初めて搭載している。これまでもシャープは液晶にこだわりを持って携帯電話を投入してきたが、今回のSH-02Eは、そのターニングポイントになりそうだ。IGZOをスマートフォンに搭載することで、どのようなメリットが得られ、差別化を図れるのか。SH-02E開発の舞台裏を、シャープ通信システム事業本部の8人に聞いた。

photophoto 「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」。ボディカラーはRed、White、Blueの3色
photo 上段左から酒巻拓朗氏、松石拓也氏、西本望氏、錦織理人氏、下段左から真野靖彦氏、田中陽平氏、永井秀幸氏、前田健次氏

この冬に絶対にIGZO搭載を間に合わせたかった

photo 永井秀幸氏

 すでに何度か説明しているが、IGZOとは「In(インジウム)」「Ga(ガリウム)」「Zn(亜鉛)」「O(酸素)」で構成される酸化物半導体のこと。従来のアモルファスシリコンよりもトランジスタを小型化できるため、1画素あたりのバックライト透過率が向上し、従来機と同じ明るさで消費電力を抑えられる。このIGZOはどのような経緯でスマートフォン(SH-02E)へ搭載されることになったのか。パーソナル通信第一事業部 商品企画部の永井秀幸氏は次のように説明する。

 「スマートフォンがフルタッチ形式になってからは、『見る』入口と『操作する』入口の両方がディスプレイにあるので、スマートフォンの核になるのが“ディスプレイ”だと思っています。シャープはディスプレイとスマートフォンを開発するメーカーなので、他社に比べてアドバンテージのあるディスプレイを、先駆けて搭載する必要があると考えました。スマートフォンを使うお客さんのニーズをいろいろ分析していく中で、大きくて美しいディスプレイは当たり前。ハイスペックやハイパフォーマンスを求められる方がやはりスマートフォンユーザーには多いですね。

 そこにバッテリーが長持ちするという需要が最近特に高まっていると感じていますが、この両立はなかなか難しい。ディスプレイが大きくなって高画質になる、かつハイスペックでパフォーマンスが良いものを作ると相反してしまい、バッテリー持ちが悪くなってしまいます。そこで一番最適なディスプレイがIGZOで、この冬に搭載のめどが立ったので、SH-02Eを初号機として立ち上げました」

 永井氏はもう1つの背景として、「LYNX 3D SH-03C」や「GALAXY S」などの本格的なAndroidスマートフォンが日本で発売されてから2年がたったことも挙げる。「そこで先駆けて買われたお客さんがたくさんいらっしゃると思います。その中には、パフォーマンスやバッテリー持ちなどに不満を持っている方も多く、こぞって買い替えられるタイミングがそろそろじゃないかと。だからこの冬には(IGZOの搭載を)絶対に間に合わせようと開発を進めてきた――という経緯もあります」(永井氏)

“液晶アイドリングストップ”をスマホで実現する苦労

photo 前田健次氏

 IGZOの特性を語る上で外せないのが“液晶アイドリングストップ”だ。液晶の表示を維持するために、通常はCPUから液晶へ、1秒間に60回画像を転送しているが、IGZOでは静止画の表示中は、画像の転送を1秒間に1回(1Hz)に抑えられる。つまり(静止画表示中における)IGZOの画像転送回数は、通常の60分の1で済むというわけだ。グローバル商品開発センター システム開発部の前田健次氏によると、スマートフォンの表示にIGZOの液晶アイドリングストップを最適化することが難しかったという。

 「1Hzとは、画面の更新が1秒間に1回ということ。例えば30フレーム/秒の動画は30Hzで動きますし、タッチパネルを動かしているときには、もっと高い周波数でバババッと動きます。一方で静止画を表示しているときには1Hzという具合に極限までフレームレートを落とします。要は可変なんです。アイドリングストップというように、走っているときはバーっと行くんですが、止まっているときはストップする。送られる画像(コンテンツ)に応じた周波数を選ぶのがすごく難しかったですね」

 タッチパネルを搭載するスマートフォンは、家電の中でも特に画面の動きが激しい。動画を視聴しているときはフレームレートが一定だが、ブラウジング中にスクロールをすると、とたんに動きが激しくなる。「テレビやフォトフレームのように、フレームレートを固定することはそれほど難しいことではないと思うんです。でもスマートフォンではWebブラウザをスクロールさせて動くときもあるし、止まるときもある。すごく周波数の起伏が激しいものなんです」(前田氏)

photo IGZO、S-CGSilicon液晶システム、CG Siliconの静止画表示中における、液晶とバックライトの消費電力を比較したもの。液晶の消費電力はIGZOが最も低いことが分かる

 静止画の表示中――というと、写真を閲覧しているようなシーンをイメージするかもしれないが、IGZOでは例えばブラウジング中に指を離して画面を見るときなど、瞬間的に画面が動かない状態も含まれる。つまりほんのわずかでも画面が静止すれば、液晶アイドリングストップが有効になり、少しでも画面が動いたら1秒間に60回画像が更新される。こうした動きの激しいスマホの中で、1Hzと60Hzの周波数をタイムラグなしに切り替えることは容易ではなく、長い期間をかけてチューニングしていったそうだ。前田氏は「60Hzからパッと1Hzに止まったときは『やった!』と思いましたよ」と興奮気味に話す。

 さらに、1Hz駆動時にも、極限まで消費電力を落とせるようにチューニングした。ここは製品が完成する最後の最後まで、こだわり抜いて調整を続け、SH-02Eの発表当時から発売までにも改善されたという。「『ここまでかな』というところで妥協せずに、最後まで(消費電力を)削りました。車でもそうですよね。エンジンはアイドリングストップで完全に止まりますが、アイドリングの周波数が1500ぐらいだと全然意味がなくて、やはり1000以下、800くらいまで下がって最後に止まる、という感じですね」と前田氏。つまり画像の転送回数を60分の1に減らすだけでなく、減らした後の消費電力をさらに抑えることにも注力したわけだ。これは実際にIGZO搭載スマホを作ったから見えたものであり、こうしたノウハウは次の商品にも生かせそうだ。

 IGZOはスマートフォンに留まらず、テレビなどの採用も視野に入れて開発が進められているが、スマートフォンに搭載する上での難しさはあったのだろうか。「IGZOを適用する方法は商品によって異なるので、スマートフォンや、出るかどうかは別として、それ以外のIGZO対応製品にしても、どうアプローチするかが、最終的な商品の完成度に関わるところだと思います」と前田氏は話す。スマートフォンではその小さなサイズや、頻繁に動く画面の制御が特に難しかった点だという。「解像度が高いとそれはそれで難しいですし、小さいものを作るのも難しい。SH-02Eも『ここまでやるんかい』というようなサイズですよね(苦笑)。結果的には狭額縁で対応できましたが、これは何年分かを先取りしたようなものですね」(前田氏)

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提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月26日

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