通話品質の実地試験を行う場所は、呉市倉橋町大迫にある倉橋島の大迫港が選ばれた。この地が選ばれたのは、地形や広さが船上基地局がカバーできる角度と面積にマッチすること、そして残念ながらauの商用サービスの“圏外”であることだった。試験とはいえ実際に電波を発射して通話を行うには、運用中の他エリアに影響が出てはならず、逆にほかの基地局から影響を受けても結果が変わってしまう。そのため、こうした空白地帯が選ばれたという。
試験時に船上基地局を介して通話や通信ができたのは、あらかじめ登録したフィーチャーフォン(京セラ製のSANYOブランド端末「SA001」)のみ。これも、一般のau端末が船上基地局と通信しないようにするため。もちろん通話相手の電話回線はどこでもよく、関係者や報道陣がもちこんだ各社の携帯電話を使った通話デモが行われた。なお試験当日は大迫港付近にKDDIの車載基地局が出動して、臨時のサービスエリアを関係者や報道陣向けに提供。試験とはいえ、2つの臨時基地局(船上と車載)が重なってエリアを構築するのは極めて珍しいことだという。
現地で船上基地局を使った通話を試してみたが、バックホールに衛星回線を使っているため呼び出しや通話時のタイムラグがやや大きい。とはいえ、音声は明瞭に聞こえ、“普通の会話”が行えた。
船上基地局を災害対策の一戦力とするにはまだ時間がかかる。しかし四方を海で囲まれた日本にとっては、一日も早い実用化が待たれる存在といえるだろう。
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