第9回 約400社が乱立する中国スマートフォンメーカー山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)

» 2013年05月02日 13時23分 公開
[山根康宏,ITmedia]
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オンライン販売に注力する中国スマートトフォンメーカー

 ただし、その中で年間1000万台以上を販売する大手は数社のみだ。例えば、Coolpadの2012年の年間販売数は2000万台を超えており、向こう3年以内に世界シェア3位を目指すという壮大な計画を掲げている。LenovoやHuawei、ZTEも中国のみならず海外での拡販を進めており、これらの上位グループは豊富な製品ラインアップを武器に中国とグローバル市場で順調に販売数を伸ばしていくだろう。

 それに続くのが家電メーカーやAV機器メーカー、携帯電話専業メーカーだ。Haier、Haisense、Konka、TCL、Malata、Vivo(歩歩高)、Geoneeなどは、既存製品のブランド力と量販店での知名度が高いことに加え、ミドルレンジクラスの1000元スマートフォンを中心とした製品展開で、通信事業者を介した販売も行っている。このグループに入るメーカーの製品は、中国を訪れた観光客でも利用しやすい市内の携帯電話ショップで見かけることがあるだろう。

別格級の強さをしめすCoolpad(写真=左)とメーカー名からブランド名の「Vivo」へ変更してイメージアップを図る歩歩高(写真=右)は、日本ではまだ知られていないが、中国では有力メーカーの1つとなるほどに成長した

 中国国内では無名の零細メーカーも続々とスマートフォン市場に参入している。中国工信部の報告では、中国スマートフォンメーカー377社のうち、全体の約6割、246社の年間販売台数は合わせても10万台以下に過ぎない。月産8000台程度のメーカーがひしめき合っていることになる。このようなメーカーは中国全土に展開する量販店や移動体通信事業者経由での販売が難しく、OEMや海外輸出なども手がけて細々と経営を続けているところが多い。加えて、山寨機メーカーのように一発勝負で市場に参入するメーカーも増えている。

大画面低価格スマートフォンで参入するXiaoU(写真=左)。小規模メーカーの中には、大手メーカーのモデルとデザインを類似した製品を投入するところも少なくない(写真=右)

 全国規模の量販店や移動体通信事業者での販売が難しい新規参入の小規模メーカーが力を入れているのがオンライン販売だ。中国のオンライン販売市場は年々右肩上がりに伸びており、中国iResearchの調査によれば中国国内におけるネット販売の2012年取引規模は8.1億人民元と前年比約30パーセントも増加している。

 オンライン販売サイトは「Taobao」も手がけるAlibabaの「Tmall」が市場シェアの半数を握っているが、家電量販店の「Suning」、海外資本のAmazon、そして「京東商城」など多数のB2Cサイトが競うように取扱商品数を増やして売り上げも伸ばしている。ユーザーがオンライン販売でよく購入するのはアパレル製品と家電、デジタル製品で、この2者で全体の半数近くを占めているという。携帯電話ももちろんオンラインで購入可能だ。

 新規メーカーはそれら大手のB2Cサイトに自社のオンラインモールを設置して自社製品を販売するほか、自社のWebページを使っても積極的に販売している。この動きは大手メーカーもすでに始めていて、オンラインで優先して製品を販売するメーカーもある。例えば、Huaweiは6.1インチの大型ディスプレイを搭載した「Ascend Mate」を実店舗に先行してオンラインでの販売を開始した。

大手B2Cサイトに出展するHuawei(写真=左)。Ascend Mateは実店舗販売の1カ月前からオンラインでの販売を先行した(写真=右)

 少数生産のハイスペック製品で成功したXiaomiもオンライン販売を効果的に利用している。Xiaomiの新製品は、Webページで発売日と発売台数を告知して、オンラインのみで販売する。その情報は口コミで広まり、販売初日はいつも数分で売り切れるほどだ。ほかにも、親交メーカー4月13日にオンライン販売を始めた、クアッドコアで動作クロック1.2GHzのCPUを搭載しながら699元という低価格を実現した新興メーカーの「小辣椒M1クアッドコア」も20万台を一瞬で完売した。

 これらは製品として優れているからユーザーが注目するのであって、単純に価格が安いだけの製品ではここまで人気は集まらない。少数精鋭のハイスペックモデルに特化したメーカーであれば、オンラインショップにおける限定販売の効果は高い。

高スペックスマートフォンのオンライン販売を成功させたXiaomi(写真=左)。Xiaomiと同様に少数オンライン販売を行うメーカーが増えている(写真=右)

 メーカー関係者の話では、携帯電話の販売ルートは全体の9割が実店舗で、オンライン販売はまだ1割程度に過ぎない。これに対し、Xiaomiの販売台数は、7割をオンライン、3割が実店舗で占める。短期間で急成長したXiaomiの成功例で分かるように、今後販売数を伸ばしていくためにオンライン販売の強化が各社とも必須だろう。大手メーカーは量販店、事業者店舗、そしてオンラインという3つの販売チャンネルをそろえ、中小メーカーや新規参入メーカーはオンライン販売を強化する動きがこれからのトレンドとなるはずだ。

 中国では、ここ1年ほどにおいて、各社で毎月の3G新規加入者数が300万人前後で推移していた。圧倒的な加入者数の中国移動では、2Gから3Gへの移転が急速に進み、2013年に入ってから1月に700万人、2月に900万人、3月には1000万人弱と3G加入者を急速に増やしている。そして、3Gの新規加入者は2Gのフィーチャーフォンから3G対応のスマートフォンに買い換える。3G加入者はまだまだ増えるだろうから、3G対応スマートフォンがいくらでも売れる状況は続きそうだ。市場に参入するスマートフォンメーカーの数もさらに増えていくだろう。

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