ディスプレイが5インチと比較的大きいおかげで基板面積も広く、部品の配置間隔も余裕がある。Tegra 3の動作クロックは1.7GHzに設定してる。2012年7月に登場した富士通の「F-12D」は、日本メーカーの国内向けスマートフォンとしては初めてTegra 3を搭載したが、プロセッサの発熱で端末本体が熱くなって自動停止するという事例が発生したケースも少なくない。
Tegra 3の熱を避けるため、同じく発熱するDRAMは離れた場所に配置している。ただ、DRAMはプロセッサーと連動して動作するので、本来はプロセッサーの上に載せる形(Package on Packageと呼ぶ)で実装し、配線長を最小に抑えるのが望ましい。
NVIDIAのTegra 2を搭載した端末でも初期モデルでは、ヒートスプレッダを取り付けたプロセッサを単体で実装していたが、その後に登場したモデルでは、DRAMを上に載せた形状となって発熱問題で大きな改善があったことを示唆していた。Tegra 3の初期モデルから9か月が経過して登場したF-02Eでも発熱問題に何らかの対策を講じてDRAMを上に乗せた状態になっているだろうと期待したが、F-02EのTegra 3もヒートスプレッダを付けた単体配置を採用し、DRAMは離れた場所に実装していた。
スマートフォンを構成する部品の採用実績において、Qualcomm製チップが占める割合は高い。Qualcommの通信チップを採用すれば、ベースバンド、プロセッサー、電力管理のコントローラもQualcommを採用するケースが多いためだ。最近では、さまざまな音源を再生するオーディオコーデックや無線LAN、BluetoothでもQualcommのコントローラが登場している。その中にあって、富士通のスマートフォンは、Qualcomm以外のチップを積極的に採用している。
電話回線用の通信用ICは、富士通がドコモとNECと共同で開発した「ANT30」(通称COSMOS)だ。F-02E以前のF-05D、F-10D、F-04Eでは、同様に共同で開発した通称“サクラチップ”を搭載していた。サクラチップは、3.9G規格のLTEから第二世代規格のGSMまでの通信方式に対応するだけでなく、2種類のLTE規格(送信時と受信時における周波数の異なる使用方法でFDD方式とTDD方式に分かれる)もサポートする。しかし、3G/GSM用通信チップは別途搭載する必要があり、システム全体の消費電力面で不利だったため、COSMOSでは、LTE通信時の消費電力を削減した上、3G/GSMの通信機能も統合した。(記事掲載当初、F-02Eに搭載する通信用ICの説明で誤りがありました。おわびして訂正いたします)。
通信の送受信を切り替えるアンテナスイッチはソニーの「CXM3582」で、信号増幅器はAvago Technologies製を3基、村田製作所製を1基搭載する。電源管理ICはリコーの「RD5T7317」だ。無線LAN、Bluetooth、GPSの制御は、Texas Instrumentsの「WL1283」が担当する。
USBのインタフェース切り替えICはロームの「BD91411GW」だ。ロームのICは、このほかにも、NFC用電源として「BD7601GUL」を、イルミネーション用LED駆動ICとして「BD2802GU」を採用する。また、MOSFET、ショットキーダイオード、ツェナーダイオードもロームのICを実装した(以上は、ロームの協力でチップの型番を確認している)。
日本特有の機能であるワンセグICは、チューナーが富士通の「MB86A35W」、RF部が韓国Raon Techの「MTV808」だ。端末の傾きにあわせて画面の縦表示と─表示を入れ替える加速度センサーと端末の動きを検出するジャイロスコープは、統合チップとしてスイスのSTMicroelectronicsが供給している。
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