Samsung電子がGALAXY S4を公開した後、金融機関などが原価計算予想を発表している。予想ごとに多少のばらつきはあるが、おおむね、220〜240ドルに収まっている。8コアプロセッサーや2GバイトのDRAM、5インチで解像度が1080×1920ピクセルの有機ELディスプレイなど高価な部品を搭載しているのに意外と安い。それでは、どの部分でコストを切り詰めているのだろうか。
その1つが通信チップだ。インテルが買収したドイツのICメーカ「Infineon」の通信IC(PMB5745)および通信処理を行うベースバンドIC(PMB9820) は、数年前から使われているモデルだ。内部の構成が大きく変化した場合には型番も更新する場合が多く、数年にわたって型番が変わっていないということは、仮に内部構成に変化があったとしてもマイナーチェンジ程度であることを示唆している。このため、この部分のIC価格は最新チップと比較し3〜4割程安いと予想できる。
通信の信号を増幅するパワーアンプもコストダウンの対象だ。電子部品は似た機能があれば統合して1チップにすると部材の共有効果などで安くなる。GALAXY S4の韓国向け8コアモデルはLTEに対応していないが、第三世代通信規格WCDMAと第二世代通信規格GSMに対応しており、この2つの規格を構成する通信周波数の増幅をSkyworks製のSKY776151チップで行っている。
そのほかの部品は、従来モデルのGALAXY S3と類似しており、ここでも、似た部品を使うことで全体としてコストを抑制しているといえる。また、分解して推測できる端末組立工程もGALAXY S3とほぼ同じと思われる。人件コストが中国の3分の1程度ベトナムで組み立てており、ここでも、コストダウンに貢献している。
GALAXY S4でも、分解の最初は背面のバッテリカバーを手で外すところから始まる。背面カバーを外すとバッテリー設置スペース、SIMスロット、microSDスロットを空けたパネルが見える。このパネルを固定するプラスネジすべて外すとパネルも外せる。このパネルには、さまざまなアンテナを搭載している。パズルのピースのようにパネルから取外し可能なものもあり、出荷する国の通信規格などに合わせてアンテナをカスタマイズできる。
パネルの下には、大きなバッテリーと2層に分かれて重なる2枚の基板がある。1320万画素のメインカメラを搭載した主基板と、カードスロットを搭載する副基板で、バッテリー下部にはマイクやmicro USBなどを搭載する小型基板もある。小型基板は、細長いL字形をしたバッテリーの横を通る細長いフレキシブル基板で主基板と接続している。
主基板のEMIシールドは、片面を金属のふた、片面は冒頭で述べたマグネシウム含有プラスチックで覆うことでノイズを閉じ込めている。片面の金属ふたを省くことができたわけで、ここにもコスト削減の工夫がある。基板と接する面は、ICに合わせたくぼみを形成している。この複雑な形状が可能なのも、射出形成が可能なプラスチックならではの利点だ。
プラスチックパネルとタッチパネル一体型ディスプレイ部を分解する作業では、家庭用ドライヤーで最高温度に設定した熱風を用いてディスプレイの角を加熱する。しばらくすると、ステンレス定規を差し込めるほどに浮き上がってくる。浮いた部分にステンレス定規を差し込み、差し込んだ両側を熱して定規を移動する。5分ほどで1周してディスプレイ部が剥がれる。GALAXY S4のディスプレイはタッチパネルと一体型なので、分解作業はここまで限界だ。
Samsung電子のスマートフォンは多種多様なセンサーを搭載している。大型のセンサーとしては以下のものがある。
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