孫氏が思い描く、ソフトバンクの第2章でカギとなるのが、米国での事業戦略だ。ソフトバンクは日米を類似市場と見なし、日本で培った「ネットワーク」「端末」「営業/ブランディング」「サービス/コンテンツ」のノウハウを米国でも生かしていく。これら4つは、ボーダフォン日本を買収したときに、孫氏がかかげたコミットメントでもある。
ネットワークでトピックといえるのが、SprintがCleawireの2.5GHz帯でTD-LTEを提供していくこと。「現在基地局は建設中で、対応機種もこれから(登場する)。2013年内に少し使える地域が増えて、2014年は全国規模で使えるのでは。端末も来年そろうだろう」と孫氏は見通しを話す。ソフトバンクモバイルもWCP(Wireless City Planning)が保有する2.5GHz帯にて、TD-LTEと100%互換のAXGPネットワーク用いたサービスを提供しており、「(Sprintと)共通の端末を利用できる」と孫氏は期待を寄せる。また基地局展開をする上でのノウハウも提供していく。
「TD-LTE、FDD-LTE、プラチナバンド、これらが一体化されたスマホが日米で共通に使える時代がもうじきやってくる。そのボリューム効果が、さまざまな端末メーカーとの価格や技術交渉に活用できる」と孫氏。Sprintで扱っているSamsungやHTCなどのスマートフォンが、ソフトバンクモバイル向けに供給される日も近いかもしれない。
営業/ブランディングについても、日本で6年間培ってきたノウハウを生かす。その一端が垣間見えたのが、ソフトバンクの買収が決定した7月11日に、Sprintがさっそく新しい料金プランを発表したこと。新料金プランでは、月額80ドルでデータ通信、通話、SMSが無制限に利用でき、複数台の端末を所有していると、2台目以降から月額料金がさらに安くなるなど、他社よりも競争力の高い内容となっている。このプランの最終的なゴーサインは、買収直後にソフトバンクが出したそうだ。
サービス/コンテンツは、Sprintと企業カルチャーを共有することで、より強化する。これにコストシナジーを加えて、Sprintの業績を改善していく。
米国で活動する新たな拠点として、孫氏は9月にシリコンバレーにオフィスを構える予定があることも明かした。ここでは端末の調達や独自技術、アクセサリーの開発などを行っていく。ビルは1000人以上入る規模で、当初はソフトバンクとSprintから数百人の社員を派遣する予定だ。
孫氏は最後に2013年度の連結業績予想として、Sprintの赤字を含めて「9000億円」から「1兆円以上」に上方修正したことを発表した。
「我々の第2章が、まさに今月から始まった。現在、ソフトバンクの営業利益のランキングは、通信業界の中では世界6位だが、ここから駆け上がっていきたい。ほかの業界も加えると62位。今の段階では単なる大風呂敷、夢物語だが、世界ナンバー1に向けて頑張っていきたい」と孫氏は力を込めた。
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