端末関連で最も大きなニュースは、ついにドコモからiPhoneが発売されたことだろう。spモードメールをはじめとする各種サービスの対応は遅れたが、発売後は順調に売れ行きも伸ばしている。MNPの純減が一時的に減るなど、ドコモとApple、双方にとってウィン・ウィンとなったようだ。AppleはiPhone 5s、5cの発売にあたって、ドコモと共同でプレスリリースを出すなど、これまでよりも踏み込んだ関係を築いていることもうかがえる。
iPhoneがドコモから発売された結果、売れ筋の端末が3社とも同じという状況になった。これに対してKDDIは、Androidのラインアップを拡充し、iPhone導入前にはドコモの顔だったXperiaとGALAXYを横並びにした。また、KDDIがLGエレクトロニクスと共同で「isai」を開発したように、キャリアならではの“顔”も作ろうと注力している。ソフトバンクモバイルも状況は似ている。同社は冬モデルを事実上、シャープの「AQUOS PHONE Xx 302SH」と富士通の「ARROWS A 301F」の2機種に絞り込み、端末価格や2年利用した際の実質価格を低く設定した。特にAQUOS PHONE Xxについては、他社にない「3辺狭額縁」の特徴を備えた意欲的な端末に仕上がっている。iPhoneを導入したドコモについても、他社にないコンパクトな「Xperia Z1 f SO-02F」を用意し、「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」や「ARROWS NX F-01F」とあわせて「おすすめ3機種」として販売している。
このように各社とも端末で何とか差別化しようとしている一方で、売れ筋はやはり特定の機種に偏っている。先に挙げたようなネットワークの競争に各社が終始しているように見えるのも、これが一因だ。その上で、端末やネットワークの“上に乗る”サービスに軸足を移したのも、この1年の特徴といえるだろう。例えば、ドコモは「docomo ID」を他社のユーザーにも開放し、サービスのマルチキャリア化を進めている。会員数の多い「dビデオ」や「dアニメストア」といったコンテンツサービスに加え、「d fashion」や「dトラベル」のようにファッションや旅行にまでジャンルを拡大しているところだ。
KDDIは「auスマートパス」を強化し、おトクなクーポンや協業先が提供する豊富な割引、限定サービスを増やしていく構えだ。スマートフォン初心者に向けた、「auスマートサポート」を開始したのも、2013年のことだ。これに対してソフトバンクモバイルは、米Sprintの買収に伴い、シリコンバレーに拠点を設立。海外向けのスマートフォンアクセサリーを拡充するなど、2社とは違った戦略に打って出た。「ソフトバンクヘルスケア」のように、アクセサリーと連携したサービスを始めたのも、面白い取り組みと言えるだろう。
ただし、これらのサービスが本当にキャリアの“売り”になっているのであれば、先に挙げたようなネットワーク競争に終始する必要はないはずだ。少なくとも現時点では、3社ともがネットワークの優位性を過度に強調しすぎているきらいがある。その意味で、3社とも「つながりやすさ」や「通信速度」を売りにしている間は、差別化が成功しているとは言いにくい。また、端末そのものについても、まだ差別化の余地はあるように感じている。例えばKDDIの「isai」の取り組みはその一例だが、スマートフォン時代にキャリアの独自色をどのように出すのか。2014年は、それが改めて問われる1年になりそうだ。
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