インタビュー
» 2013年12月27日 10時00分 UPDATE

スマホアプリの最前線:「“買い切り型”の新市場を作り出す」――キーマンが語る「ドラクエ」のスマホ展開(後編) (1/3)

「ドラゴンクエスト」シリーズのスマホ展開を仕掛けるスクウェア・エニックスのキーマン2人へのインタビュー後編。スマホ市場におけるゲームの売り方、見せ方について聞いた。

[村上万純,ITmedia]

 スマートフォンでの本格展開を始めたスクウェア・エニックスの人気RPG「ドラゴンクエスト」(以下、ドラクエ)シリーズ。同社の「ドラゴンクエスト」シリーズエグゼクティブプロデューサー 三宅有氏、アプリ版「ドラゴンクエスト」シリーズプロデューサー 藤本則義氏の2人へのインタビュー後編は、スマホ市場でのゲームの売り方、見せ方に焦点を当てる。ダウンロードは無料で、随時アプリ内で課金する方式が一般的なスマホ市場で、買い切り型のパッケージを提供した同社の狙いは何なのだろうか。今後の展開についても話してくれた。

スマホ市場の特性に改めて気付かされた

――(聞き手、ITmedia) 初代「ドラゴンクエスト」(以下、ドラクエI)を先着100万ダウンロード限定で無料配信した狙いを教えて下さい。(初日で100万ダウンロードを突破したため、無料期間を12月10日まで延長している)

photo 「実は有料で売りたかったですよ」と話す藤本氏

藤本氏 特に、ドラクエを知らない人や、昔ドラクエをやってた人たちに「スマホでドラクエができるよ!」ということを伝えるために、それなりのインパクトが必要だったと考えたんです。

―― スマホ版のドラクエIは初日で100万ダウンロードを突破しましたが、これは予想してましたか。

藤本氏 前例がないので、本当に全く分かりませんでした。4日間くらいで超えていてほしいという思いはありました。結果的に好調で、初日だけで約150万ダウンロードしていただけました。このダウンロード数はスマホ史上類を見ない勢いだったのではないでしょうか。

三宅氏 買い切りの市場はあまり大きくなくて、ゲームの本数が減り、価格も下がってきていたので、その中でどうなるかは本当に読めなかったです。今回こうして話題にしていただいて、そのおかげで20年ぶりにゲームをするという人もかなり多かったようです。今までうちのマーケットにいなかったユーザーさんを取り込めたのは大きいですね。

―― 有料になってから、ダウンロード数の伸びはどうですか。

藤本氏 有料でも予想以上に好調です。無料で約350万ダウンロードされているのに、今でもまだダウンロード数が伸びていまして、びっくりしています。

三宅氏 (有料化で)ぱたっと終わるかと思っていたので、これがスマホの市場なのかと気付かされました。10年、20年ぶりにゲームをしましたという人たちは、最近のゲームは怖くて遊べないんじゃないかと思います。ドラクエIは300円ですけど、その価格だと普通に買ってもらえますね。

買い切り型の新しいスマホ市場を作りたい

―― そんな中で、ドラクエVIIIは2800円と強気な価格設定ですが、不安はありませんでしたか。

藤本氏 価格だけが独り歩きしてしまわないかという不安はもっていました。そこで、スマホアプリでは価格を提示しないまま配信日当日を迎えるのが主流ですが、ドラクエVIIIは事前にお客様に価格を提示すると同時にゲームの中身が分かる映像なども出して、お客様にきちんと情報を伝えることに努めました。

photo 「こういう売り方は、ドラクエだからできたことでもありますね」と三宅氏

三宅氏 この価格でチャレンジするなら今回が最初で最後のチャンスだなと思っていました。ゲーム内容が分かっていて、昔は8800円で提供していたものを、2800円の価値があると判断して買ってもらえるかどうかという。スマホ向けのオリジナル作品だとこういう値付けはできませんから。

 ただ、ドラクエのリメイクであれば、事前にゲームの中身やどれだけ遊べるかが分かっています。さらに、しっかりとした値段を付けるが、ただしそれ以上は課金しない、ということへの安心・信頼も大事なのではないかと。

 うちとしても、こういう買い切り型アプリの提供を昔の資産を含めてどんどんやっていきたいんです。それには、ある程度の価格をつけて売っていかないと次が作れない。そういう新しいスマホ市場を作っていきたいという気持ちを込めて値付けました。

藤本氏 それは他社さんも注目しているところなので、買い切りで追加課金のないモデルをしっかり作っていきたいですね。

三宅氏 「Free To Play」(プレイ自体は無料だが、アイテム課金などができるゲームのこと。)のゲームと比べても、アイテム課金にかかるお金を考えると2800円は安い方なので、お手頃感も感じるはずです。価格ってあくまでお客さんの持つイメージなので、そこでしっかり市場が作れればなと。ただ、ここで「価格が高い」と思って踏みとどまってしまう人がどれくらいいるのかは分からないですけどね。

 世の中の全体的な流れとして、例えばディズニーランドも昔は1アトラクションずつお金を払ってたじゃないですか。でも今はワンデーパスポートや年間パスポートなどが使われていますよね。信頼・安心感があればそういうお金の払い方をしてくれて、しかも追加料金の心配がなく遊べる。それをスマホでも実現したいと思いました。

―― 一方で、オンラインゲームの「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」(以下、ドラクエX)をNTTドコモの「dtab」向けに配信を開始しました。課金は数日単位で支払う方式です。

三宅氏 ドラクエXに関してはほかのタイトルとは逆で、1つの世界にみんなが入って遊べるものですので、入り口はたくさん増やしていこうと考えています。家庭用ゲーム機だけでなく、タブレットを持って外出先でも気軽に遊べるように。

 あの課金方式もまだお試しというか、チャレンジでやっています。これまでは月額課金モデルが普通だったと思いますが。クラウドサービスに関して言うと、そもそもパッケージという発想がないので、その代金なしで、純粋にプレイ料金だけで遊べるようになってます。

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