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» 2014年01月17日 10時00分 UPDATE

総務省「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」(2):調査会社へのヒアリングで見えてきた、通信速度測定の問題点

モバイルデータ通信は、理論値と実行速度の数値がかけ離れていることが多い。こうした問題を解決すべく、総務省が「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」を発足。今回は、電波測定の調査会社へのヒアリング結果をまとめた。

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 近年、モバイルインターネット通信は高速化が進み、事業者による広告などで最大通信速度を表示しているが、実際に利用する際の実効速度との乖離が大きく、また、事業者やメディアなどによる独自の実効速度の調査結果が公表されているものの、調査基準や方法などにはばらつきがあり、単純な比較ができない状況が続いている。その結果として、利用者のサービス優良誤認に繋がり、適切にサービスを選択できず、不利益が生じたり利便を損なう可能性がある。

 総務省は、これらの課題を解決すべく「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」を発足し、11月から2014年3月まで計5回の会合を開催して、「モバイルの実行速度等のサービス品質の計測等の在り方」について一次報告を取りまとめるとしている。

 そこで、これら研究会の公開情報のまとめと、研究会を主催する総務省(総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課)への取材訪問(12月12日)内容をレポートする。

photo 研究会を主催する総務省データ通信課の井上氏、佐藤氏、下谷氏

 前回の第1回会合まとめ「(1)背景と検討事項・海外動向・通信事業者ヒアリング」に続き、本稿では、第2回会合についてレポートする。

野村総研による海外動向レポート(追加調査結果)〜北米ではSamKnowsが落札。アプリ公開から2日で3万インストール〜

 野村総研は、「諸外国におけるモバイルインターネット回線速度計測の状況」の追加調査結果をレポートしている。

 アメリカは、FCC(Federal Communications Commission)が、固定系とモバイルの両方をセットにしたブロードバンド計測の公募入札を行ない、Speedtest.net(Ookla)ベースの用のカスタムアプリではなく、固定に強いSamKnowsが落札して、電波調査「Measuring Mobile Broadband Performance」を開始した。

photo Measuring Broadband America紹介ページ
photo Measuring Broadband America/Mobile Broadband
photo 落札したSamKnowsはグローバルにブロードバンド計測を実施している

 Googleプレイでアプリ「FCC Speed Test」が公開されているが、当然ながら日本からのダウンロードに対応していない。

photo
photophotophoto 月間の上限が100MBに設定されている

 公正さ公平さの為に、ソースコードがGitHUBに公開されており、計測項目は、スループット(下り・上り)、遅延(ping応答=Latency)、パケットロスの3種類と計測位置情報(GPS)。 アプリ公開から2日で3万インストール、4万回のテストが実施されているという。

 2014年には、測定結果を地図上にマッピングするサービスが開始されるため、ユーザは、マイエリアの実効速度情報を比較して、事業者・サービスを選択できるようになるとしている。

 また、州レベルの取り組みとして、カリフォルニアのCalSPEEDの事例が紹介されているが、FCCとは連携していないという。(「California Broadband Availability Maps and Data」にて概要を確認できる。)

photophotophotophoto カリフォルニア州のCalSPEEDは、任意スポットで事業者ごとの結果を確認できる

 ドイツは、固定インターネット回線を中心としながらも、全国26か所でのモバイルブロードバンド定点観測を計測実施事業者が行っている。今年度も調査を実施しており、今後は、モバイル(固定代用としてではなく、移動体通信として屋外での利用という意味と思われる)での実施も検討されていると報告している。

 イギリスは、前回資料に加え、「統計的に有意な差が認められる場合のみ、キャリアの比較などを実施している」「信頼度95%で公表している」ことを報告している。 ※資料P28-P29(※PDF)

 フランスは、2013年度調査について、4G(LTE)についての項目を追加し、ルーラル地域における調査も実施することを予定していることを報告している。広告表示については、事業者による情報提供の正確性についてARCEPから依頼するなどの取り組みが紹介されている。

 その他、「周波数割当時の条件として速度計測実施の費用負担を明記」「計測方法は既存アプリの不明瞭さや独自アプリ開発コストの観点から、調査実施事業者(人海戦術)による計測を行う」「計測場所は人口規模により大規模14地域は全て、それ以下はランダムに選定」「計測場所を事前に事業者に示すことはない」などとしている。

調査会社からのヒアリング結果〜電波調査レポートを公開する各社の考え方は?〜

 電波調査レポートを公開するMM総研、日経BPコンサルティング、イードから計測方法などのプレゼンテーションが実施された。

電波調査レポートを公開する3社の計測方法
項目 MM総研 日経BPコンサルティング イード
測定頻度 計測地点につき1回 第1回:2013年3月30日〜4月15日、第2回:2013年6月26日〜7月15日 編集部でトピックを設定するたび
測定回数 3回平均 3回平均(LTE/4Gのみ、3G含む全体平均) iOS/Android別にそれぞれ3回計測した平均
時間帯 8時〜20時 9時〜20時(調査場所による) 記事テーマによる(例:帰宅ラッシュ時の新宿駅18時〜19時)
場所 屋外定点のみ300地点
※株式会社ネクスト「2012年度上半期 全国人気の街ランキング」に基づく全国10エリア100拠点3か所(駅周辺で主要な店舗・公共施設)
全国47都道府県の人の集まる場所を中心に定点調査
第1回:1,000個所・1,188ポイント 第2回:1,793個所・2,147ポイント
帰宅ラッシュ時(18時〜19時)の新宿駅
山手線/環状線(大阪)の主要駅
東海道新幹線主要駅
首都圏ショッピングモール
機種 各回線の最新端末&話題のスマートフォン NTTドコモ:Xperia Z・Xperia A、KDDI:iPhone5・HTC J butterfly・HTC J One、ソフトバンクモバイル:iPhone5・AQUOS PHONE Xx 各キャリアの最新端末(iOS・Android)
回線種 大手3キャリアの次世代高速通信サービス(4G) LTE(4G)/3G LTE/3G/WiMAX
内容 下り・上り速度、4Gエリアか3Gエリアか 下り・上り速度、4Gエリア化率 下り・上り速度
ツール RBB TODAY SPEED TEST RBB TODAY SPEED TEST RBB TODAY SPEED TEST
測定員 自社スタッフ及び委託企業スタッフ 自社スタッフ及び提携企業社員 スタッフ
移動中 電車は同一地点で複数回の計測は困難
車は1名では実現不可能
計測場所が異なる可能性が高い
自動計測が必要
言及なし
懸念 47都道府県全てを対象とすることができなかった。1地点につき特定の時間帯でのみの計測に留まっている。対応周波数を全て網羅できなかった。ツールが1種類のみ。 指定した計測個所での調査の実施、およびデータの信頼性、情報の管理を考慮し、専属の調査員による計測が望ましい。国47都道府県での調査が理想。場所によっては、複数個所での計測が必要(駅の場合、ホーム/改札 等)。ピークの時間帯とピークでない時間帯の2回を計測するのが理想。3回計測が妥当。各売れ行きの新モデルが発売された時期「2月」「7月」の年2回の 実施がベスト。計測時期のOS別各キャリア売れ筋商品で計測。基準となるアプリの選定・推奨の実施。キャッシュのクリアして計測。「LTE/4G」「3G」で計測。計測場所の写真は撮っておくべき。 計測のための専用回線を用意し、できるだけ他の回線状況や利用者数に左右されない公平なサーバ環境。ユーザー端末の回線環境(場所、混み具合、時間など)を考慮。全国の面をカバーする計測。

 各社の調査は、最少人員で行われており、いずれもRBB TODAY SPEED TESTを使用しての手動テストを実施している。そのため、移動中のテストは同一場所で各端末・回線で実施できないことから、現実的ではないことをMM総研および日経BPコンサルティグが述べており、日経BPコンサルティングは、自動計測が必要であると言及している。

 また、イードは、国内でもっともメジャーなスピードテストツール「RBB TODAY SPEED TEST」のベンダーでもあり、ツールの計測方法についてなども紹介しているが、その中で一般ユーザも含むツールの計測統計値が示されており、総計測数3,208,051回の内訳として、NTTドコモ 23.32%・KDDI 34.64%・SoftBank 29.94%となっており、市場シェアからすると、ドコモの計測回数が非常に少ないという結果に注目したい点だ。

photo 数枚のスライドでRBB TODAY SPEED TEST計測方法を解説
photo 「キャリア別/回線別 計測数 (9月〜10月2か月間)」ではドコモの比率がかなり低い

 インテックは、IETF(The Internet Engineering Task Force=インターネットの国際標準化団体)における品質測定に関わる議論の状況を報告し、LMAP(Large-Scale Measurement of Broadband Performance)ワーキング・グループで大規模インターネット品質測定に関わる議論(主体、目的、測定項目・測定方法、制御プロトコル・報告プロトコルの定義)がなされている事、IPPM(IP Performance Metrics)ワーキンググループで品質パラメータの定義を進めていること、国際標準との整合性を考慮する必要を伝えている。

第2回議事要旨が公開 ※2013年12月26日 追記〜調査会社などの収益モデルは? 機種ごとの速度の差は?〜

 第2回議事要旨が公開された事を確認したため、以下、質疑応答などについて要点をピックアップして追記する。 

第2回会合出席者(敬称略・法人格略)

  • 座長: 相田仁(東京大学)
  • 構成員: 北俊一(野村総合研究所)、木村たま代(主婦連合会)、新美育文(明治大学)、平野 晋(中央大学)、 福田健介(国立情報学研究所)、横田英明(MM総研)
  • オブザーバー: 山�啗拓(NTTドコモ)、吉田智將(KDDI)、水口徹也(ソフトバンクモバ

イル)、大橋功(イー・アクセス)、菅田泰二(電気通信事業者協会)、今井恵一

(テレコムサービス協会)、立石聡明(代理:木村孝 日本インターネットプロバイダー協会)、山本学(日本ケーブルテレビ連盟)、明神浩(電気通信サービス向上推進協議会)

  • 説明者: 阿波村聡(野村総合研究所)、渡辺翔太(野村総合研究所)、篠崎忠征(M M総研)、藤澤一郎(日経BPコンサルティング)、小板謙次(イード)、永見健 一(インテック)
  • 総務省: 吉良総合通信基盤局長、安藤電気通信事業部長、菊池総合通信基盤局総務課長、吉田事業政策課長、竹村料金サービス課長、河内データ通信課長、玉田消費者行政課長、柴崎 事業政策課企画官、山口データ通信課企画官、松井電気通信利用者情報政策室長、佐藤データ通信課課長補佐、八代消費者行政課課長補佐

調査会社等からのヒアリングに関する質疑応答

  • IETFの取り組みは、アメリカ以外の国は積極的な取り組みは見られない。計測の標準化は、LMAPでは定義されず、IPPM の中で議論される。(インテック)
  • アメリカの計測結果オープンデータ化のサイクルは不明。2014年早期にはある程度のデータが公開されると考えられる。(野村総研)
  • 日経BPコンサルティングの調査は、40名・40台で調査を行っており、調査単体では赤字ながら、調査結果をNo.1企業の広告利用で収入を得ることもある。実効速度計測を行っているという自社のアピールに利用している。(日経BPコンサルティング)
  • RBB TODAY SPEEDTESTのコスト回収は、3〜5万件/日の計測データをビッグデータとして販売することで収益としている。収集データは、位置情報、端末情報、キャリア情報、通信速度(上り回線、下り回線)、電波状況など。計測データをカットするアルゴリズムは、スタート時は速度がでにくいためカットし、過度に速度が出てしまった場合にカットしている。(イード)

インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する論点

  • アメリカFCCの広告表示方法については、追加調査する。(野村総研)
  • 消費者が何を知りたいかという観点から、代表機種での実効速度の表示は、異なる機種を利用するユーザにミスリーディングする広告表示となるおそれがある。(構成員)
  • 広告以外、計測データをそのまま公開するなど、検討する必要がある。(相田座長)

機種の違いにより通信速度に差がでるのか、そのような比較をしているのか?(構成員)

  • 具体的に調べたことがないが端末によって差があるのではないか。(日経BPコンサルティング)
  • CPU処理能力やメモリー容量などで違って来る可能性はあるが端末間で大きな差は無いと思う。(イード)
  • 新旧機種での対応周波数の違いなどに留意する必要がある。(相田座長)
  • 複数のアプリを起動した状態での計測が与える影響は?購入したばかりの状態で計測するか?(構成員)
  • 複数アプリ起動の影響はわからない。キャッシュクリアなどは行っていない。(イード)
  • 実地調査で使用するアプリを一般ユーザにも公開し、計測データとユーザ保有端末での差を確認してもらう事に価値がある。実地調査員とユーザ計測データに差がなければ調査員派遣が不要になるかもしれない。(相田座長)

 以上、第2回会合のまとめとなるが、各社プレゼン資料は、標準化に向けた考察など、興味深い内容が含まれている。 

 議事要旨については、質疑のやり取りを確認すると、機種による速度差について、調査事業者からの回答が、機種間の違いの認識や、複数アプリ起動状態による影響に対する意識が不十分と考えられ、ミスリーディングを誘導する懸念があった。

 また、詳細に興味のある方は、下記リンク先から参照して頂きたい。

【特集】総務省「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」

(1)背景と検討事項・海外動向・通信事業者ヒアリング

http://app-coming.jp/ja/articles/detail/626

(2)調査会社ヒアリング・諸外国事例追加調査報告

http://app-coming.jp/ja/articles/detail/627

(3)訪問取材レポート

http://app-coming.jp/ja/articles/detail/630

(4)取材後記〜優良誤認がなく利便を損なわない実効速度表示のありかた〜

http://app-coming.jp/ja/articles/detail/631

関連URL

  • 総務省|インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会|インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/speed_measurement/

  • 開催に関する報道資料

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000066.html

  • 第1回(平成25年11月 1日開催)

開催案内 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/speed_measurement/02kiban04_03000115.html

配布資料 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/speed_measurement/02kiban04_03000117.html

資料1−1 「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」開催要綱(案)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258076.pdf

資料1−2 研究会の公開について(案)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258077.pdf

資料1−3 検討の背景と課題等について

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258078.pdf

資料1−4 諸外国におけるモバイルインターネット回線速度計測の状況

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258079.pdf

資料1−5 株式会社NTTドコモプレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258080.pdf

資料1−6 KDDI株式会社プレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258081.pdf

資料1−7 ソフトバンクモバイル株式会社プレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258082.pdf

資料1−8 イー・アクセス株式会社プレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258083.pdf

参考資料1−1 オブザーバ名簿

http://www.soumu.go.jp/main_content/000258084.pdf

議事要旨

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261977.pdf

  • 第2回(平成25年11月25日開催)

開催案内 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/speed_measurement/02kiban04_03000118.html

配布資料 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/speed_measurement/02kiban04_03000123.html

資料2−1諸外国におけるモバイルインターネット回線速度計測の状況

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261961.pdf

資料2−2 株式会社MM総研プレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261962.pdf

資料2−3 株式会社日経BPコンサルティングプレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261963.pdf

資料2−4 株式会社イードプレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261964.pdf

資料2−5 株式会社インテックプレゼンテーション資料

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261965.pdf

資料2−6 インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する論点(案)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261966.pdf

参考資料2−1 インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会 第1回会合議事要旨(案)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000261967.pdf

議事要旨

http://www.soumu.go.jp/main_content/000266877.pdf

  • 「スマートフォン安心安全強化戦略」の公表(平成25年9月4日)

提言「スマートフォン安心安全強化戦略」

表紙・目次・はじめに(別紙1-1)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000247653.pdf

第I部 スマートフォンにおける利用者情報に関する課題への対応(別紙1-2)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000247654.pdf

第II部 スマートフォンサービス等の適正な提供に係る課題への対応(別紙1-3)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000247673.pdf

第III部 スマートフォンのアプリ利用における新たな課題への対応(別紙1-4)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000247655.pdf

おわりに・参考資料(別紙1-5)

http://www.soumu.go.jp/ain_content/000247661.pdf

提言の概要(別紙2)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000247676.pdf

提言(案)に対して提出された御意見及びそれらに対する考え方(別紙3)

http://www.soumu.go.jp/main_content/000247656.pdf

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