スマートフォンで使う機会の多いカメラの性能も気になるところだ。メインカメラの有効画素数はARROWS NXが約1310万、AQUOS PHONE ZETAが約1630万、Xperia Z1 fが約2070万だが、もちろん「高画素数=高画質」ではない。センサー、レンズ、画像処理エンジンを含めたチューニングで画質が決まってくる。
3機種のカメラの特徴を、簡単におさいしておこう。ARROWS NXは高速なオートフォーカス、フォトライトの光量をアップした「インテリジェントフラッシュ」、最大100枚の高速連写を特徴としている。AQUOS PHONE ZETAはF値が1.9と明るく、複数の写真を合成して処理する「NightCatch」を新たに備え、暗い場所でも明るく撮れることをウリにしている。デジタルズームの画質劣化を抑える「美ズーム」も、SHならではの機能だ。Xperia Z1 fは、なんといってもソニーのデジタルカメラでおなじみの「Gレンズ」を搭載したのが強み。F2.0のレンズと(後述する)画像処理エンジンとあわせ、明るくノイズを抑えた一枚を撮れる。
センサーはARROWS NXとXperia Z1 fがソニーの積層型CMOSセンサー「Exmor RS for mobile」を搭載。AQUOS PHONE ZETAのセンサー名は公表されていない。画像処理エンジンはARROWS NXが「GRANVU」、AQUOS PHONE ZETAが「FEEL photographer」、Xperia Z1 fが「BIONZ for mobile」と、いずれもメーカー独自のものを採用しており、低ノイズで仕上がるよう処理している。
では、実際の画質はどうか? さまざまなシーンで撮り比べをしてみた。撮影モードはARROWS NXが「静止画」、AQUOS PHONE ZETAが「おまかせオート」、Xperia Z1 fが「プレミアムおかませオート」を選択。以下の作例はすべて、ARROWS NXが4128×2336ピクセル、AQUOS PHONE ZETAとXperia Z1 fが3840×2160ピクセルで撮影した。
3機種とも(特にシャープとソニーモバイル)、新機種のカメラでは暗い場所で明るく撮れることをアピールしているので、まずは暗所で撮った写真を比べてみたい。
まずは夜間の歩道橋から撮影した道路の写真から。ARROWS NXはISO感度が401と低く(その分ノイズは抑えられているが)、全体的に暗い一枚になってしまった。AQUOS PHONE ZETAは明るく撮れてはいるが、街灯の周囲でフレアが発生しており、少しモヤッとした印象。ISO感度は1000にまで上がっており、拡大するとノイズが目立つ。NightCatchをオフにした状態でも撮影してみたが、画質に変化は見られなかった。Xperia Z1 fは3機種の中では最もノイズが抑えられており(ISO感度は800)、明るく写せている。
薄い光が差し込む程度の室内で、ぬいぐるみを撮り比べたが、こちらは三者三様の結果となった。ARROWS NXはほとんど写すことができず、真っ黒な写真になってしまった。AQUOS PHONE ZETAは写せてはいるが、ノイズが多く、全体的に赤みが強い。ピントはしっかり合っており、くっきり写せている。Xperia Z1 fはピントが合っていないが、ノイズは抑えられている。同じ環境でフォトライトを使って撮影したところ、3機種とも鮮明に写せた。AQUOS PHONE ZETAは色味が安定せず、ナチュラルなときもあれば青みがかかった色になるときがあった。
料理の写真は、ARROWS NXが最も自然な発色で、おいしそうに見える。AQUOS PHONE ZETAは赤みが、Xperia Z1 fは青みが強く感じる。
風景の写真は、ARROWS NXが特に鮮明に撮れていると感じる。Xperia Z1 fは空の色がやや派手な感もあるが、鮮やかに撮れている。
ズーム機能も比べてみた。特に注目したいのが、超解像技術を採用したAQUOS PHONE ZETAの「美ズーム」だ。これは8倍以上ズームしたときに、1回のシャッターで6枚分を連写することで、画質劣化を抑えているという。16Mサイズでも最大16倍のズームが可能だ。Xperia Z1 fも超解像技術でデジタルズームの画質劣化を抑えているが、これが有効になるのは3倍ズームまで。ズーム自体は8倍までしかできない。AQUOS PHONE ZETAの方が、遠くのものまでキレイにズームできるというわけだ。
ARROWS NXの場合、サイズの大きな4128×3096ピクセル(13MP)や4128×2336ピクセル(9MP)では、3倍までしかズームできない。VGAサイズで12.9倍のズームが可能になるが、スマホでVGAサイズの写真を撮る人(しかもズーム付きで)は、それほどいないように思える。
ARROWS NXは3倍、AQUOS PHONE ZETAは8.57倍、Xperia Z1 fは8倍ズームで撮影した写真を比べ、同じ部分を拡大してみた。パッと見ではAQUOS PHONE ZETAとXperia Z1 fは同じくらいきれいに撮れているが、拡大して見比べるとAQUOS PHONE ZETAの方が鮮明だ。
カメラの操作性についても見ていこう。まずは起動方法から。ドコモのスマートフォンは、ホーム画面を「docomo LIVE UX」に設定していると、ロック解除画面の左側にカメラアイコンが表れ、これをタップするとカメラが起動する。
一方、メーカー独自のホーム画面にした場合、ロック画面のショートカットも変更される。ARROWS NXのNX!ホームは、初期状態ではカメラがショートカットに設定されていないが、「設定」→「セキュリティ」の「画面ロック設定」で、「左にスライドでカメラ起動」にチェックを入れると、ロック解除画面の右端にカメラアイコンが現れ、これを左にスライドするとカメラが起動する。AQUOS PHONE ZETAの3ラインホームでは、ウェルカムシートのカギアイコンをタップすると、3つのショートカットが表れ、ここからカメラを起動できる。
Xperia Z1 fのXperiaホームでは、ロック解除画面の右側にあるカメラアイコンを左にスライドするとカメラが起動する。Xperia Z1 fは3機種の中では唯一シャッターキーを備えており、これを長押ししてもカメラが起動する。さらに、「クイック起動」をオンにしておけば、カメラキーの長押しでカメラ起動+撮影を瞬時に行える(ロック画面のショートカットからも可能)。起動直後に撮影してくれるので、シャッターチャンスを逃したくない、ここぞという場面で役に立つ。
起動してから撮影が完了するまでの速度も測ってみた。カメラを起動すると同時にiPhoneのストップウォッチの計測を開始して、iPhoneの画面を撮影。写真に写っているストップウォッチの数字が「起動+撮影の速度」というわけだ。ARROWS NXはNX!ホーム、AQUOS PHONE ZETAはウェルカムシートのショートカットからカメラを起動して撮影。Xperia Z1 fはクイック起動をオンにして、カメラキーの長押しで起動+撮影をした(クイック起動の設定は「起動&静止画撮影」にしている)。5回測った平均値は、ARROWS NXが3.884秒、AQUOS PHONE ZETAが3.296秒、Xperia Z1 fが1.986秒で、やはり起動直後に撮影できるXperia Z1 fが強かった。
続いて、撮影時の操作性についてもチェックしていこう。
ARROWS NXの撮影画面は非常にシンプルで、撮影画面にはMENU、フォトライトのアイコンとシャッターボタンしか表示されない。MENUから撮影モードやカメラの設定ができるが、静止画と動画撮影をワンタッチで切り替えられないのは少々不便。エフェクトを加えた撮影機能も用意されていない。撮影画面で左にフリックすると「アルバム」アプリに切り替わり、直近で撮影した写真を順次閲覧できる。
なお、ARROWS NXはシャッターキーを備えていないが、ボリュームキー(大小どちらでもよい)からシャッターを切れる。半押しでフォーカスロックはできないが、ARROWS NXはカメラを起動すると、自動で中央にピントを合わせようとするので問題ないだろう。後述するが、タッチパネルからフォーカスロックはできる。
AQUOS PHONE ZETAは撮影画面に各種設定アイコンが表示され、サイズ変更、シーン設定、HDRのオン/オフ、手ブレ補正、アウト/インカメラの切替などをワンタッチで行える。アイコンがたくさんあると煩雑な印象を受けるが、設定アイコンは非表示にもできる。シーン設定には「多焦点撮影」「魚眼レンズ」「ミニチュア効果」「手鏡」など、ユニークなモードも用意されている。AQUOS PHONE ZETAは、ハードキーは電源キーしかなく、ハードキーからはシャッターを切れない。
Xperia Z1 fはプレミアムおかませオートに設定しておくと、現在どのモードで撮影しているのかが、画面下にリアルタイムで表示されて分かりやすい。フォトライト、アウト/インカメラの切替、静止画と動画撮影の切替は、アイコンからワンタッチで行える。撮影モードは画面下部のアイコンから変更できる。ISO感度やホワイトバランスなどを手動で変更する場合は、マニュアルを選べばよい。「ピクチャーエフェクト」では、9種類のエフェクトのプレビューを、サムネイルから確認できる。被写体を認識して恐竜や海などの効果を加えられる「ARエフェクト」も楽しい。
3機種とも、パノラマ撮影、HDR撮影、動画撮影中の静止画キャプチャには対応している。
カメラの性能と直接は関係ないが、シャッター音が一番大きいのはXperia Z1 fだった。特にフォーカスロックをする際の「ピピッ」という音が大きく、静かな店内で料理の写真を撮ったりするときは、なかなか気まずかった。
連写は3機種とも可能で、シャッターボタンを押しっぱなしにすると連写される。ただ、サイズはARROWS NXが1080×1920ピクセル、AQUOS PHONE ZETAが480×640ピクセルに固定されてしまう。Xperia Z1 fは連写をしても3840×2160ピクセルという比較的大きなサイズで保存できる。速度優先か画質優先かの設定も可能だ。2秒間で61枚を撮影する「タイムシフト連写」は1080×1920ピクセルに固定される。
連写後の挙動はどうか。ARROWS NXは強制的にすべての写真が保存されてしまうので、たくさん撮るとギャラリーに同じような写真があふれてしまう。AQUOS PHONE ZETAは撮影直後に、連写した写真一覧から保存するものを選べるが、「全保存」を選ぶと、すべての写真がアルバムアプリのサムネイルに表示されてしまう。Xperia Z1 fでは連写をすると、アルバムアプリに表示されるサムネイルは一つのみで、これをタップするとすべての連写画像が表示されるので、サムネイルが煩雑にならない。タイムシフト連写で撮影した写真は、「表紙」に設定した写真1枚がサムネイルに表示される。
タッチパネルを生かした操作性はどうか。ARROWS NXとAQUOS PHONE ZETAは、狙ったところをタッチしたフォーカスロックをしたり、タッチパネルに触れると同時にシャッターを切ったりできる。Xperia Z1 fもタッチ撮影は可能だが、タッチ撮影をオンにしてから画面にタッチして指を離すとシャッターが切れてしまうので、フォーカスロックをするには、カメラキーを半押しする必要がある。画面をタップせずにカメラキーを半押しすると、画面中央にピントが合うが、タッチ撮影をオフにした状態で任意のポイントをタッチしてからカメラキーを半押しすると、その場所にピントがロックされる。タッチ撮影を重視するのなら、Xperia Z1 fは少々使いにくいと感じた。
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