「au WALLET」の新しさ/ソフトバンク決算会見で見えたもの/アプリや新規事業に賭けるDeNA石野純也のMobile Eye(2月3日〜14日)(2/3 ページ)

» 2014年02月14日 19時40分 公開
[石野純也,ITmedia]

大幅増収を記録したソフトバンク、端末シェアや料金プランにも言及

 ソフトバンクは2月12日、2013年度第3四半期の決算会見を開催した。売上高は4兆5617億円300万円、営業利益は9242億円となり、過去最高を記録。増収には米キャリアのSprintが大きく貢献している。また、「Sprint分の増加がなかったとしても、ソフトバンクの売上、EBITDA、営業利益は伸びていた」(代表取締役兼CEO 孫正義氏)といい、国内事業の業績も順調に推移していることが語られた。

photophoto ソフトバンクの代表取締役兼CEO 孫正義氏(写真=左)。決算は売上、営業利益、純利益ともに大幅増となった(写真=右)

 決算会見では、日本での競争環境の変化を改めて振り返った孫氏。iPhoneがドコモから発売されたことを受け、「ソフトバンク最大の危機か?」と問いかけつつ、実際には「約40%のお客様が、我々からiPhoneを買った」とシェアではトップであることを語った。正確には、ソフトバンクのiPhone 5s/5cのシェアは39%で、ドコモの30%やKDDIの31%より高い数値となっている。

photophoto ドコモからiPhoneが発売されたことを受け、「ソフトバンク最大の危機」がささやかれたという(写真=左)。実際の販売シェアは、ソフトバンクが39%でトップだ(写真=右)

 ただし、1年前よりもiPhoneでの優位性が弱くなっているのも事実だ。グラフの横軸が明確に示されていないため、厳密な数値は不明だが、2012年度の第3四半期で同社が提示したデータによると、iPhone 5はソフトバンクが2に対し、KDDIが1といった販売台数になっている。これを100%のシェアに直すと、ソフトバンクが約66.6%、KDDIが33.3%だ。シェア39%という数値からは、ドコモのiPhone参入によってソフトバンクが少なからず影響を受けていることも読み取れる。

photo 2013年1月に開催された決算説明会では、ソフトバンクとauの販売シェアが示されていた。このデータと比べてみると、ドコモ参入の影響を受けていることも分かる

 これに対して孫氏は、ソフトバンクがAndroidでもシェア1位を獲得したと語り、両プラットフォームともに好調な様子をアピールした。あくまで、ソフトバンクグループとしてのデータだが、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィルコムを合算すると、販売シェアは47%。これは、ドコモの35%とKDDIの18%を大きく超える数値だ。

photo グループとしてのソフトバンクは、Androidのシェアも高いという。ただし、これはあくまで新規契約のデータで、イー・アクセスやウィルコムも含まれている

 ソフトバンクモバイルはAndroidの冬モデルが事実上3機種と少なく、販売ランキングを見ても存在感はそこまで高くないが、イー・アクセスの「Nexus 5」は好調。関係者によると、もともと販売実績はよかったが、年末の大幅なキャッシュバック積み増しが功を奏し、一時は品切れ状態となったようだ。こうした数値を合算した結果が、47%というシェアにつながっていると考えられる。

 ただし、機種変更分は含まれておらず、このデータに限って新規のシェアになっている点も注意したい。孫氏が「Androidで泣かず飛ばずだと思っておられる人が世の中の大半だと思うので、あえてエポックメイキングなこの内容に触れさせていただいた」と言うように、ソフトバンクとして本腰を入れるのは、もう少し先になりそうだ。

photo 端末卸事業を手がけるBrightstarの買収が1月30日に完了した。スケールメリットが出て端末のバリエーションが広がるのは、これからだ

 決算会見では、「VoLTE時代を見据えた」と銘打った新料金プランについても孫氏が改めて解説した。プランの内容は、前回の連載でも触れたとおり、音声通話とパケットプランがパッケージになったもので、ここに980円(税別)の基本使用料がかかる。パケット通信が2GバイトまでのSパックが5980円(税別)、7GバイトまでのMパックが6980円(税別)、15GバイトまでのLパックが9980円(税別)となっている。通話はSパックが3分以内、月50回まで無料、MパックとLパックが5分以内、月1000回まで無料だ。

photo 新定額サービスを解説する孫氏。パケット通信料に応じて、S、M、Lの3つに分かれる。ここに基本使用料980円(税別)がかかる点には注意したい

 ただし、このプランを選択していると、無料分を超えたとき、30秒30円(税別)と高額な通話料が発生する。前回の連載でも触れたが、この料金プランは、通話が5分に収まらない場合が増えると通話料が非常に高くなる仕組みになっている。また、パケット通信量が上限を超えた場合は青天井で課金されるなど、分かりづらい点も多い。

 こうした点を指摘された孫氏は、「分かりづらいとは、どういう意味でおっしゃっているのか分からない。話し放題、1000回までの明瞭会計と申し上げている非常にシンプルなもの。1回の通話で5分以上しゃべるケースは、(10分以内、月500回までの通話が無料になる)『だれとでも定額』をやっているが非常に少ない。5分超えそうだと思ったときは、1回かけてすぐ切ってもいい」と反論している。

 ただ、これは本当に分かりやすく、安価な料金体系なのだろうか。少なくとも、前回の連載で分析したように、現在の料金プランよりも支払い額が上がる可能性は十分ある。孫氏が言うように5分でいったん通話を切ればいいが、そこまで正確に時間を測りながら通話するユーザーは少ないだろう。孫氏は「しゃべってもいないのに、朝まで枕元でつなぎ、そばにいるような感じになれるのがうれしいという使い方をされると困る」とも述べていたが、それであれば、5分という短い時間に設定する必要性はまったくない。5分以上の通話が少ないというが、だれとでも定額の「10分」をあえて「5分」に半減させた理由も語られなかった。

 かつて孫氏は、「ゴールドプラン」を発表した際にプランの複雑さに対する批判を浴び、「自宅でもこれからはパンにすると言っている。もう米(注釈の米印が多いプランだったため)はこりごり」と語っていた。ホワイトプランがシンプルな料金体系になっていたのも、その反省を生かしたためだ。米印が多い新プランを見ると、Sprint買収以降、米国に拠点を移し、日本のお米が恋しくなってしまったと思えてくる。日本のケータイ料金は複雑すぎると宣言して業界に参入したソフトバンクだが、大幅な増収増益を達成しているだけに、よりシンプルでユーザーメリットが分かりやすいプランで業界をリードすることを期待したい。

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