固定通信やモバイル通信の基幹ネットワークに用いられている光ファイバーの、長距離伝送技術もKDDI研究所が研究を進めている。スマートフォンやLTEの普及、ビッグデータやクラウド活用が進んだことで、光ファイバーを通るデータ容量は、年率で1.4倍上昇しており、2020年には現在の約15倍にまで膨れ上がるという。
こうしたデータ量の増加に対応すべく、1本の光ファイバーで複数の光信号を通せる「マルチコア光ファイバー」という新しい技術を研究している。KDDI研究所 光トランスポートネットワークグループ 研究員の竹島公貴氏は「増やしたコア数分だけ伝送容量が増加する」と話す。
研究を重ねた結果、KDDI研究所と古河電工が、2013年9月に総容量140.7Tbps、7326キロメートルの伝送を実証した。これは、商用ネットワークでブルーレイディスク8枚分のデータを1秒で送れると仮定すると、今回の研究では351枚分のデータを1秒で送れることになるという。「音声電話の通信速度(64Kbps)で換算すると20億回線分なので、20億人が同時に電話をしても大丈夫なほどの通信速度」(竹島氏)
最後に体験したのが、テレプレゼンスによるバーチャル空間共有。テレプレゼンスは、遠隔地のユーザーとその場で対面しているかのような感覚でコミュニケーションができる技術。テレビ電話に近いが、テレプレゼンスでは、人物だけを切り取って表示することで、別々の場所にいる2人が、あたかも同じ場所にいるような感覚を得られる。CG空間との合成も可能で、例えば世界の観光名所を歩く、アイドルグループのセンターで歌うといったことを、疑似体験できる。
テレプレゼンス自体はすでにビジネス用途で商用化されているが、「特別な部屋やテレビを用意したり、コストがかかるのが課題」とKDDI研究所 超臨場感通信グループ 研究主査の三功浩嗣氏は話す。「我々の技術で、できるだけ安価にどんな人でも使えるようにしたい。また、ビジネスだけでなくリビングなど家庭でも使えるようにしたい」
通信機器を使って自宅などで働く「テレワーク」への応用も視野に入れている。「テレビ電話の普及が難しい理由として、部屋を見られるのが嫌だという声がある。テレプレゼンスなら人を切り出して抽出するので、部屋が散らかっていても大丈夫(笑)」と三功氏はメリットを説明する。
デモを披露した部屋では、大きなスクリーンにビデオカメラを設置するなど、大がかりな装置を用いていたが、「カメラの画質や人の抽出がポイント(課題)になるが、将来的にはスマートフォン1台を置いておけばできるようにしたい」と三功氏。「音と映像以外では“振動”を加えることで、臨場感が出てくるので、そういったことも加えていきたい」
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