KDDIが災害対策訓練を実施――光ファイバーの修復作業なども公開

» 2014年03月11日 19時43分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 KDDIは3月8日、首都圏直下型地震など大規模災害を想定した復旧模擬訓練を実施した。KDDIの車載型基地局や可搬型基地局、電源車などが参加し、被災した基地局の状況を確認するため復旧要員がヘリコプターで駆けつける様子や、高速道路に埋設されている基幹伝送路(光ファイバー)の復旧訓練も公開された。

photo 訓練に参加した災害対策のための車両
photophoto いち早く復旧ポイントの現状を確認するため、KDDIの先発隊がヘリコプターで駆けつけた

 訓練は、災害によって広範囲で携帯電話による通信ができなくなり、KDDIが政府や東京都など自治体から通信確保要請を受けた――という状況のもとで進行。復旧ポイントと設定された3箇所(東京臨海広域防災公園、練馬区役所、品川区役所)に駆けつけたKDDIのスタッフはまず、衛星通信が設置できるかを判断していた。これは、車載型基地局や可搬型基地局などの臨時基地局は、応急的な伝送路として衛星通信を使っており、基地局を設置する場所は衛星と通信できるよう、空が見渡せる必要があるためだ。

photophoto 通信衛星が利用できるかとチームで確認後、車載型基地局の派遣を要請
photophoto ほかの復旧ポイントにも次々と車載型基地局が出動
photophoto 訓練の参加者は全国のテクニカルセンター(TC)から集まった職員。車両や機材は東京TCのものが使われている。これには、「災害地に派遣され、普段使い慣れていない機材でも迅速に作業できるように」という狙いがあるという

 また機動力のある車載型基地局を有効に使うため、通信の本格復旧に時間がかかると判断して可搬型基地局へバトンタッチする訓練や、復旧が長時間に渡るために車載型基地局へ電源車から電源を供給する訓練も行われた。

photophoto 車載型基地局の利用が長期間になりそうな場合は、発電機を積んだ電源車が電力を供給する(写真=左)。車載型基地局をほかのエリアに派遣するため、可搬型基地局へバトンタッチする連携プレーの訓練も行われた

 これらのKDDIが所有する車載型基地局や可搬型基地局はすべて4G LTEに対応しているが、伝送路に衛星通信を使っている場合は通信速度が遅くなるため、3Gのみでエリアを展開する。臨時局でLTEが利用できるのは光ファイバーなど高速な伝送路と接続できた場合のみだという。

photophoto 臨時基地局はLTEに対応しているが、実際に高速通信ができるのは、光ファイバーなどの高速な伝送路が利用できる場合のみ(写真=左)。KDDIが取り扱っている衛星携帯電話のイリジウムとインマルサットの端末。携帯電話網が停波した場合は、KDDI自信も衛星電話を使って連絡を取り合う。また自衛隊などの救助部隊や官公庁・自治体にも貸し出される(写真=右)

 KDDIは全国の高速道路網に光ファイバーによる基幹伝送路を持っているが、東日本大震災では高速道路の寸断などで光ファイバーが切断・破損して通信サービスに影響が出た。今回の訓練では、中央自動車道に埋設されている光ファイバーが切断されたことを想定した復旧訓練も行われた。この光ファイバーは容量10Gbpsの通信が可能で、電話回線であれば同時に13万回線の通話を収容できるという。

photophoto 地震によって高速道路に埋設された光ファイバーが切断されたため、修復作業が始まった
photophoto 交換用ケーブルの被覆をむき、接続の準備を行う。光ケーブルの取り扱いには繊細な手作業が求められるという
photophoto 光ケーブル網には数キロごとにクロージャーと呼ばれる分岐ポイントがあり、ケーブルが切断した場合はクロージャー間のケーブルをつなぎ直して対応する。クロージャーへの接続も糸を紡ぐような細かい作業の連続だった
photo 高速道路上の光ファイバーを管理するために使われている作業車。NEXCOの車両に見えるが、KDDIが所有している

 訓練ではこのほかに、基地局のカバーエリアを広げる移動式車載リピーターや静止衛星を使った映像伝送が行える車載型地球局ビックシェル号、船舶基地局搭載用の衛星アンテナなど展示も行われた。

photo 移動式車載リピーター
photophoto 車載型地球局ビックシェル号(写真=左)と船舶基地局搭載用の衛星アンテナ(写真=右)
photophoto レーザー光線で高速な無線伝送路を構築する「キャノビーム」を使った基地局間エントランスも展示されていた

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年