ドコモ新料金プランとソフトバンク「スマ放題」の狙いと注意点/KDDIはどう出る?石野純也のMobile Eye(3月31日〜4月11日)(2/2 ページ)

» 2014年04月11日 22時30分 公開
[石野純也,ITmedia]
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ソフトバンクは通話無料の時間を延長、超過時の通話料も値下げに

 ドコモに限らず、通話定額は業界のトレンドになりつつある。「VoLTE」と呼ばれる、LTEのデータチャネルに音声通話を流す技術が日本で導入されるのも、もう間もなくだ。VoLTEで音声定額が実現するという見方は、必ずしも正確な表現とはいえないが、料金プラン改定の契機になっていることは確かだ。ソフトバンクモバイルが1月に発表した新料金プランも、こうした事情を踏まえ「VoLTE時代を見据えた」とうたわれていた。

 一方で、この新料金プランは少々分かりにくく、場合によっては料金が高くなってしまうおそれもあったのは、以前この連載でも指摘したとおり。主力プランで通話が無料になる時間が5分と短く、それを超えると30秒あたり30円と高額な通話料が発生することになっていた。また、データ通信量が超過した際にも、標準ではリミットがない点にも批判が集まった。

改定前の料金プラン
Sパック Mパック Lパック
国内音声通話 3分以内/月50回まで(超過時は30秒30円) 5分以内/月1000回まで(超過時は30秒30円)
パケット通信 2Gバイトまで 7Gバイトまで 15Gバイトまで

 こうした声を受け、ソフトバンクモバイルは4月1日に料金プランを改定。名称も「スマ放題」に決定した。実際にこの料金プランを契約できるのは4月21日から。つまり、開始前に料金の改定を発表したことになる。1回の通話が5分まで無料で、超過時には30秒ごとに30円かかる料金プランは、幻のまま終わってしまったというわけだ。

 具体的には、以下の点に改善が加わった。まず、無料で通話できる時間が「Sパック」で5分、「Mパック」と「Lパック」で10分になった。もともとは3分、5分で、超過のおそれがあると指摘されていた。超過時料金が30秒30円と高かったところにも手が加わり、30秒20円と従来のホワイトプランと同等になっている。ソフトバンク同士の通話無料(1時から21時まで)も「スマ放題」に衣替えするにあたって、復活している。

「スマ放題」として生まれ変わったパックプラン
Sパック Mパック Lパック
国内音声通話 5分以内/月50回まで(超過時は30秒20円) 10分以内/月1000回まで(超過時は30秒20円)
パケット通信 2Gバイトまで 7Gバイトまで 15Gバイトまで

photo 決算会見では、新プランに自信をのぞかせていた孫社長だが……

 2月に開催された決算会見では、代表取締役兼CEOの孫正義氏が「高い、複雑だとは思わない。5分が短すぎるなら、1回切ってかけなおせばいい」と述べていたものの、やはりその後、既存プランと比べても優位性が打ち出しづらいことに気づいたようだ。ユーザーの声に耳を傾け、素早く改善を打ち出した点は評価したい。一方で、データ通信に関しては、データ使用量が超過した際に料金が青天井でかかる仕組みはそのまま。128Kbpsに制限するには、オプションへの加入が必要となる。データの量は直接目に見えないだけに、気づいたら超過しているおそれもあり、制限なしでは少々使いづらい。事実上、このプランは300円の支払いが前提であると考えておいた方がよさそうだ。

 VoLTE時代の先進性をうたったソフトバンクの料金プランだが、ドコモの発表を見た後だと、正直なところインパクトが弱い。トータルでの支払額がそれほど変わらないとしても、「通話完全定額」や「家族でのデータシェア」といった新しさではドコモに軍配が上がる。こうした打ち出しの強さは、本来ソフトバンクが得意とするところだったのだが……。ただ、発表後すぐに改定された「スマ放題」の経緯を考えると、実際にこの料金がスタートする21日にまでに何らかの再改定がないとも限らない。引き続きソフトバンクの動きにも注目はしておきたい。

KDDIの新料金プランももう間もなくか?

 ソフトバンクに続き、ドコモも新料金プランを発表したなか、KDDIはまだ次の手を明かしていない。ただし、音声定額などのプランは、着々と準備しているようだ。KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏は、筆者のインタビューに答える形で「うちの中ではまだファイナライズされていない」と前置きしつつ、次のように述べている。

 「VoLTEになると、音声がデータと同じパスに流れてくる。そうなると、料金的にはバンドルプランになってくる。定額が導入されるというのは、各社一緒だと思う」

photo インタビューに答える、KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏

 この発言からは、KDDIもドコモやソフトバンクと同様、音声定額を準備していることがうかがえる。また、田中氏は「音声とデータが一緒になり、複数プラン化していくのではないか」との見通しを示している。あくまで業界全体のトレンドについて述べているだけだが、KDDIのプランとしても検討されていることは間違いない。

 「音声とデータが一緒になった」というコメントから考えられるのは、やはりパックプランだ。ドコモは基本プランの「カケホーダイ」に、ソフトバンクはパックに音声定額が含まれているが、違いは音声定額をどちらに含めるかということだけで、どちらのプランも本質は似ている。ただし、2つのプランとも、基本プランとデータパックが分離しており、総額が計算するまで分かりにくいのは難点だ。3社の中では発表が最後発となりそうなKDDIには、シンプルさも期待したいところだ。

 また、KDDIが先がけて導入した、スマートフォンとタブレットでデータ量を分け合う「データシェアプラン」についても、田中氏は「ある程度のサブシディ(定期契約)は必要」と述べている。現状ではデータ通信料がキャンペーンで1000円と割安だが、「毎月割」のような端末購入に伴う割引がなくなり、初期費用が高くなってしまう。田中氏のコメントからはこの点が普及の障壁になっていることがうかがえる。ドコモが家族間のデータシェアを打ち出しきたこともあり、KDDIも対策を迫られそうだ。

KDDIが先行的に導入したデータシェア
5月末まで 6月以降
データ量 スマホ:7Gバイト タブレット:7Gバイト 合計9Gバイトをシェア
料金 2850円(新規、機種変更の場合は1000円) 2850円(新規、機種変更の場合は1000円)

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