Windows Phone、Symbian、BlackBerry――日本から消えたスマホOSから何が見える?佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)

» 2014年05月07日 11時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]
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日本撤退後も経営危機が続くBlackBerry

 Windows Phone、Symbian OSとともに、かつて世界的に高い人気を誇ったスマートフォンといえば、カナダのBlackBerry(旧Research In Motion:RIM)の「BlackBerry」が挙げられるだろう。双方向にやり取りができるページャー(ポケットベル)から派生したBlackBerryは、プッシュ型のEメールが扱えることや、小さいながらも文字が打ちやすいQWERTYキーボードを備えていることから、ビジネスマンを中心として世界的に人気を高めていった。

 そのBlackBerryが日本に進出したのは2006年9月。NTTドコモが法人向けに、専用サーバーとのセットで「BlackBerry 8707h」を提供したのが始まり。当時は端末の日本語化も十分ではなく、主にBlackBerryを導入していた海外企業の日本法人に向けたニーズを満たすための販売だったといえる。

 個人向けにBlackBerryが販売されたのは、そのおよそ2年半後となる2009年2月。ドコモより「BlackBerry Bold」(BlackBerry Bold 9000)が発売され、注目を集めることとなった。ちなみにBlackBerry Boldは、当時ドコモが展開していた先進層向けブランド「docomo PRO series」にラインアップされており、ある意味で先進ユーザーに向けた目玉の1つであったともいえよう。

photo 日本ではドコモが継続的に投入していたBlackBerry端末。写真は「BlackBerry Curve 9300」

 その後ドコモは、「BlackBerry Bold 9700」「BlackBerry Curve 9300」「BlackBerry Bold 9780」「 BlackBerry Bold 9900」と最新モデルを順当に販売。しかし社名をRIMからBlackBerryに変更し、新設計のOS「BlackBerry 10」や、それを搭載したフルタッチタイプの「BlackBerry Z10」などを発表した直後の2013年2月、突如BlackBerryが日本から撤退するとの報道が流れた。同社は現在も国内でサポートを継続しているが、新機種や新サービスの導入が見込めない現状、事実上の撤退状態にあるといってよいだろう。

 さまざまな報道を見るに、日本からの撤退に至った理由はやはり、iPhoneとAndroidの台頭による販売シェアの大幅な低下にあるといえそうだ。BlackBerryは日本への本格参入が遅くシェアが小さかった上、日本語は英語圏と比べローカライズの手間もかかる。コスト的負担が大きい割に売り上げにつながりにくいことも、大きく影響したといえよう。

photo 日本では発売されなかった「BlackBerry Z10」。BlackBerryの特徴でもあったキーボードを廃し、全面タッチパネルを採用した意欲的なモデルだ

 そして日本と同様、海外でもBlackBerryはiPhoneとAndroidの台頭による端末販売の減少に苦しんでいる。2013年には投資会社への売却が伝えられ、後にそれを撤回するなど、混乱も起きているようだ。現在は新しいCEOであるジョン・チェン氏の元で再建が進められているが、採算が取れていないハード部門から撤退するのではないか? という観測もあり、苦しい状況は大きく変わっていないようだ。

日本上陸の可能性を持つ新プラットフォームも

 「iモード」に代表されるように、日本ではキャリア主導で構築されたプラットフォームが一世を風靡(ふうび)していた。だがそうしたデバイスは、iOSとAndroidの登場によって数年で大幅な規模縮小に追い込まれたことはご存じの通りだ。キャリアの存在感が大きく低下しただけでなく、ハード・ソフトを開発する多くの国内メーカーが事業縮小・撤退に追い込まれるなど、現在も非常に苦しい状態にある。

 だが、日本から撤退していったスマートフォンの動向を追いかけていくと、そうした状況が起きているのは日本だけではないことも、よく分かるのではないだろうか。Symbian OSやBlackBerryなど、非常に大きな勢力を誇ったプラットフォームまでもが、iOSとAndroidの急伸によってほんの数年のうちに危機的状況に陥り、身売りをも迫られている。それだけiPhoneとAndroidが世界的にもたらした変化の波は大きく、また非常に急速なものだったといえよう。

 しかしだからといって、今後もiOSとAndroidの2大勢力がスマートフォンのプラットフォームを支配し続けるのかというと、必ずしもそうとは限らない。その理由は、スマートフォンプラットフォームにチャレンジする勢力が、今なお登場していることだ。実際、Mozillaが開発している「Firefox OS」は、新興国を主体として搭載スマートフォンが順調に増加しているほか、KDDIが今年度中の採用を予定するなど、世界的に注目を集めている。

 今年初めにドコモが採用を見送った「TIZEN」も、ウェアラブルデバイスの「Gear 2」に採用されたほか、Samsung Electronicsが搭載スマートフォンを独自に提供するという噂もあり、まだチャレンジが続いているようだ。Nokiaの端末事業を吸収したMicrosoftのWindows Phoneも、そうした勢力の1つとして踏みとどまっている。

photo 新興国を主体とした低価格モデルで注目を集める「Firefox OS」。日本でもKDDIがFirefox OS搭載スマートフォンの投入を予定している

 またAndroidの基礎部分を採用しながらも、Googleのアプリやサービスを搭載せずに独自のアプリやインタフェースを搭載する“Androidフォーク”と呼ばれるOSも、新しい勢力の1つとなっている。Androidフォークの代表例としては、Amazonの「Kindle Fire」シリーズに採用されている「Fire OS」や、Nokiaが2月に発表した「Nokia X」シリーズなどが上げられる。これらは豊富な数のアプリなど、Androidのエコシステムを利用しながらも、Googleの利にならないプラットフォームを作り上げていることから、注目の度合いを高めている。

photo 新興国需要を開拓するべく投入された「Nokia X」。ベースはAndroidだがMicrosoft関連のアプリを備え、インタフェースもWindows Phone風に仕上げている

 日本から消えていくものもあれば、Firefox OSのように新しく日本に入ってくるものもある。こうした新陳代謝の激しさは、目まぐるしいスピードで変化するスマートフォンの競争を象徴しているといえよう。

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