NFCとiBeaconを組み合わせた事例の1つ目は、愛するペットとの思い出を想起させる仏壇だ。ペットが生前遊んでいた玩具に写真や動画を読み込ませたNFCタグを貼り付け、玩具で該当箇所にタッチするとAndroid端末上で写真や動画が再生される。NFCにタッチしてくれない日々が続くと、iBeaconを利用してスマートフォン宛にペットから催促のメッセージが届くほか、NFCでタッチしたあとは「遊んでくれてありがとう!」などの通知が来る。少し切ない気持ちにはなるかもしれないが、かわいがっていたペットと疑似的につながりを継続できることによろこびを感じる人もいるはずだ。
そして、読者諸氏の関心が最も高いであろうメイドさんとのコミュニケーションも、iBeaconの活用によりさらに活性化されるようだ。今回はフルカラー表示のテープLEDを内蔵するカチューシャに、イヤリングや制服が加わり、さらに華やかになったメイドさんも登場した。
2013年の講演では、メイドさんの服にNFCタグを設置し、ユーザーがそれをタッチすることでメイドさんとコミュニケーションが図れるというデモが行われた。このNFCログアプリ「たっちなう」を使うと、メイドさんのプロフィールデータが記載されたWebページにアクセスでき、タッチ数でポイントをためられるなどの利点がある。店舗側にとっても、集客効果の向上やユーザープロファイルの取得、来店履歴の管理などに利用できるメリットがある。
今回iBeaconを活用するにあたり、大坂さんは「タッチなうの楽しさは、人が貼ったNFCタグを見つけるよろこびにある」とした上で、ユーザーがメイド喫茶に入店すると自動でその日のタグの設置場所に関するヒントをプッシュ通知し、そのままメイドさんとコミュニケーションを取りながら店内のNFCタグを探すという試みを提案した。メイドさんが装着するNFCをタッチするとプレミアム情報を入手できる流れは前回と同様だ。
毎回同じ場所にあるNFCタグを繰り返しタッチすると飽きが生じてくる。iBeaconはそれを解消するだけでなく、会話のきっかけを作り、メイドさんとの親交をさらに深めるというのが画期的だ。日本Androidの会の代表である小暮敦彦さんによると、「この試みは橙幻郷でイベントがあるときなど、試験的に行っています」ということだった。ほかのメイド喫茶にこの仕組みを提供することは現時点では予定していないという。「NFCタグがある」という理由で堂々とメイドさんにタッチできる仕組みが今後普及していくことで、秋葉原の未来はますます明るくなる……かもしれない。
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