ソフトバンクの株主総会では、最近、めっきり減ってしまった孫氏の「やりましょう」を期待する声も多く出た。ある株主は、外国人向けの無料Wi-Fiスポットを充実させる提案をした。これについて、孫氏は「やりましょう」と一言コメント。NTTBPやKDDI、ソフトバンクが会員となる無線LANビジネス推進連絡会が、訪日外国人のための無線LAN環境を整備する旨を発表しているが、ここと連動した施策が期待できそうだ。
海外送金を簡単に実現できる「ソフトバンクマネー」の実現を望む要望も、孫氏に向けられた。こちらについては一転、やや慎重な回答を示した。
「金融と情報革命は非常に相性がいい。モノを送る以上に、お金は瞬間的に送れる。グループ会社にもいくつかの種を持っていて、いろいろと思い描いていることもある。具体的な内容については言及を避けるが、近い将来、何らかの形で実現させたい」
iPadや、6月に発表されたロボットの「Pepper」について、株主優待を求める声に関しては「検討しましょう」とのこと。最近のテレビCMの「1つ1つが鼻につく」というお叱りに対しては、「あまり一番、一番と言ってはダメですね。ちょっと今反省しました」と改善する方向性を示唆した。
株主総会らしく、同社の有利子負債を気にかける質問も出ている。米通信事業者のSprint買収に伴い、一時は減少が続いていた有利子負債が、直近で9兆円以上に膨らんでいることを懸念した声だ。これについて孫氏は、「難しい問題」としながら次のようにコメントし、現在は成長を重視していることを力説した。
「一度は有利子負債をゼロにする方向を決めた。ゼロにすべくさまざまな努力もして、道筋もできて実際に返済も進んだ。そのときに、相当自問自答した。負債ゼロにすることが本当にソフトバンクにとって一番いいのか。それとも負債を背負ってでも成長を優先すべきか。けんけんがくがくと議論をして心底考えた。よくないのは、バランスを崩すこと。バランスは絶対額ではない。返済能力、余力をどれだけ持っているかを常に真剣に検討しながら、自信を持って返済できるときは成長を優先することがあってもよいのではないか。バランスを考えながら経営の舵取りをしていこうと決めた」
ソフトバンクより熱心な要望は少なかったが、KDDIへの要望も相次いだ。端末については、より簡単に操作できるスマートフォンを求める声が挙がった。実際、同社のラインアップには、ドコモやソフトバンクにある、シニア向けのスマートフォンが欠けている。同社 代表取締役執行役員専務 石川雄三氏は夏モデルと同時に発表した「auベーシックホーム」というホームアプリを紹介しながら、「まだまだ工夫の余地があり、そのような取り組みを継続してユーザーインタフェースを便利にしていく」と語った。
東急沿線で事業を展開するイッツコムのエリアに住むという株主からは、「イッツコムを買収してほしい」という要望も。この大胆な提案に、田中氏は苦笑しつつ、「資本関係はないが、当社の携帯電話が1410円安くなる」とauスマートバリューをアピールして切り替えした。
「週刊ダイヤモンド」に掲載された、オプションの外部メモリに関する不正取引疑惑を問われる一幕もあった。これについて、田中氏は「厳正かつ徹底的に調査した結果、不正な取引は確認されていない」と断言し、経緯を説明した。
KDDIは2013年に外部メモリを10万発注したが、そのうちの6万5000が廃棄されていたという。田中氏によると、これはiPhone 5s/5cとのセット販売を予定していたものだという。iPhoneのLightning端子に取り付けるタイプの外部メモリで、データのコピーをPCなしで行えるようにして、店頭の負荷を軽減させたいという狙いがあったようだ。ドコモがiPhoneを導入することを見越して、サポートの充実度で差別化したいという思惑もあった。
10万という数字は、「iPhoneの販売量は、数カ月で100万ぐらいのため。10%というセット率は、内部においても非常にリーズナブルな数字であった」というところから導き出された。ところが、「ご存じのとおり、iPhoneの供給が非常に少なくなってしまった」。特に売れ筋だったiPhone 5sの供給が計画を大きく下回っていたため、セット販売の計画が大きく狂ったようだ。
結果として不正取引ではなかったとのことだが、田中氏は「疑惑が発生したこと自体が問題」だとして、経営改善に努めたいと陳謝した。
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