7月31日には、ソニーが決算会見を開催。その中で、モバイル事業の戦略を見直すことが明かされた。ソニーモバイルは、Xperiaブランドのスマートフォンを主軸に据え、世界シェア3位を目標としていた。4月に掲げられた販売台数の目標は年間5000万台。決算会見ではこれを下方修正し、年間4300万台に引き下げている。
下方修正の主な要因は、「見通しが甘かった」(代表執行役 EVP CFO 吉田憲一郎氏)こと。ミッドレンジ以下のラインアップを拡大して、パイを広げようとしていたが、ここに落とし穴があった。吉田氏によると、「ラインアップについてはかなり増やしたが、最も苦戦しているのはどちらかというと安いモデル」だという。日本は2013年とほぼ同様の実績を想定しつつ、そのほかの地域で拡大を図る計画だったが、「中国やラテンアメリカが想定より不振」(業務執行役員 SVP 十時裕樹氏)になり、販売台数の見通し引き下げを余儀なくされたという。
こうした実情を踏まえ「選択と集中」(吉田氏)を行い、展開する地域やラインアップの幅を縮小する方針だ。吉田氏は次のように語る。
「グローバルの規模ではなく、国ごとに戦略を考えていく。地域ごとの通信事業者との関係を強化して、プレミアムブランドを作れる国に選択と集中をしていく方向で見直しをしている。商品数やライフ(販売期間)も見直していく。時間軸は現時点で明確に申し上げられないが、できるだけ早くやってきいきたい」
Xperiaは現在、フラッグシップモデルを半年に1回、矢継ぎ早に投入する戦略で商品を展開しているが、これも見直しの対象になる可能性がある。地域に関しては、ローエンドやミッドレンジが中心の国からの撤退も考えられそうだ。
もちろん、日本やアジアの一部、欧州で展開している「Xperia Z2」のようなフラッグシップモデルの販売は堅調だ。台数自体も第1四半期で940万台と、前年同四半期の960万台からわずかに減少しているものの、規模を考えれば“ほぼ横ばい”ともいえるだろう。一方で、スマートフォン市場自体は今も拡大を続けているが、グローバルで見ると伸びしろが大きいのはミッドレンジ以下のモデルだ。この領域の拡大に失敗したために、横ばいに甘んじたという見方もできる。
ミッドレンジ以下で存在感を発揮しているのが、中国メーカーだ。日本でも端末を販売しているHuaweiに加え、LenovoやXiaomi、Coolpadといった新興メーカーの躍進が著しい。米調査会社のStrategy Analyticsが発表したリポートによると、2014年第2四半期(4月から6月)はHuaweiが2010万台で3位、Lenovoが1580万台で4位、Xiaomiが1510万台で5位につけている。
いずれのメーカーもまだ中国市場での割合が高い状態だが、同市場でミッドレンジ以下のモデルを拡大しようとしていたソニーにとっては、こうしたメーカーの伸びが大きな誤算だったはずだ。ソニーの十時氏も、「結論を出すのは時期尚早」と前置きしつつ、「市場全体のトレンドの見方が当初ややアグレッシブだった。もう1つは中国メーカー。新興メーカーの躍進がポイントとして挙げられる」と語っている。
中国メーカー躍進の影響はソニーだけが受けているわけではない。同時期に韓国で業績を発表したSamsung Electronicsも、モバイル事業の収益が第2四半期で24.6%減となっており、販売の不振が顕在化している。ソニーとSamsungは置かれている状況がやや異なるが、ここでも中国メーカーとの競争激化は要因の1つとして挙げられている。先に挙げた中国メーカーは、まだ海外市場に伸びしろがある状態。今後数年でシェア上位を占めるメーカーの顔ぶれが、大きく変わる可能性も残されている。ここに、Samsungやソニーといった既存のメーカーがどう対抗していくのかにも、引き続き注目していきたい。
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