とは言え、端末代の金額差はごくわずか。キャンペーンの内容にも、大きな差は感じられない。ドコモの発表前のため、一概にはいえないが、端末と価格はほぼ横並びになる可能性がある。そのため、勝負の決め手はネットワークになりそうだ。
中でも「新しいiPhoneは我々の最新のネットワークにすべて対応している」(石川氏)と鼻息が荒いのがKDDI。iPhone 6、iPhone 6 PlusはどちらもLTEの2つの周波数帯を束ねて使う「キャリアアグリゲーション」や、時分割で通信を行う「TD-LTE」(UQコミュニケーションズのWiMAX 2+と互換性がある)に対応しており、KDDIのネットワークをフルに生かすことができる仕様になっている。
KDDIはiPhoneの導入を見込み、150Mbps対応の(キャリアアグリゲーションができる)基地局を急ピッチで増強。9月10日には「1万局を達成した」という。これに対し、ドコモは2015年3月末までに150Mbps対応の1.7GHz帯基地局を2000局にする計画。数の上で、ドコモを上回わる見通しを示した。ソフトバンクもすでに「キャリアアグリゲーションは沖縄のごく一部のエリアで始めている」というが、150Mbps対応の基地局はほぼゼロに近い。高速通信対応エリアがもっとも広い点は、KDDIが優位といえそうだ。
また、LTEのエリアについても、KDDIは「総務省の新しい基準で、人口カバー率99%を達成している」と言い、他社をリードする。対するソフトバンクの実人口カバー率は現在92%。約2%カバー率を上げると、「面積では東京都20個分を広げないといけない」ため、数字から受ける印象以上にエリアの違いを体感できるだろう。ドコモは、2014年3月末で人口カバー率97.5%。ただしこの数値は、旧来の方法で計算された市町村役場ベースの人口カバー率となっており、他社より実態では見劣りする。
一方で、iPhone 6、iPhone 6 Plusから新たに対応したTD-LTEについては、ソフトバンクに一日の長がある。同社の関連会社であるWireless City PlanningはAXGPとしてサービスを開始しており、ソフトバンクのAndroidスマートフォンやWi-Fiルーターなどでこの通信方式を利用している。AXGPはトラフィックの多い都市部を重点的にカバーしており、「2013年10月時点ですでに4万2000局」(広報部)と基地局も多い。最新データは公表されなかったが、Androidやデータ端末で先行導入してきた分、エリアの拡大は速かった。対するKDDIもWiMAX 2+の基地局建設が「順調に進んでいる」というが、人口カバー率や基地局数などの具体的な成果は公開されなかった。
これに対してドコモは、真っ先にVoLTEへの対応を表明した。ただし、発売時点では利用ができず、「Appleと連携を取って進めていきたい」(広報部)という。「すぐさま使えるようにしたい意向はある」といい、ネットワーク側の準備ができているだけに対応は早そうだ。ただし、VoLTEについてはKDDIも追随する方針。先の石川氏は「我々もVoLTEはほぼ準備が整っている。新しいiPhoneについてはメーカーのお考えもあるので最初は対応しない。なるべく早い時期に導入したい」と述べている。こうした点を考えると、秋冬モデルに合わせ、KDDIもVoLTEを開始する可能性もありそうだ。一方で、ソフトバンクはVoLTEの導入は「未定」とのこと。「AQUOS CRYSTAL X」に合わせた開始が予定されているだけに、今後の対応に期待したい。
ネットワークについては、LTEのエリアや速度でKDDIが一歩リードしているように見えるが、TD-LTEについてはソフトバンクが強い。使う場所や時間帯によっても、印象が変わってきそうだ。また、VoLTEはすでに導入済みのドコモが対応は早くなるものと思われる。このように考えると、ネットワークの何を重視するかで選ぶキャリアが変わってくるともいえそうだ。
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