スマートフォンと“アプリ”がネットサービスの主戦場となった1年ITmediaスタッフが選ぶ、2014年の“注目端末&トピック”(ライター佐野編)

» 2014年12月22日 18時14分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 2014年のアプリ動向を振り返ると、ゲームだけでなく実用系サービスまでもがアプリ化を進め、相次いでテレビCMを展開するなど大きな動きが見られたように思う。スマートフォンとアプリは、もはやPCとWebに代わる、ネットサービスの主戦場となったのではないか。

驚きを与えた実用系アプリのテレビCM展開、けん引したのは?

 キャッシュバックの抑制やキャリアの新料金プラン、そして格安スマホの台頭と、料金に関するトピックに大きな注目が集まった、2014年のモバイル業界。だが実は、スマートフォンの“内側”、つまりアプリにおいても非常に大きな変化が起きた1年だったと、個人的には感じている。ゲームアプリに関しては、本誌連載で2014年の動向をまとめているのでそちらを参照頂きたいが、ここではアプリマーケット全体を振り返り、特に印象に残ったことを上げておきたい。

 その1つは、アプリに関するテレビCMの急増ぶりだ。2013年から「パズル&ドラゴンズ」などのゲームアプリに関するテレビCMは増加傾向にあったが、2014年はゲームだけでなく実用系のアプリまでもが、テレビCMを実施してユーザーを獲得するのが“当たり前”となりつつある。

 中でも、増資した資金をテレビCMに費やすなど大胆なプロモーション施策を打ち出した「グノシー」のように、まだ大きな売上を上げるに至っていないベンチャー企業が相次いでテレビCMを実施したことには、とても驚かされた。だがそうした流れの先鞭をつけたのは、実は「マンガボックス」と「WEAR」にあると感じている。

 マンガボックスはディー・エヌ・エー(DeNA)が2013年12月にサービスを開始し、同年末から2014年の頭にかけて大規模なテレビCM展開を実施。年末年始の休暇需要を狙って多くのゲームアプリがテレビCMを大量投下しやや食傷気味となっていたところに、無料コミック雑誌アプリのテレビCMを流すという斬新さが受け、ダウンロード数が急増するなど大きなインパクトを与えたと記憶している。しかも2013年の「comm」のように、テレビCM放映後ニーズが尻すぼみとなるのではなく、9月には600万ダウンロードを記録するなど、現在も高い人気を獲得していることは高く評価したい。

photo 2013年末にサービスを開始した「マンガボックス」。同年末から2014年の頭にかけてのテレビCMがけん引役となり、大幅にダウンロード数を伸ばした

 一方のWEARは、100万ダウンロードを記念して3月よりテレビCMを実施したところ、短期間でダウンロード数が倍の200万に伸びたことから注目を集めた。WEAR自体は、商品のバーコードを読み取りWebサイトで商品が購入できる機能が批判を集め、同機能を廃止するなどトラブルにも見舞われたのだが、現在では400万ダウンロードを記録し、ファッションコーディネートアプリの定番の1つとなっているのはさすがというべきだろう。

 両アプリを提供しているのはインターネットサービス大手であり、企業体力があるからこそ、あまり前例のないテレビCM展開ができたのは確かだろう。だがゲームではない2つのアプリが大きな実績を残したことが、実用系アプリベンチャーのテレビCM展開という流れに大きな影響を与えたのではないかと、筆者は感じている。

photo スタートトゥデイの「WEAR」も、テレビCMで大きくユーザー数を伸ばすという実績を見せたアプリの1つだ

ビジネス層向けサービスもアプリ化を重視する時代

 こうした各社のテレビCM展開と、それを受け入れるユーザーの増加から見えてくるのは、スマートフォンのアプリがもはや珍しい存在ではなく、生活に根差した存在になっているということ。そして、アプリがいよいよ、ネットサービスの主戦場になったということだ。

 それを象徴する出来事はいくつかあるのだけれど、ここではキュレーション系ニュースアプリの台頭を上げておきたい。「グノシー」や「SmartNews」などのスマートフォンを主体として展開するニュースアプリが、テレビCMなどの影響もあって多数のユーザーを獲得、急速に注目を集めたのは、ご存じの方も多いと思う。

 だがより注目したいのは「NewsPicks」の台頭だ。NewsPicksは経済情報に特化したニュースアプリであり、ターゲットはビジネスマン層となることから、従来であればPCを主体とした設計がなされるようなサービスである。しかしながらNewsPicksはスマートフォンとアプリを主体としたサービス設計となっており、しかも人気を獲得している。

photo 経済に特化したニュースアプリ「NewsPicks」。こうしたビジネス層向けのサービスがスマートフォンアプリを重視し、しかも人気を獲得していることは大きい

 このことには、非常に大きな流れの変化を感じずにはいられない。というのもスマートフォンのアプリは従来、ゲームやカメラ、コミュニケーションに代表される、若年層の娯楽を意識したサービスが大きく伸びる傾向が強かった。だが2014年に入ってからは、アプリが娯楽だけでなく実用、ビジネスに至るまで幅広い層に受け入れらるようになり、娯楽系以外のネットサービスを提供する事業者もまた、NewsPicksのようにアプリ化を強く意識するようになったと感じている。

 この傾向が進んでいくことは、産業全体でApple、Googleへの依存度がより高まる、情報のクローズ化が進むなど、さまざまな問題をはらんでいるのも確かではある。だがアプリの利用が広く浸透した現在、ホーム画面にアイコンが並び、ワンタッチで利用できるアプリの利便性は、Webブラウザのブックマークと比べ圧倒的な優位性があるのもまた事実。それだけに来年も、ネットサービスのアプリ化という流れは続くといえそうだ。

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