MVNOとSIMフリースマホを抜きには語れない2014年ITmediaスタッフが選ぶ、2014年の“注目端末&トピック”(ライター太田編)

» 2014年12月24日 15時13分 公開
[太田百合子,ITmedia]

 モバイル業界の片隅に身を置く者にとって、2014年は本当に話題に事欠くことのない1年だった。通話定額プランが導入されていよいよVoLTEが始まったり、新しいキャリア「ワイモバイル」が発足したり、多種多様な企業がMVNOに参入するなど、大きなニュースもたくさんあったし、iPhoneの大画面化やスマートウォッチ、SIMロックフリー端末の充実など、興味をひかれるデバイスにもたくさん触れることができた。あまりに盛りだくさん過ぎて、どうまとめて良いか分からないくらいだが、ここでは2015年の動向にも大きく影響しそうな4つのトピックスを取り上げたい。

大画面5.5インチのiPhone 6 Plus登場

 かねてから噂されていたこともあって発表自体に驚きはなかったが、「iPhoneがついに大画面化した」ことが与えたインパクトは、やはり大きかった。スマホの大画面化は何も今に始まったことじゃないが、これまでは「見やすい大画面がいい」という声と、「片手操作ができるコンパクトサイズがいい」という声は、どちらも同じくらいのボリュームであったように思う。女性に限れば、むしろコンパクトを支持する声のほうが大きかったくらいだ。それが4.7型の「iPhone 6」と5.5型の「iPhone 6 Plus」の登場以降、一気に大画面容認へと傾いてしまった感がある。「iPhoneも大きくなったし、大画面化もやむなし」という、どこか諦めにも似た空気を感じるのは筆者だけだろうか?

photo 左から「iPhone 5s」「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」

 実際に使ってみると、確かに画面の大きいスマホは見やすいし、バッテリーも大容量だから安心だ。しかし一方で、やはり片手で操作するには大きすぎるし、ポケットにも入れにくい。だからといってカバンに入れてしまうと、今度は着信に気づけなかったりする。カバンからスマホを取り出さなくても、ちょっとした作業なら腕元でこなせる「スマートウォッチ」が、2014年に相次いで登場したことも、スマホの大画面化と無縁ではないだろう。

 2015年には「Apple Watch」の発売も予定されているが、このまま大画面スマホとスマートウォッチ(あるいは他のウエアラブルデバイス)という組み合わせが、広く受け入れられるかどうかは疑問。最近では海外でもコンパクトなスマホが人気を集めていると聞くし、ひょっとしたら2015年には、コンパクトスマホへの揺り戻しが起こるかもしれない。

ASUSとファーウェイがSIMフリースマホ発売 MVNO市場に参入

 2014年の後半は、MVNO関連のニュースがとにかく豊富だった。4月にイオンが手がけた、SIMカードと「Nexus 4」のセット販売が話題になったのをきっかけに、「格安スマホ」がメディアにも大きく取り上げられるようになり、多くのMVNO事業者がSIMカードとSIMフリー端末をセットで販売するようになった。そんな中で特に存在感を見せた端末が、ASUS「ZenFone 5」とファーウェイの「Ascend Mate 7」だ。前者はミドルレンジ、後者はハイエンドとポジショニングは異なるが、どちらもコストパフォーマンスが抜群に高い。

photo 「ZenFone 5」

 例えばファーウェイはこれまで、「Pocket Wi-Fi」やデジタルフォトフレームなど、どちらかというとキャリアの裏方に徹してきたメーカー。それが2014年は大きくビジネスの舵を切り、自社ブランドのSIMフリースマホ、タブレットを日本向けに相次いでリリースした。またASUSは、ATOKを搭載するなどして、グローバルモデルを一部日本向けにカスタムし、ヒットにつなげた。いずれも日本のMVNO市場に、本気で勝負を賭けていることが伝わってくる。

photo 「Ascend Mate 7」

 一方で今キャリア向けにスマホを提供している他メーカーは、一部MVNO事業者への端末提供はあったものの、いずれもまだ様子見といった雰囲気。年末には富士通がイオン向けに「ARROWS M01」の提供を開始したが、これが新たな第一歩となるか。いずれにせよ2015年5月以降、総務省が推進するSIMロック解除の義務化が現実になれば、メーカーはいやでもMVNO事業者を意識せざるを得なくなる。そうなったときにメーカーはどう動くのか。このあたりも、2015年の注目ポイントとなりそうだ。

フリービットが渋谷に直営店をオープン

 楽天、TSUTAYA、DMM.comなど、秋から年末にかけてビッグネームがドドドッと参入し、2015年もますます盛り上がりそうなMVNO市場。従来のケータイからスマホに乗り換える際にMVNOを選ぶ人も増えているようだが、一方で分からないことあったときに、通信についてはMVNO事業者に、端末についてはメーカーに問い合わせなければならないなど、大手キャリアに比べるとサポート面に不安が残る。その点、ユニークな取り組みを行っているのが「freebit mobile」だ。

 2014年夏には、渋谷のスペイン坂に直営店をオープンさせて話題になった。今後はフランチャイズ方式で店舗を拡充することもすでに発表済み。ほかにも店頭で直接購入できるMVNOスマホはあるが、freebit mobileがユニークなのは、端末から店舗、さらには購入後のサポート体制までを、一気通貫で整えていることだ。一方で通信は3Gだけに絞っていて、他のMVNO事業者のようにLTEサービスは提供していない。ターゲットが実に明確で、そのターゲットに対してきちんとサービスが作り込まれているという印象だ。

photo 渋谷・スペイン坂にあるfreebit mobileの直営店

 一方で最近MVNOでは、「ぷららモバイルLTE」やU-mobileの「LTE使い放題」のように、高速通信が使い放題のプランを提供するところも出てきている。こちらのターゲットもまた、実に明確。今後MVNOは、初心者向けにサポートを充実させたプランと、ヘビーユーザー向けの使い放題プランに二極化されていくのではないだろうか?

au WALLETでプラットフォームを強化

 MVNOやSIMフリースマホの話ばかりになってしまったが、最後に2014年のキャリアの動きにも少しだけ触れておきたい。冒頭に紹介した通話定額プラン、VoLTEのスタート、ワイモバイルの発足など大きなニュースがたくさんあったが、中でも筆者の印象に残ったもののひとつが「au WALLET」のスタートだ。

photo

 スマホは常に持ち歩くものだから、ユーザーを店舗などに導いて購買につなげる、いわゆるO2O(オンラインtoオフライン)が得意。ケータイの時代には、O2Oのサービスはそのほとんどがキャリアのコントロール下にあったが、スマホはオープンな上に、最近ではLINEやFacebookなど、キャリア以上に多くのユーザーにリーチできる、新しいプラットフォームも台頭してきている。一方でキャリア間のユーザーの獲得競争では、キャッシュバックも収束し、料金や端末、さらにはインフラ面でも横並び感が強くなっていて、ますます差別化が難しくなってきているのが現状だ。

 au WALLETはスマホでお金をチャージ&お店の情報をチェックでき、店頭では支払いに使え、さらにポイントもたまる。O2Oのプラットフォームであると同時に、auIDと紐付く便利な決済手段であり、auユーザー限定のお得なサービスにもなっているのが強み。おサイフケータイではなくプラスチックカードだから、もちろんiPhoneユーザーも全く問題なく利用できる。他キャリアとの差別化という意味でも強力なツールとなりそうで、今後どんな施策が展開されるかに注目したい。

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