端末については、2013年ドコモがiPhoneの取り扱いを開始したこともあって、均質化が進んでいる。2014年はソフトバンクがXperiaを11月に発売、12月には「GALAXY Tab4」を発売するなど、iPhoneだけでなく、Androidでもキャリア間の差は少なくなった。ソフトバンクにはGALAXYシリーズのフラッグシップがないなど、まったく同じというわけではないが、明確な差がなくなりつつあるのも事実だ。Androidに関しては、OSも同じで、メーカーごとの差別化もしにくい。
こうした状況を見据えて、キャリアがメーカーと共同で端末を開発するという動きも顕在化した。代表的なモデルが、ソフトバンクの「AQUOS CRYSTAL」や、KDDIの「isai FL」「isai VL」だろう。KDDIはほかにも、「HTC J butterfly」や「MeMO Pad 8」を、それぞれHTCやASUSと共同で開発している。12月25日に限定発売された、Firefox OSを採用する「Fx0」(LGエレクトロニクス製)も、独自モデルの1つだ。
とはいえ、そのビジネスモデルはキャリアによって異なる。ソフトバンクは、傘下に収めたSprintの規模を生かし、AQUOS CRYSTALを日米で共同調達した。対応周波数などの違いでハードウェアにやや違いはあるが、ベースはほぼ同じ。ソフトウェアを仕向け先ごとに変えて出荷するプラットフォームも用意した。
これに対してKDDIは、HTC J butterflyやMeMO Pad 8では、あくまでメーカーへの協力にとどまっている。そのため、これらの端末はグローバルで販売されている。とは言え、デザインや機能については、KDDIの意向が強く反映されている。アジアに影響力の強い日本のトレンドを取り入れたいメーカーと、ラインアップに差を出したいKDDIの思惑が合致した格好だ。
また、既存のスマートフォンに飽き足らなくなっているユーザーに向け、Firefox OSを搭載したFx0を用意。端末のデザインは、au design projectやiidaでおなじみの吉岡徳仁氏が手がけ、Firefox OSの理念であるオープンさを透明なボディで表現した。ビジネス的には未知数の部分が多いFirefox OSだが、KDDIは、これをアプリや連携ハードを作る楽しさを訴える端末と位置づけている。かつてのau design projectのような、キャリアのイメージを伝える端末といってもいい。
こうした独自性を求める取り組みは、2015年も続いていくはずだ。ただし、ハイエンド端末のスペックも、そろそろ頭打ちの状況だ。2014年は、2013年以上に端末の性能の進化が緩やかだった。こうした中で、ミッドレンジクラスで価格の安い端末がMVNOとセットで注目を集めたのは、先に述べたとおり。さすがにここまで性能が上がると、どうしても機能やスペックは横並びになりがちだ。そう考えると、キャリアモデルにも、こうした価格でのバリエーションは必要になってくるだろう。
ここまで、主に3つのトピックを“2014年のまとめ”として取り上げてきたが、触れていないことはまだまだ多い。イー・アクセスとウィルコムが合併してワイモバイルが発足したことや、過熱したMNP競争が生み出したキャッシュバック合戦に終止符が打たれたのも、2014年のこと。KDDIの「au WALLET」や、ソフトバンクの「アメリカ放題」など、個別のサービスでも光るものが多かった。
料金面でも変化の大きかった1年だった。ドコモが発表した音声定額プランはまたたく間に3キャリアに広がった。家族間や複数回線でデータ量をシェアするサービスも、各社が導入している。2015年には、FTTHサービスの「ドコモ光」も始まり、固定回線も含めた料金競争がさらに激化することが予想される。
このように見ていくと、モバイル業界はやはりトレンドの移り変わりが激しい業界であることがよく分かる。スマートフォンへの移行速度が落ち気味とはいえ、話題には事欠かない。2015年にも、さまざまなニュースが待っているはず。今から楽しみだ。
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