香港で買える「海外用プリペイドSIM」完全ガイド2015年編――海外プリペイドSIM導入マニュアル周遊プランなど豊富な品ぞろえ(1/2 ページ)

» 2015年01月28日 17時30分 公開
[山根康宏,ITmedia]

 今回の「海外プリペイドSIM導入マニュアル」はいつもと趣向を変えて、筆者が居住する香港で販売されている海外向けのプリペイドSIMを紹介する。都市国家香港は隣町に行くのですら海外出張・海外旅行となるため、各通信事業者が海外用の割安料金で利用できるプリペイドSIMを販売している。もちろんそれらを我々日本人が購入して使うことも可能だ。日本からの購入は通販を利用することになるが、渡航先や渡航スケジュールによってはぜひとも入手したい製品が多数用意されている。2015年1月現在で販売されている、便利な香港SIMをまとめてみた。

都市国家香港ならでは! 充実する海外用プリペイドSIM

 プリペイドSIMを渡航先で買う最大のメリットは、現地事業者の格安料金プランを旅行者でも利用できることだ。とはいえ、現地に入る時間が夜中だったり、空港でプリペイドSIMが販売されておらず街中でお店を探さなくてはならなかったり、はたまた購入時に言葉が通じにくく、なんとか買えたものの開通作業が遅れてすぐに使えなかった――なんてこともある。国や事業者により事情はさまざまだが、そんな各国のプリペイドSIMの販売実態や使い勝手を毎月レポートしていくのも本連載の目的だ。

 最近は日本でもSIMロックフリースマートフォンの認知度が上がり、端末の選択肢も増えた。また有料にはなるが、NTTドコモのAndroidスマホなら店頭でSIMロックを解除することもできるなど、スマホを海外に持ち出し、現地のプリペイドSIMで活用する環境は整い始めた。だが前述したように現地入りしたにもかかわらず、すぐにプリペイドSIMが入手できないこともある。できれば海外渡航前に現地のプリペイドSIMを入手できれば便利だが、自国のプリペイドSIMを他国で正規に販売する事業者はほとんどない。

 ところが、筆者の居住する香港では、香港の通信事業者が他国で利用できるプリペイドSIMを正規に販売している。各事業者は海外ローミング時の1日データ定額サービスなども提供しているが、より多くの人の手軽に海外利用をしてもらおうと、先払いで安心して利用できるプリペイドSIMも提供しているわけだ。たとえば「台湾7日用SIM」といったものがあり、台湾に到着して飛行機を降りた瞬間からすぐに使い始めることができる。

 本連載でも以前、「香港のSIMを中国で使う編」としてそのサービスの一部を紹介したことがある。だがそれから2年が過ぎ、香港の海外用プリペイドSIMは劇的に大きく進化した。特にデータ通信専用タイプはアジア各国用が出そろい、現地でプリペイドSIMを買わなくても困らないほどになっている。

photo 約1年半前に紹介した香港のプリペイドSIM。当時は海外で格安で利用できる製品はこれくらいしかなかったが、今では多数の製品が登場している
photo 香港といえばグルメにショッピング――というイメージが大きいが、プリペイドSIMもさまざまな製品が売られているのだ

 ちなみに香港の通信事業者がこのような海外用プリペイドSIMを販売するのには、ほかにも理由がある。まず香港の領土面積は東京23区の半分しかなく、隣町に行くだけでもそこはすでに外国だ。つまりほとんどの香港人が毎月、いや毎週のように“海外”に出かけるのである。しかも香港で販売されているスマートフォンは事業者が販売するモデルでもSIMロックフリー。香港人にとって海外で現地のプリペイドSIMを利用することは当たり前で、慣れたものなのだ。香港の事業者としてはローミングサービスを使ってほしいものの、香港人もそのあたりは賢く現地SIMのほうが安いことは十分熟知している。ならば少しでも収益を上げようと、香港の事業者もあえて国外用プリペイドSIMの販売に力を入れているというわけだ。

 そんな香港の海外向けプリペイドSIMは、もちろん日本の事業者の店舗などでは売られていない。そのため購入は通販を利用することになる。だが最近ではアマゾンなどにプリペイドSIMの輸入販売業者が店を出しているし、ネット上にも海外プリペイドSIMの販売業者が増えているのでそれらを利用するのがよいだろう。あるいは、香港へ旅行に行く知人などに買ってきてもらうのもいいだろう。また香港経由で中国に入る場合には、香港国際空港で購入するという手もある。

 香港で入手するなら、各事業者の店舗やコンビニエンスストアなどで購入する。コンビニでは在庫がないこともあるので、各事業者の店舗が確実だ。また電脳系のお店が良く集まるシャムシュイポにある「鴨寮街」という通りには、SIMカードの安売り屋台が多数並んでいる。香港ではプリペイドSIMの購入に身分証明書の提示やユーザー登録が不要なので、この手の店で買っても問題はない。

photo 香港空港出発フロア、カウンター「H」の並びにある中国移動香港の店舗。同社が販売する海外用プリペイドSIMを入手できる
photo 香港空港到着フロアにあるセブンイレブン。いくつかのSIMを販売している

中国でも自由に”つぶやける”香港のSIM

 香港はMVNO含め多数の通信事業者が存在し、各社がさまざまなタイプのプリペイドSIMを販売している。その中で、まずは中国で使いやすいタイプの製品を紹介しよう。ちなみにここから先で紹介するプリペイドSIMは、すべて香港の通信事業者のプリペイドSIMである。つまり中国用や他国用であっても、その国では香港のSIMとして動作するのだ。すなわちローミングをオンにしないと利用できない。

 最初に中国向けのSIMを紹介するのは、中国のいわゆる“グレート・ファイアーウォール”を回避できるからである。中国では国内事業者のSIMは海外Webサービスへの接続ができないため、VPNサービスを利用する必要がある。しかし最近はそのVPNも繋がりにくくなってきた。今回紹介する香港のSIMは、中国で使う場合は国外事業者SIM扱いとなり、国際ローミング利用となる。つまりソーシャルサービスの接続制限を受けないのだ。中国に行く際は、香港事業者の中国用プリペイドSIMを使うのと便利なのである。

photo 中国でもプリペイドSIMが販売されているが、海外のSNSへの接続が遮断される。香港のプリペイドSIMならその心配はない
photo 香港のコンビニでよく売られている跨境王の新旧2タイプ

 では各社が販売するプリペイドSIMの中で、香港のコンビニで最近よく販売されているものを最初に紹介しよう。コンビニで「中国でも使えるもの」というと、黙ってこれを出されることがあるくらいよく売られているのが、中国聯通香港の「跨境王」というプリペイドSIMである。

 ちなみに中国聯通は中国大陸の事業者だが、香港ではMVNOによる別事業者として営業している。この跨境王は新旧2タイプあるが、どちらも中国ローミングにデフォルトで対応し、音声通話も可能で中国の電話番号も利用できる。ただしデータ通信専用タイプではないため、データ通信利用時には所定の番号を送信してデータパッケージを買う必要がある。また購入時に入っている金額が少ないので、SIM購入時に料金追加カードを一緒に買うか、同社のWebサイトからクレジットカードで料金を追加しておく必要がある。

 跨境王は新旧どちらもそのまま中国でデータ通信を行うと、2香港ドル/Mバイトの従量料金となってしまう。データパッケージは必ず買うようにしたい。また台湾やマカオ、そして日本でも利用できる。繰り返すが購入時は十分な金額が入っていないので料金の追加は必須だ。「買ってすぐ何も考えずに使いたい」と考えている人は、この次の項で紹介するデータ通信専用タイプを買ったほうが簡単だ。なお中国で利用できる通信方式はW-CDMA(2000MHz)またはGSM(900MHz)となる。

商品名 跨境王
事業者 中国聯通香港
価格 120香港ドル(約1820円)※66香港ドル分の料金込み
内容 中国&香港共通。データ料金は38香港ドル/300Mバイト/日(*118*441#に発信して追加申請)と、78香港ドル/500MB/7日(同*118*500#)。台湾、マカオ、日本はそれぞれ68香港ドル/データ定額/日。現地事業者は中国聯通

商品名 跨境王加強版
事業者 中国聯通香港
価格 138香港ドル(約2090円)※80香港ドル分の料金込み
内容 中国&香港&マカオ&台湾共通。データ料金は48香港ドル/300Mバイト/7日(*118*448#に発信して追加申請)、68香港ドル/500Mバイト/30日(*118*468#に発信して追加申請)。日本は68香港ドル/データ定額/日。現地事業者は中国聯通、マカオがHutchison(3MO)、台湾が中華電信、日本はソフトバンクモバイル

 中国聯通香港のプリペイドSIMはこの後紹介する商品も含め、APN設定は以下の通り。

  • APN:3gnet
  • ユーザー名:なし
  • パスワード:なし

中国とマカオのデータ専用タイプはすぐに使えて簡単

 中国聯通香港は購入してスマートフォンに入れ、データパッケージ申請なども不要ですぐに指定容量が利用できる簡単タイプも販売している。中国全土タイプと広東省タイプ、またマカオにも対応したものも出している。

 ところで香港には中国大陸の中国移動の子会社、中国移動香港も営業を行っている。こちらは香港の通信事業者を買収し、MVNOではなくMNOとしての営業だ。中国移動香港も中国大陸で利用できるプリペイドSIMを出しているが、中国ではTD-SCDMAとTD-LTE、GSMの利用となる。現在はまだTD系を搭載したスマートフォンは少ないことと、中国聯通香港のほうが使い勝手がいいため紹介はそちらだけにとどめておく。

photo 香港にもある中国移動と中国聯通。どちらも香港の子会社であり、中国大陸とは別に運営されている
photo 「3」のロゴでおなじみのハチソン

 そしてもう1社、Hutchison(3HK)も中国マカオ両用のプリペイドSIMを販売している。ただこちらは料金が割高で利用するメリットは薄い。ところがあとで紹介する「アジア周遊」「ヨーロッパ周遊」にも利用することができるのだ。世界各国を頻繁に渡航する人はこちらのほうが便利かもしれない。なおHutchisonのSIMは利用する前にデータ定額申請が必要だ。

商品名 中港7日カード
事業者 中国聯通香港
価格 128香港ドル(約1940円)
内容 中国&香港共通で連続7日間、1Gバイトまで利用可能。現地事業者は中国聯通

商品名 跨境王広東省香港カード
事業者 中国聯通香港
価格 299香港ドル(約4530円)
内容 中国&香港共通で連続90日間、3Gバイトまで利用。現地事業者は中国聯通

商品名 大中華30日カード
事業者 中国聯通香港
価格 149香港ドル(約2260円)
内容 中国&マカオ&香港共通で連続30日間、1Gバイトまで利用。現地事業者は中国聯通、マカオHutchison(3MO)

商品名 China & Macau Roaming Mobile Data Prepaid SIM
事業者 Hutchison
価格 98香港ドル(約1480円)
内容 中国&マカオ&香港共通で、68香港ドル/150Mバイト/日。利用ごとに*127*303#に発信して申請する。キャンセルは#127*303#に発信。アジア周遊やヨーロッパ周遊は別の番号に発信して申請。現地事業者は中国聯通、マカオHutchison(3MO)

 HutchisonのプリペイドSIMのAPN設定は以下の通り。

  • APN:mobile.lte.three.com.hk
  • ユーザー名:なし
  • パスワード:なし
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