PEREMIUM 4G、ガラホ、ポータブルSIM――ドコモ プロダクト部長 丸山氏に端末戦略を聞くMobile World Congress 2015(1/2 ページ)

» 2015年03月04日 20時58分 公開
[村元正剛,ITmedia]

 スペイン・バルセロナで開催中のMobile World Congress 2015(MWC2015)の会場にて、NTTドコモ 執行役員・プロダクト部長の丸山誠治氏にインタビューさせていただく機会を得た。丸山氏は、NTTドコモの端末戦略の総指揮を執るキーパーソン。SamsungのGalaxy S6や、ソニーモバイルのXperia Z4 Tabletなど、今回発表された端末の中にも、NTTドコモから発売される可能性が高いモデルが含まれている。MVNO市場の広がりや、SIMロック解除の義務化など、日本の携帯市場に大きな変化が起きつつある現在、NTTドコモが目指す方向性について話をうかがった。

photo NTTドコモ 執行役員 プロダクト部長の丸山誠治氏

最も関心を集めているのは「YUBI NAVI」

―― ドコモは今回のMWC2015で、次世代通信「5G」の技術や、「ポータブルSIM」などの展示を行っています。来場者の反響はいかがですか?

丸山氏 ブースの立地がいいので(同社のブースは会場の入り口から近いホール1に入ってすぐにところにある)、とてもにぎわっています。私の印象では、最も関心を集めているのは「YUBI NAVI」だと思います。私も最初に見たときは、こんなものができるのか! と衝撃を受けました。

photo スマートフォンとBluetoothで接続し、握るだけで操作する「YUBI NAVI」。歩きスマホの防止につながり、端末を握る感触が相手に伝えるという、ユニークなコンセプト端末

―― 「YUBI NAVI」は2014年秋のCEATEC JAPANで発表された際にも話題になりましたよね。「5G」や「ポータブルSIM」については、いかがですか?

丸山氏 インフラに関するものはドコモの看板でもあるので、毎年展示しています。「ポータブルSIM」についても、けっこう質問を受けているようで、関心を持っていただいています。

―― モバイル通信の高速化が進み、スマートフォンを主軸として、ウェアラブルやM2M、IoTにカテゴライズされるものなど、通信端末の種類が増えてきました。丸山さんは、それらすべてに関わってらっしゃるのですか?

丸山氏 すべてではないですが、かなりのものは私のところで見ています。例えば、自動販売機に組み込むモジュールもそうですし、最近では、子供向けの腕時計端末「ドコッチ」や、愛犬に着ける「ペットフィット」などもそうです。無線につながるものは、ほとんど見ていますね。といいますか、商売上、無線につながらないものはあまり取り扱わないのですが(笑)。

MWCで発表されたモデルのいくつかは“PEREMIUM 4G”に対応する?

―― スマートフォンが中心の市場になり、iPhoneやXperiaなど、3キャリアが扱う端末もあります。フィーチャーフォンが主流だった時代に比べると、端末からドコモ色が薄れてきたような感じます。企画や開発の上で、変わったことはありますか?

丸山氏 iモードケータイが中心だった時代に比べると、大きく変わりました。iモードケータイは、OSのほとんどの部分も我々で作っていましたし、チップセットなどハードウェアもドコモが主導で決めていました。iモードというエコシステムは完全にドコモのものですし、iアプリの規格もドコモが決めたものでした。そのためには、膨大なお金をかけているわけですが、ほとんどの部分はドコモで作っていました。スマートフォンはOSにAndroidを使いますし、我々が一部に手を入れることはありますが、本当にごく一部です。アプリは我々で作っているもののありますが、開発の作業量としては、ものすごく減りました。

―― とはいえ、ドコモのネットワークに適合させる必要はありますよね?

丸山氏 端末メーカーには、ドコモだけが使っている周波数に対応してもらう必要があります。キャリアアグリケーションといった周波数の組み合わせによって回路が変わるので、それに合わせた設計にしてもらう必要もあります。出来合いの端末を買ってきて売ればいい、というわけではありません。端末が発表されるかなり前から、端末メーカーさんとやり取りして、そうした作業をしています。

―― 下り最大225Mbpsの「PEREMIUM 4G」が3月27日に開始されます。今のところ、対応端末として発表されているのはモバイルWi-Fiルーターだけですが、今回のMWCで発表された端末の中にも対応するモデルがありそうですよね?

丸山氏 それは発表をお待ちいただきたいですね。ご期待ください。

SIMロック解除の義務化でドコモの戦略は変わる?

―― 総務省制定のガイドラインに従い、2015年の5月以降に発売される端末から、ユーザーの希望に応じてSIMロックを解除することが義務付けられます。このSIMロック解除の義務化が、ドコモの端末戦略にどのような影響を与えるとお考えですか?

丸山氏 ドコモは今までも(2010年から)お客様の希望に応じてSIMロックを解除していましたし、すでにSIMロックを解除してお使いになっていらっしゃる方がいますので、それは今後も変わらないですし、端末の開発面では大きな影響はないと見ています。ただし、お客様はどう動くかという営業面の話は、また別の話なので、それは何ともいえません。

―― ドコモ端末のSIMロックを外して使いたいというニーズのほかに、最近増えつつあるSIMロックフリー端末をドコモのネットワークで使いたいという人も増えてくるのでは?

丸山氏 今でも少数ではありますが、そういうお客様はいらっしゃいます。ただし、注意しなければならないのでは、国内3社がそれぞれ無線の方式が違い、周波数も違うという点です。すべてのキャリアで使える端末を作るのはなかなか難しいでしょうし、費用もかかる。好きな端末を選んで、どのキャリアでの快適に使えるようになるかといえば、それは想像するほど簡単ではありません。

 無線の部分だけでなく、アプリなどサービスのレイヤーも異なります。例えば、端末に不具合があった場合にサーバからパッチを当てたり、OSのアップデートなども、我々が責任を持ってやっています。もちろん、ご自分でそうしたことを探して対処できる能力があればいいのですが、そうしたことをお任せしたいのであれば、ドコモの端末を選ぶ利便性は依然としてあると考えています。

―― これまでにSIMロックを解除されたユーザーは、どのような目的が多いのでしょうか?

丸山氏 一番多いのは、海外に長期間いらっしゃる方で、海外では現地のSIMを使いたいという方ですね。今後もそうしたニーズはあると思います。

―― ドコモが開発した「ポータブルSIM」は、マルチデバイスの使い分けには最適のアイテムだと思います。端末のバリーエーションは今後増えていくのでしょうか?

丸山氏 多様な端末が最適な組み合わせで動く時代は、必ず来ると思います。今でも「スマホとタブレット」や「フィーチャーフォとタブレット」など、2台持ちで用途によって使い分けるお客様が増えています。それが時計になったり、ほかの端末になったり、ということだと思います。我々が、より簡単に切り替えて使えるような、便利な仕組みを作る必要があると感じています。そのひとつが「ポータブルSIM」なのですが、ポータブルSIMを使わなくてもできることはあると思います。料金面では、2014年に始めた新料金プランで、マルチデバイスが利用しやすくなったと思います。

photo 「ポータブルSIM」は、スマホからカーナビに端末情報を移すなど、具体的な使用例もデモンストレーションされていた
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