スペイン・バルセロナで開催されているモバイル国際見本市「Mobile World Congless(MWC)」。Qualcommのブースでは、初展示となるLTE-Advanced Cat.11のデモをはじめ、LTE-U、次世代のSnapdragon 800シリーズに搭載される新機能「Zeroth」や3D指紋認証など、幅広い技術を紹介している。
MWCの開催に先立って行われたプレスカンファレンスで、Qualcommはモバイルデバイス向けの最上位チップセットとなる、次期Snapdragon 800シリーズ「Snapdragon 820」の一部情報を開示した。展示ブースの一角では、そのSnapdragon 820に搭載されるコグニティブ・コンピューティングのシステム「Zeroth」や、超音波による3D指紋認証技術について、説明するコーナーを設けていた。
「Zeroth」は映像や音声、ジェスチャーといった情報を学習して、瞬時に状況を認知・分析する、コグニティブ・コンピューティングと呼ばれるシステムのプラットフォーム。Qualcommによれば、今後のSnapdragon 800シリーズはこの「Zeroth」に最適化される予定で、その第1弾がSnapdragon 820になるという。デモではカメラが映した手書き文字を瞬時にテキストデータ化する、映っている人物を顔認識で特定、あるいは写真からそこに映っているものを認識し、自動的にタグ付けするといった機能を一例として紹介していた。
もうひとつ、新たにSnapdragon400/600/800シリーズ向けに提供される新機能として紹介していたのが、超音波技術を使った3D指紋認証技術「Snapdragon Sense ID」。超音波によって指紋の凹凸を立体的に認識するというもので、センサーと指の間にプラスチックやガラス、金属などを挟んでも正しく認識できる。
ほかに、Snapdragonシリーズを採用するデバイスから、Automotiveといったチップセット関連、1月に開催されたCESでも注目を集めた「AllSeen Alliance」参加企業によるIoT製品、ワイヤレスチャージ関連まで、幅広く展示していた。
MWCは世界中のモバイルキャリアが集まることもあり、展示ブースの中でも特に大きくスペースが割かれていたのは、やはり高速ネットワークに関するもの。LTE-Advancedの最新技術を紹介するコーナーには、下り最大600MbpsのLTE-Advanced Cat.11のデモも紹介していた。
LTEとWi-Fiのリンクアグリゲーションは、Wi-FiアクセスポイントをLTEの基地局につないで、基地局からLTEとWi-Fiにパケットを分割して送信する技術。キャリアは既存のWi-Fiアクセスポイントを有効活用して、スループットの向上に役立てることができる。デモでは実際にサンディエゴのQualcomm本社を自動車で移動するチームと中継を結びながら、LTEだけを使った通信からLTE+Wi-Fiのリンクアグリゲーション通信へと、シームレスに切り替わり、スループットが向上する様子を紹介していた。
さらに今回、Qualcommブースの目玉となっていたのが、世界的に無線免許が不要な5GHz帯を有効活用するための通信技術。広いカバレッジを持つ既存のLTE周波数帯と免許不要な5GHz帯を合わせて使用し、高速化しようというもので、LTEとWi-Fiのリンクアグリゲーションとあわせ、5GHz帯をLTE化してキャリアアグリゲーションを行う「LTE-U」のデモを、サンディエゴのQualcomm本社の実験環境を使って紹介していた。
LTE-Uは、「Licensed Assisted Access using LTE」とも呼ばれる技術で、無線免許がいらない5GHz帯をLTE化して、既存のLTEとのキャリアアグリゲーションによって高速化を図るもの。デモではQualcomm本社に作られた接続環境を切り替えて、その様子をストリーミング表示し、LTE-Uによって電波がどのくらい有効に活用できるかを紹介していた。
まず、複数の事業者のLTEピコセルやお店などのWi-Fiが集中する、電波的に混み合った環境を作り出し、LTEとWi-FiのリンクアグリゲーションをLTE-Uに置き換えるとどうなるかを、ディスプレイ上の図で表示。Qualcomm本社のストリーミングデータを参照しながら、スループットが向上する様子や、Wi-Fiの混雑が緩和することで干渉が少なくなり、Wi-Fiスポット自体のスループットも向上する様子を確認できた。
Qualcommによれば、LTEとWi-Fiのリンクアグリゲーションは韓国のモバイル通信事業者KTが近日導入予定。またLTE-Uも米ベライゾンやT-モバイルをはじめ、世界中で商用化に向けた動きが活発化している。LTE-Advancedに向け、増大するトラフィックの解決策のひとつとして、免許不要の5GHz帯がキーになりそうだ。
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