“ストライクゾーンど真ん中の直球勝負スマホ”こと「VAIO Phone」 結果はヒットかホームランか、それとも……日本通信×VAIOの第1弾

» 2015年03月12日 23時44分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 日本通信とVAIOは3月12日、VAIOブランドのAndroidスマートフォン「VAIO Phone VA-10J」を発表した。3月13日から購入申込みを受け付け、3月20日に出荷を開始する。

photo 「VAIO Phone VA-10J」
photo 日本通信の三田社長(写真=左)とVAIOの関取社長(写真=右)
photo VAIO 執行役員の花里氏(写真=左)と日本通信副社長の福田氏

 端末価格は一括購入が5万1000円(税別、以下同)で、これは端末本体(4万8000円)と通信サービスの初期手数料(3000円)がパッケージされたもの。購入後に加入できる通信プランは2種類あり、月額料金は完全従量制の音声通話と月1Gバイトのデータ通信を利用できる「ライトプラン」が980円、同様の音声通話と通信量の上限がない「高速定額プラン」を1980円で提供する。

photo 一括価格は5万1000円(税別)。これには専用プランの初期手数料が含まれている
photo 料金プランは、月間1Gバイトまで利用できる「ライトプラン」(月980円)と、高速データ通信が定額利用できる「高速定額プラン」(月1980円)の2つ。端末代を分割払いにすると2000円をプラスした金額になる

 端末は24回の分割払い(月2000円)も可能で、その場合は通信量込みの料金がライトプランで1980円、高速定額プランなら2980円になる。なお端末はSIMロックフリーだが、専用SIMはVAIO Phone以外のスマホでは利用できない。

 販売は日本通信のオンラインストア「b-Market」のほか、イオンモバイルからも“イオンスマホ第5弾”として発売される。今後も他のECサイトや家電量販店の店頭など、販売経路が増える可能性もあるという。

 日本通信とVAIOは2014年12月に協業を発表し、VAIOスマホの投入を予告していた。1月30日に行われた日本通信の決算会見ではVAIOロゴが入った“箱のみ”を披露して期待をあおっていたが、晴れてその“中身”が明らかになった。注目なのはVAIO Phoneの製造元は日本通信であり、ハードウェアのサポートなども同社が運営する専用窓口で行う点。VAIOはデザインや仕上げの監修を中心に関わったという。

 製品発表会に出席した日本通信の三田聖二社長は、「VAIO Phoneは協業から生まれた初の製品で、格安スマホではなく“プレミアムな”スマートフォンだ。グローバルなスマホ市場ではiPhoneが有名だが、それに対抗できるブランドがVAIO。そのVAIOと一緒に、約半年という短い期間で、キャリアもやったことがないVAIO Phoneを開発できた」と成果を強調した。

 VAIOの関取高行社長は、「これからのモバイルデバイスは通信サービスと組み合わせるのが自明であり、そのためにパートナーと組むのも当然のこと。日本通信とのつながりはソニー時代に発表した『VAIO type P』までさかのぼる。当時のワイヤレスWANモデルに日本通信のSIMを供給してもらうことで、モビリティに優れた製品にトライできた。今回改めて、デバイスと通信を組み合わせたVAIO Phoneの提案があり、議論をスタートさせた」と経緯を説明した。

 現時点で“VAIO”の商標権はソニーにあるため、「もちろん事前に相談し、お互い『新たな挑戦をしようよ』と、快く許諾して頂いた」(関取社長)という。またXperiaシリーズを展開するソニーとの競合については、「ガチで戦うつもりはない。Xperiaは大手キャリア向けで、MVNO向けとは競合しない」(同)という考えを示した。

 三田社長がVAIO Phoneは半年で実現したと語ったように、その開発スピードはかなり速かったようだ。関取社長は「『ハードと通信であらたな価値を提供できるのではないのか』と考えていたが、正直、VAIOはまだ始まったばかりの会社。リソースも通信の技術も限定的で、今回はデザインと一部のエンジニアリングを提供させていただいた」と振り返る。

 その内容について同社執行役員の花里隆志氏は「VAIOには、高密度実装技術、放熱設計技術、そしてデザイン力という3つのコアがある。今回は主にデザインで協力させてもらった」と話す。開発期間の問題もあり、「ベースのシャーシ」(花里氏)となるAndroid端末に、VAIOならではのデザインを施したという。

photo VAIOはデザインとエンジニアリングの一部を提供

 デザインはあらゆるシーンで使えることを想定したもので、ボディカラーはビジネス用途にもフィットする黒を基調とし、背面には光沢のあるガラスパネルを採用。側面はマット仕上げで背面とのコントラストを協調し、手触りの良いソフト塗装で仕上げた。「使い心地の良さに加え、多機能よりも本質の機能を重視した、ミニマルなデザインがコンセプト」(花里氏)

photophoto 背面にも光沢のあるガラスパネルを採用(写真=左)。側面は手触りの良いソフト塗装でマットに仕上げ、コントラストを生かしている(写真=右)。ちなみにボディカラーはブラックの1色のみ

 日本通信との関係について関取社長は、「VAIO Phoneの事業主は日本通信だが、一緒にやってきたことに違いはない。PCからモバイル、その先のIoTと、デバイスと通信をつなげていき、VAIOもハードだけではない付加価値を提供していきたい。そのためにパートナーとの取り組みが必要だ」と、継続的なパートナーシップであることを示唆した。

photo VAIOが“究極の道具”とうたう「VAIO Z」

 日本通信の福田尚久副社長はVAIO Phoneのポジションを、大手キャリアが販売する“高くて買えない”高価格モデルや、他社のMVNOが販売する“消極的に選ぶ”低価格なスマホとは異なる、「ストライクゾーンど真ん中の、直球勝負のスマホ」(福田氏)と位置付ける。

photo VAIO Phoneは「ストライクゾーンど真ん中の、直球勝負のスマホ」(福田氏)

 日本通信といえば国内MVNOの草分けであり、通信速度が100Kbpsで月額980円の「イオンSIM」や、イオンSIMとGoogleの「Nexus 4」を月額2980円でセット販売するなど、いわゆる格安SIMや格安スマホを広めてきた会社だ。そして5月には、同社が長年実現を訴え続けてきたSIMロック解除の義務化もスタートする。

 福田氏は同社の取り組みを振り返りながら、「SIMロック解除やMVNOという言葉が総務省の文書に出てきたのは2000年のこと。IMT-2000(3G通信規格)を議論するなかでM2Mの活用などと一緒に出てきた。それから15年たってMVNOの数は数え切れないほど増え、SIMロック解除の義務化も始まる。これらがなぜ重要なのか、それは周波数という限られた資源を限られた大手キャリアが持ち、端末を持ち、販売網も押さえている。これでは多くの事業者が市場に参入して盛り上げていくことはできない。もちろんユーザーにもメリットはある。MVNOが普及して料金は大手キャリアの3分の1になった」と、垂直統合から水平分業への転換を訴えた。

 同社はMVNOによって独自のSIMを販売し、イオンやAmazon.co.jp、家電量販店などに販売チャンネルを拡大。そして端末の調達も行ってきた。今回のVAIO Phoneでは端末ラインアップの強化を担う。またハードだけでなく各種サービスと組み合わせたソリューションが重要になるとし、移動通信でありながら東京03の電話番号が利用できる「03スマホ」や、固定通信と移動通信で同じ番号が使えるFMCサービスの提供も明言。また業務用アプリをプリセットした法人向けスマホやセキュアスマホ、ヘルスケア用スマホなど、新領域への展開も視野に入っている。

photo 法人向けやヘルスケア業界向けなど、BtoBやBtoBtoCへの展開も視野に

 さらに福田氏は、「VAIO PhoneはVAIOと日本通信が新たな世界を切り開いていこうとする第1弾の製品。大手3社にモバイルの未来をゆだねるのではなく、また新しいパートナーも招き入れたい。モバイルの未来を全員参加で切り開いていきたい」と、MVNO市場のさらなる活性化にも期待する。

 発表会では、よりVAIOらしいデザインを期待する声や、端末価格とスペックのコストパフォーマンスが悪いのではないかという指摘もあった。これに対して三田社長は、「PCやスマホはコモディティ化していてデザインは似てくる。また画面を大きくしたり、機能を追加してもユーザーは満足しない。ハードだけで評価を得るするのは難しく、高機能・高性能だけを狙うとコストが高くなる。ユーザーが求めているのはソリューションであり、それがハードと組み合わされて付加価値になる。ハードだけでは満足できないユーザーに、通信やアプリ・サービスを最適化して、(VAIO Phoneならではの)ソリューションとしたい」と答えた。

photo “格安スマホ”を世に広めたイオンでの「Nexus 4」販売。それと同じ月額料金ながら、端末スペックと通信サービスが向上しており「かなり安くなっている」という

 また福田氏も、「Nexus 4とイオンSIMのセットも月額2980円で販売した。VAIO Phoneはスペックも上がり、通信サービスも充実させて同じ月額2980円で提供している。トータルコストはかなり安くなっている」と説明した。

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