VAIOと日本通信が「VAIO Phone」を正式に発表 ━━2社の幹部がメディアからの素朴な疑問に答える石川温のスマホ業界新聞(2/2 ページ)

» 2015年03月20日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」
前のページへ 1|2       

━━ なぜVAIOに話をもっていったのか。ほかにも実績にあるスマホメーカーはあると思うが。

福田氏 ストレートな言い方で言えば、この4年、話を持って行っていないメーカーはないと思う。実際、この4年で、なんとか事業本部長みたいな方々と「やろう」と握手して別れたというのは何度もある。ただ、結局のところ、最後の最後で、ある力が働いて動かない。それをずっと繰り返してきた。だから、SIMをやりました、販売を広げました、さてメーカーさんとなったときに、「やろう」とその部隊の方々は盛り上がるが、会社としては踏み込めないということを繰り返されてきた。

 そのなかで、昔から提携して、その当時からいろんなことをやっていたVAIOがいた。VAIOも、ソニーから独立して、いろんなことがあった。そこは独立した会社として、ソニーさんにもご説明しながらやっていこうと。我々は百数十人、VAIOさんも240人ほどという会社同士で、こういったことができるんだと。お話を持って行っていない日本メーカーは存在しない。

(★ 国内市場が厳しい中、メーカーがリスクを負うのを嫌がったのかも知れない。日本通信や事業者が在庫リスクや販路を開拓してくれるなら、メーカーとしては協力する、という流れなのかも)

━━ VAIOとしては、1台売れたらライセンス料が入ってくると言うビジネスモデルなのか。

花里氏 契約の中身ははっきりと申し上げられない。

福田氏 一緒に成功していけば両社の収益になる形だが、中身については差し控えたい。

━━ あまり、VAIOはコミットしていないような印象があるが。

花里氏 そんなことはない。このビジネスはひとつのきっかけでもありますし、今回、できることがノウハウも含めてなかった。とにかく我々が得意なところしかできることがなかった。コミットしていないのではなく、得意なところだけパワーを集中させた、というのが正確なところ。販売は任せることになるが、まずはとっかかりと思って欲しい。

福田氏 第一弾は何が重要なのかという、やることをリストアップしてどっちがやるか検討してきた。

 たとえば具体的な話で言えば、電話サポートセンターをどうするのか、というところも、うちはやっているので、VAIO Phoneコールセンターとして、専用窓口を設けることにした。私どもが責任をもってやらせていただきます。協業というのはそういうものだと思う。従来のやり方で線を引くのではなく、必要なことを洗い出して、お互いにやることをやろうというものではないか。結果としてこういうものができます。これを進化させていきたいので、次をどうしようかというのは議論している。それはいまとは違うかたちの組み方になっていくと思う。

(★ このような協業のやり方だと、VAIO側にノウハウが蓄積されないような気がする。販売やサポートなどもやらないとユーザーの声は入ってこない)

━━ メーカーとして、VAIOが端末を製造する可能性は。

花里氏 あるかも知れませんね。

━━ 海外に売っていくつもりはあるのか。

花里氏 将来は何ともいえない。今回はあくまで日本通信との協業によるもので、日本国内というかたちになる。

━━ VAIO Phoneブランドは日本通信の独占契約なのか。

花里氏 エクスクルーシブではない。(今後、他社から出る)可能性もある。組むパートナーもいろんな可能性がある。最初から福田さんとは話し合ってきたが、まず始めようと。パートナーを広げていこうという話もしているので、ここ限った話ではないとご理解いただきたい。

━━ そもそも、なぜAndroidなのか。VAIOといえば、Windows Phoneのほうが良かったのではないか。

花里氏 Windows Phoneには非常に興味がある。我々としても、いろんな可能性を探っている。今回はスピード感を重視して、こなれているAndoridを採用した。Windows Phoneには非常に興味がある。

福田氏 私どももたいへん興味を持っている。

━━ コンシューマーで購入するユーザーはどういうイメージなのか。

花里氏 ターゲットカスタマーは広いです。ターゲットはしぼめてないですね。もちろん、そういったユーザーに買ってもらえるとありがたいですし、ビジネスのお客様、ソリューションを含めた買い方も想定すると、広い層にアプローチできるかなと。

(★ ターゲットユーザーを設定していない商品は厳しいのではないか。VAIOのノートパソコンだって、万人向けには開発しないはず)

━━ 法人となると、タブレットに興味を持つユーザーも多いと思うが。

花里氏 様々なデバイスの可能性は探っている。スマートフォンに限らず、タブレットにも興味ありますし、そのなかでもWindowsタブレットもいろいろと検討は進めている。

━━ OSのアップデートも日本通信が行うのか。

福田氏 そうですね。これに関しては、製造元が日本通信なので、OSのアップデート、ファームウェアのアップデートは私どもで行う。

━━ 日本通信がかなり手を動かしているが、それでもVAIOのスキンを被ると言うことは大きかったのか。

福田氏 手を動かしたという点では両社ともに苦労している。現場ではお互い知らないもの同士が一緒になっているわけですから。ただ、エンジニアリングのチームを見ても、どっちがどっちの会社の人かわからないほど、やってきた。説明上、製造元・日本通信、デザイン監修・VAIOになっているが、そんな単純なものではなくて、ひとつひとつのアイテムで、どこをどうするのか、というのを決めてきている。新しい協業のスタイル。

━━ 付加価値として提供するサービスは、日本通信のなかでもVAIO Phoneだけに提供されるのか。

福田氏 そうですね。まずは、中にいろいろな仕掛けをしているので、そういったもののサービスを提供を考えている。

(★ 端末とサービス、キャリアが一体化している構図ということですな)

━━ いつごろから提供するのか。

福田氏 法人向けでは4月ころから始める。3月中には納品するところも出て来ている。そういった意味では先行的には進めている。製品自体はお見せするわけにはいかないので、違う製品で動かしていたものを、VAIO Phoneで動かしていく。

━━ コンシューマー向けのイメージだといつぐらいになるのか。

福田氏 4月中ぐらいではないか。法人関係でもFMCフォンのニーズは高い。私ども会社もそうなっているのですが、名刺にある電話番号にかけていただくと、スマートフォンで着信できる。私が大阪出張中でも、あたかもオフィスにいるように電話に応対できる。

 このあたりのニーズが非常に高い。タブレットへのニーズも確かにあるが、まずは電話についての不便なところがある。そのあたりのFMCフォンとして訴求するが、その時には業務アプリがついてくる。内線電話として使いたい。業務アプリを使いたいと言うときに、企業のシステム管理者が対応できるように搭載している。そういった商談を進めている。

━━ VAIOは「究極のPC」を出したばかり。VAIOファンとしては「究極のスマホ」を求めているのではないか。そこに対して応えていく方向性はないのか。

花里氏 スマートフォンで究極がどういったものなのか、それが可能なのか。それが本当に必要なのか。

 我々が究極のPCと言っているのは、PCでなければできないことがいっぱいあると思っている。そういうものが、もしスマートフォンであるのであれば、当然考えるべき。そうではないのであれば、もっとトータルのパッケージで商品性を、ハードウェアだけでなく、高めていくことが重要だと考えている。

(★ VAIOというブランドを「究極」でくくらないことにはユーザーには何も伝わらないのではないか)

━━ VAIOのロゴ部分にガムテープを貼って、「5万1000円です」といっても買ってもらえると思うか。

花里氏 そこはどうでしょうかね。

福田氏 それは買われないんじゃないですか。それはブランドは重要な価値だと思うし、安心感やいろいろなものを含んでいる。これはデザインとしてミニマルなところに徹しており、そういったものが自分にフィットするユーザーたくさんいるだろう。それが単にスマートフォンとしてのハードでの選択肢ではない、やり方を我々は模索している。各社のご提案が始まってくると、もう少し中身が出てくると思う。

(★ VAIOとしてのデザインにはなっていないと認めてしまったようなもの。VAIOはハードの品質で攻める会社ではないのか)

━━ 接続料の改定時期に来ているが、改定によってMVNO市場に与える影響は。

福田氏 改定は予見できる状態になってきているので、それ自体が与える影響というよりか、次のフォーカスは事業法改正、それが成立しているわけではないので、あのあたりところから、我々がHLRやHSSの接続や音声接続をお願いしていますので、ああいったものが切り拓かれるかどうか、そういうところがキーになってきていますね。

 接続料がどうこうという時代ではないかな。

━━ 協議状況はいかがですか。

福田氏 進めてはいる。しかし、こういったものは行政、総務省の役割が大きい。実際、今回はかなり盛り込まれているようなので、そのあたりは期待している。

━━ KDDIやソフトバンクへの接続状況はどうか。

福田氏 KDDIに関してはLTEだけになってしまう。それでいくかは課題が残っている。我々がベライゾンで展開しているATM向けサービスはLTEのみになっているので、そろそろ使える環境になっている。ソフトバンクは値段が高すぎるので、あれで使う人がいるんですか、というのが正直なところ。

取材を終えて

 今回は言いたいことがたくさんある。ということで、今週のメルマガ「VAIO Phone大特集」として、第2特集でVAIO、第3特集で日本通信の問題点に言及します。

前のページへ 1|2       

© DWANGO Co., Ltd.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年