―― ウェアラブル端末のデザインはいかがでしょう。Xperiaではデザインの明確なコンセプトがありますが、SmartWatchやSmartBandなどでは、一貫したコンセプトはあるのでしょうか。
田嶋氏 ウェアラブルの領域は、ソニーグループのデザインチームが主導になり、共通したデザインコンセプトと、用途や場所によって特化させるものを組み合わせてデザインしています。できるだけ、ひと目でソニーだと分かるものを原型にしたいとは思っています。一方で、コアコンセプトを採用している理由は、いろいろなウェアスタイル=デザインを提供したいからです。そこに対しては、中と外のデザインでコラボしてきています。
―― SmartWatchでは主にシリコンを採用していますが、素材についてはいかがでしょう。
田嶋氏 時計のメーカーさんと話すと、軽さや柔らかさなど、バンドの気持ちよさのノウハウが本当に深いんですよね。家電メーカーが一朝一夕では到達できないほどです。そういった話をうかがうと、ソニー自らがやることはない。今の時計バンドのノウハウを生かせるようにしたいです。
―― 外部のデザイナーと協力していく。
田嶋氏 という可能性はあります。お話はしているので。
―― サードパーティのバンドも展開されています。
田嶋氏 増えてきていますね。バンドは当初から10社以上に協力いただいて、そこのビジネスの広がりも大きいなと。
―― 他社製のバンドは、ソニーさんが事前にチェックしているのですか?
田嶋氏 実は「made for Xperia」というプログラムがあるのですが、そこでチェックというよりはテストをしています。例えば金属でアンテナ機能が落ちるなどの機能的な問題があるかどうか、といった点です。
―― デザインが奇抜すぎて不採用になることも?
田嶋氏 それはないですね。公序良俗や法律に反さない限りは。
―― Lifelogアプリの広がりも期待されます。
田嶋氏 期待していますね。僕らスマホをやっているので、どうしても規模感が最低でも100万台や1000万台という数字になってしまうけど、ウェアラブルの世界でその感覚でやってしまうとダメ。小さいユースケースを拾っていかないといけません。
―― チリツモ、ですね。
田嶋氏 チリを積もらせる必要があるかは分かりませんが、チリできちんと回るようなビジネスにしないといけません。アクセサリーメーカーの方々は、本当にそういうノウハウを持ってらして、単位は全然違うけれど、ちゃんとビジネスになっている。多品種少量で効率よく、しかもエンドユーザーの嗜好(しこう)に合わせてどんどん変えていく。多品種をあれだけ高回転でビジネスを回しているファストファッションの業界はすごい。ああいうところとスマートフォンを組み合わせられるかどうかも課題ですけど。
―― Xperiaにカメラやオーディオの技術を投入しているように、ソニーが持つコンテンツや技術などの資産を、ウェアラブルの世界へも生かしていくのでしょうか。
田嶋氏 そうですね。電池とカメラはキーデバイスです。これは確実に使っていきます。デバイスのミニチュアライゼーション(小型化)というのはソニーのDNAでもあります。コンテンツに関しては、いろいろな面白い仕掛けができそうな気がしています。例えば、ソニーミュージックのアーティストのライブ来場者にバンド(SmartBand)を配って、振動だけでコミュニケーションをさせるとか。コンサート中にここに何かブルッと来たり、ビートが鳴ったりとか……。そこを呼び水にしていきたいですね。
ターゲットを絞った多種多様な製品を出すことでユーザー層を広げ、ユースケースを提案していく。そのハブとなるのがスマートフォンのアプリであり、アプリ開発者の支援も積極的に行っていく。デザインもソニーだけでなく、外部とコラボしていく――というのがソニー/ソニーモバイルの考えだ。ウェアラブルの市場はこれからさらに伸びていくと言われているが、いかにユーザーが「使いたい」と思える利用シーンと、「装着したい」と思わせるデザインを提案できるか、そしてバッテリーや通信面の技術革新ができるかが、鍵を握っている。ソニー/ソニーモバイルのかじ取りに注目したい。
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