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» 2015年06月02日 06時00分 UPDATE

Meet Recruit:スタートアップ都市として成長を続けるベルリンその理由とは

ここ数年、ベルリンはかつてのネガティブなイメージを払拭する活発な動きを見せており、欧州の主要なスタートアップハブとして注目を集めている。今回は、そんなベルリンのスタートアップシーンについてご紹介したい。

[文・写真:佐藤ゆき,Meet Recruit]
Meet Ricruit

 ベルリンという都市の名前を聞いたときに、冷戦やベルリンの壁崩壊など激動の歴史を歩んできた街というイメージを抱く人も多いかもしれない。第二次世界大戦による壊滅的なダメージ、冷戦時代の東西分断など、歴史による大きな打撃を受けてきた都市ベルリン。

 だが、ここ数年はそのイメージを払拭するかのように活発な動きを見せており、インターナショナルでクリエイティブな人々を惹き付け、欧州の主要なスタートアップハブとして注目を集めている。リクルートも、技術力のある多くのスタートアップ企業が集積していることからベルリンには注目しており、この地におけるR&Dや出資を行っている。

 今回は、そんなベルリンのスタートアップシーンについてご紹介したい。

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物価の安さ、クリエイティビティ、国際性 がそろった街

 ベルリンでスタートアップが生まれている大きな要因の一つとして、まず物価の安さが挙げられる。ロンドンやパリなど、他の主要な欧州の都市と比較して家賃や生活費を抑えられるベルリンは、スタートアップを立ち上げる場所として魅力的だ。また、優秀な開発者の多い東欧へのアクセスが良いこともあって、人材が高騰しているシリコンバレー、サンフランシスコよりも圧倒的に開発費用を抑えられるというメリットがある。

 二つ目の特徴は、ベルリンという都市の持つ「クリエイティビティ」だ。元々ベルリンは1960年代から70年代にかけて、空き家となった建物を占拠して自ら生活環境を手作りしコミュニティをつくり上げるスクワット運動が盛んだったという歴史をもつ。また、ベルリンの壁が崩壊したあと、安定的な仕事を求める人の多くがミュンヘンやハンブルグなどドイツの経済都市に流れベルリンの人口は減少するが、そんなベルリンに逆に入って来たのは「空いたスペースでなにか創作をしたい」、「表現をしたい」というアーティストなどクリエイティブなマインドをもつ人々だった。安定的な職を提供してくれる大企業が少ないベルリンに、敢えて来ようという人は、この街が元々持っている遊び心やクリエイティブな雰囲気に惹かれて来る場合が多い。

 アーティストやクリエイティブな仕事に関わるフリーランサーを惹き付けてきたこうした歴史は、スタートアップのプロダクト開発にもプラスに働く結果となった。たとえば、ベルリンのスタートアップ出身企業として有名なSoundcloudも音楽シーンが盛んであるという点を魅力に感じて、ベルリンに拠点を構えたという経緯がある。(毎日のように開催されるローカルなミートアップは、ほとんどが英語で行われる)

 そして、もう一つの大きな特徴は国際性だ。物価の安さやアーティストに魅力的な環境は、ドイツ国外からも人材を惹き付け、ベルリンは国際的な都市へと成長した。スタートアップのイベントやミートアップ、アクセラレータプログラムはほとんどが英語で開催され、スタートアップのオフィスの公用語も英語である場合が多い。言語面での便利さだけでなく、多様な文化が混じり合っている環境は、グローバルなプロダクトをローンチさせるのに大きなプラスとなっている。

親密でお互いの顔が見えるスタートアップコミュニティ

 シリコンバレー、サンフランシスコを中心とする米西海岸のスタートアップコミュニティとの違いとしてよく耳にするのは、コミュニティの親密さだ。米西海岸と比較すれば小さなコミュニティであるベルリンは、お互いの顔が見える親密なコミュニティを築いている。

 コミュニティづくりの良いきっかけとなるのは、イベントやカジュアルなミートアップなどだが、毎日のようにベルリンではスタートアップ関連のイベント、ミートアップが開催されている。その数は、数年前と比べても大きく伸びている。

 ドイツの大手メディア企業 Axel Springer が出資しているhy!は、ベルリンを中心に起業家やスタートアップの関連者をつなげるイベントを定期的に開催しており、アイデア段階の起業家と既にある程度ビジネスを成長させた起業家、そして投資家などをつなぐプラットフォームとして重要な役割を担っている。

 そのほか、ドイツのスタートアップシーンをカバーしているオンラインメディア Grunderszene、VentureVillage を運営しているVertical Media が年に一度開催しているHeurekaやクラウドファンディングで実現させた夏のアート・テックイベントTech Open Airもベルリンを代表するテックイベントの一つだ。(下記写真は、毎年夏に屋外も利用して開催される Tech Open Air。盛況するピッチコンテスト)

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 こうしたスタートアップ関連のイベントやミートアップなどを通じて出会った人同士で互いに情報を共有し合ったり、人を紹介し合ったりという文化が根付いており、その点がまたコミュニティを成長させていく原動力となっている。

ついに Techstars もベルリンでプログラムをスタート

 物価の安さ、国際性、クリエイティブな人材、そして強力なコミュニティの力が合わさって、ベルリンのスタートアップコミュニティは成長を続けている。そして、スタートアップハブとしてのベルリンという街の魅力は外からの注目も集まりつつある。

 これまで、ベルリンはスタートアップを立ち上げるのには良い場所だが、米西海岸と比べると投資家やVCの数が少ないため、資金調達をするのが難しいと言われていた。だが、欧州内で2013年から2014年9月までにVCから資金調達をしたスタートアップの数を見ると、ロンドンの187社に次いでベルリンは145社で2位、と大きな存在感を示している。また資金調達元の国もドイツ以外の国の比率が高まっており、より外からの関心が大きくなっている傾向が見られる(参照:Die Welt)。

 また、最近では米国の老舗アクセラレータTechstarsが今年の夏にベルリンでもプログラムをスタートするというニュースが話題を集めた。Techstarsがベルリンをプログラム開催都市に選んだ理由としては、ロンドンと同レベルでベルリンでも1000万ドル規模の大型調達が増えていること、またインターネット業界の起業家がエグジット後にエンジェル投資家として投資をするケースが多く、質の高いシードラウンドの調達が増えているといった理由を挙げている。こうした動きに合わせて、今後さらにベルリンのスタートアップシーンは活気づくことが予想される。

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