KDDI、第31期株主総会を開催 第32期は「3M戦略」と「グローバル戦略」をさらに“深化”au WALLETは1200万契約突破(2/2 ページ)

» 2015年06月18日 06時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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第32期は3M戦略とグローバル戦略の“深化”を重点に

 中期計画の最終年度となる第32期(2015年度)は、KDDIが従来から掲げる「3M戦略」と、海外事業など「グローバル戦略」をより掘り下げて推進する方針が示された。

 3M戦略においては、複数のデバイス利用を推進する「マルチデバイス」と、コンテンツ・アプリケーションをさまざまなデバイスで活用する「マルチユース」の2つを特に重視する。

 マルチデバイス戦略では、スマートフォンの普及のより一層の促進、タブレットの利用方法を広げる提案、スマホのプラットフォームを利用したフィーチャーフォンの提供を行い、幅広い端末を便利で快適に使えるように取り組む。

 マルチユース戦略では、au WALLETや「auかんたん決済」といった決済基盤の強化と、コマース(物販)や金融分野の取り組みを強化し、「au経済圏」の拡大を進める。2015年夏に開始する、auショップを活用した物販サービス「au WALLET Market」や、2015年5月にライフネット生命と資本業務提携を締結したことは、その取り組みの現れとなる。au経済圏の拡大によって、au WALLETとauかんたん決済における決済金額を、2014年度比で倍増となる8500億円まで引き上げる計画だ。

 グローバル戦略では、ミャンマーでの共同事業と米国でのMVNO事業を推進し、「TELEHOUSE」ブランドで提供しているデータセンターの拡大をはじめとする法人向けグローバルICT事業に注力する。

photophoto 3M戦略では、マルチデバイス戦略(写真=左)とマルチユース戦略(写真=右)を重視
photophoto マルチユース戦略では、コマース事業(写真=左)と金融・決済事業(写真=右)に注力
photophoto グローバル戦略では、引き続きミャンマー事業に注力し(写真=左)、TELEHOUSEブランドのデータセンターを中心にグローバルICT事業も推進

 2015年度通期の営業利益は前年度比で約11%増の8200億円、株主配当は前年度比約1.15倍(株式分割考慮時)の65.00円を予定している。いずれも、中期経営計画で定められた「営業利益率2けた増」と「株式配当性向30%超」を満たしている。

photophoto 営業利益予想(写真=左)、株主配当予想(写真=右)ともに、中期経営計画どおり

質疑応答

 株主提案の議案の議決の前に行われた質疑応答では、株主からの活発に質問が寄せられた。本稿では、auのサービスに関係する質問とその回答の概要を記す。田中氏のほか、代表取締役執行役員副社長の両角寛文氏、代表取締役執行役員常専務の石川雄三氏、取締役執行役員常務の内田義昭氏が質問内容に応じて回答を担当した。

photophotophoto 質疑に答える両角氏(写真=左)、石川氏(写真=中)、内田氏(写真=右)

―― 携帯電話基地局への投資について質問したい。同業他社も含めて、基地局への投資がやや抑え気味と理解している。LTEの導入が一段落して、ある程度エリアや品質が一定水準に達したからだと思っているが、(KDDIの場合は)キャリアアグリゲーションやWiMAX 2+が全国の隅々まで行き渡っている状況とは言えないと思う。現在、KDDIは増収増益を続けているが、(中期計画の)「営業利益率2けた増」に固執しすぎて、設備投資がおろそかになっているのであれば、将来的に(KDDIの事業の)コア中のコアであるネットワークの品質に支障が出かねないと考えている。増収増益を続けている今だからこそ、他社の追随を許さないほどにネットワークを高水準に整備するための積極投資をするべきだと考えるが、いかがだろうか。

回答(内田氏) 昨今、トラフィックが都心部などの人口密集地に集中している。単に基地局に投資するだけではなく、電波の調整や、トラフィック増加に伴うネットワークへの適切な投資なども行う必要がある。ネットワークの状況と(基地局への)投資は、バランス良くやっていきたい。

回答(田中氏) 設備投資額が下がっている大きな理由は、LTEエリアがある程度完成したことにある。お客さま目線では、どちらかというと(通信の)品質のほうにプライオリティがある。基地局の新規建設には多額の費用がかかるが、(トラフィック対策のために)基地局の容量を増やすのは、新規建設と比較すると投資額は少ない。今後は、柔軟に対応していきたい。

―― 通信費の家計に対する負担が大きくなっている。なので、もっと明確に料金を示した方が良いと思う。家計の負担を最小にして、最大のサービスを提供してほしい。

回答(石川氏) 携帯電話サービスではスマートフォンとフィーチャーフォンで別々に料金体系があり、固定インターネットサービスもあり、一言で簡単に示すのは正直難しい。そこで、ホームページで料金を試算できるようにしている。また、auショップに行くと適切なアドバイスを受けられるようにしている。もっとシンプルにしていく努力も必要だが、現状では携帯電話と固定回線サービスで料金を割り引く「auスマートバリュー」と合わせて、より適切に案内できるようにしていきたい。

 サービス面に関しては、お客さまの生活により資するサービスとは何か常に考えている。「auスマートパス」や「ビデオパス」などは、その例だが、まだまだ十分とは思っていない。これからもひとりひとりのユーザーの声に耳を傾けて、より良いサービスを提供したい。

―― auのインターネット手続きが分かりにくい。改善計画はあるか。

回答(石川氏) インターネットと携帯電話を両方持つと、複数のID発行され、どの IDでログインしていいのか分からなくなる、ということかと思う。同様のお声はお客さまから頂戴しており、根本的な解決策として、2014年にIDの体系を改定したが、統合する作業が必要となる。ここをもっと分かりやすく説明するように鋭意取り組んでいきたい。

―― au WALLETは申込数が1000万件突破したそうだが、収支状況はどうか。

回答(両角氏) ビジネスモデルとしては、(加盟店が支払う)決済手数料で収益を得るようになっている。一方、コスト面では、カード発行や郵送で173億円発生している。確かに申込数は1000万件を突破したが、2014年度は赤字だ。2015年度以降は、カードの利用を促進し、決済手数料によって黒字化を図りたい。

―― 最近、SIMロック解除が義務化された。メインキャリア(MNO)としてどう対応していくか。

回答(田中氏) 総務省のガイドラインに従い、5月から新発売の機種でSIMロック解除に対応している。解除に応じるのは180日後なので、影響が出るのはまだ先だが、ネットワーク、サービスや品質で差別化したい。MVNOに流れるというのは予想できるが、当社の子会社として「KDDIバリューイネイブラー」を設立した。株主の心配を少しでも減らせるように努力したい。

―― 最近、音楽や動画のストリーミングサービスが多くなっている。データが途切れることがあることに懸念がある。改善できるか。

回答(内田氏) 4G LTEとWiMAX 2+を十分に活用して、品質を確保していく。また、2016年度以降、3.5GHz帯の電波を使えるようになるので、それも生かして改善していきたい。


 KDDIの株主総会は10時開始、11時54分に終了し、会社提案の議案は全て承認された。

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