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» 2015年07月13日 06時00分 UPDATE

Meet Recruit:介護業界に新風を!介護から未来をつくるメディア『HELPMAN JAPAN』

リクルートキャリアと人気漫画『ヘルプマン!』のコラボレーションから始まった『HELPMAN JAPAN』は、日本の介護ビジネスの未来を応援するプロジェクト。立ち上げから現在までの話を、グループマネージャーの永田隆太を聞いた。

[Meet Recruit]
Meet Ricruit
photo 写真:『HELPMAN JAPAN』より転載。入浴室用介護リフトの使用感についてディスカッションを行う様子

「これからの日本で生きていく、すべての人に関わる話」

 すでに超高齢社会を迎えた日本において、介護のニーズは確実に増えていく。それをネガティブな問題と捉えるか、チャンスと捉えるかは考え方次第だ。広い視点で捉えてみれば、この分野はイノベーションの可能性や日本が海外市場をリードする期待に満ちている。(株)リクルートキャリアと人気漫画『ヘルプマン!』のコラボレーションから始まった『HELPMAN JAPAN』は、そんな日本の介護ビジネスの未来を応援するプロジェクト。立ち上げから現在まで、同事業を推進するリクルートキャリアの『HELPMAN JAPAN』グループマネージャーの永田隆太に話を聞いた。

介護ビジネスに新風を送るメディアが始動

―― まず、『HELPMAN JAPAN』を立ち上げるに至った背景を教えてください。

永田隆太(以下・永田) はじめは『リクナビ』の中のコンテンツとして、今後成長が予想される介護業界のお客さんのリクナビ掲載社数を増やすために提案されたプロジェクトでした。しかし、リスト化された求人情報だけではアプローチが弱い。そこで、既に介護業界内で大きな話題となっていたマンガ『ヘルプマン!』(著・くさか里樹)とのコラボレーションをはかり、業界全体を盛り上げていく方向にシフトしたんです。それからは、社会に知られていないポジティブな介護業界の情報や、これまでにない新しい取り組みなどを発信しています。

―― メディアの方針は何でしょうか。

永田 大事にしている観点は「実態」をしっかりと出すことですね。介護業界というとネガティブなイメージが先行しがちですが、実は中の人々はイキイキと働いていることも多い。ダメな部分を補うというスタンスではなく、元々あるイイ部分を伝えることが重要だと思っています。

―― 具体的にはどのような事例を取り上げているのでしょうか?

永田 取材させていただいてきたのは、どんなかたちでも「突出している」人々でしょうか。音楽と介護、農業と介護などの異分野を結びつける活動をしている人や、今大きな注目が高まる介護ロボットのコーディネーターなど、新たな介護シーンを牽引するイノベーティブな事業や人を紹介しています。これまで介護とは縁が遠かった人にも興味をもってもらえるメディアを目指しています。また、今後の日本は高齢化が進み社会保障費は増大する一方で、段階的に介護業界も「Tax Eater」ではなく「Tax Payer」になっていくことが求められると思います。

photo 「恋する豚研究所」食堂の様子。(『HELPMAN JAPAN』より転載)
"介護"や"農業"という枠組みを軽々と超え"地域をケアする"という発想で人をつなぐ活動を行っている。

新規人材獲得だけではない。介護職が持続的に輝くためのプラットホーム作り

―― 2025年には30万人の介護職が不足するという予測データ(※注1)がありますが、現在の介護ビジネスにおける課題はどのようなものでしょうか?

永田 介護業界に携わる人々の声を聞いてみると、まず彼らが積極的な発信をする場がないという課題がありました。介護業界は劣悪な職場しかないという先入観によって、未経験者が近寄りがたくなっていること。また、人材採用においても経験者を求める事業者が多く、限られた人材の取り合いになり、人手不足の状態は解消しません。そうした背景から、メディアを通じて介護職の魅力や可能性を伝えるだけでなく、広く介護事業者や介護職をサポートしていく仕組みを作る必要があると感じるようになりました。

―― 介護職をサポートしていく仕組みとは、具体的に言うと?

永田 介護業界における人材確保の課題を整理すると、多様な新規人材を増やすこと、離職者を減らすこと、そして業務負担を減らし業務に必要な人員を減らすことの3点があると思います。そこで、2014年の4月に『HELPMAN JAPAN』が『リクナビ』から独立し、リクルートキャリアの直下事業になったことを皮切りに、まずは離職者を減らすための施策として、新入介護職員の定着を支援する研修プログラムをスタートしました。この研修の特徴は、狭いコミュニティの中で人間関係などに悩みバーストしてしまう介護職を、複数事業者が参加するオープンな場で、業界の同期を作ることでケアします。研修の講師には、介護職の若手リーダーを抜擢し、いわば「介護職による介護職のための」研修プログラムになっています。こういう形態を取ることで、事業者には1社あたりの人材育成コストの負担を軽くでき、介護職の若手リーダーへは、新たな雇用による収入の増加が実現できます。介護職がハッピーに働ける環境を作らなければ、これから深刻化する超高齢社会に対応できず、日本の未来はないと思うんです。

―― 介護事業者同士をつなぐ役割も兼ねているんですね。

永田 はい、そして「つなぐ」相手は介護職員だけにとどまりません。今後、ビジネスを規模化したり多角化していくためには、必ずマネジメントを行う人材が必要になってきます。一方、今までの介護業界では、介護しかやったことがない職員が仕方なく管理職に就いている状況や、管理職として十分な能力を持っていない状況も見られました。とはいえ、介護職だけが特殊な勤務形態にあるかと言えばそうではない。今後は他業種からも、介護の仕事に親和性のあるマネジメントに長けた人材を呼び込むことで、事業経営の改善を期待することができる。このように、業界の中核を担える人材を育てたり、呼び込んだりして多様性を図ることで介護業界がいい意味で成熟していくと思います。

 また、業務負担を減らす施策としては、腰痛を軽減するロボットスーツなどいろいろな製品が発表されています。こういったテクノロジーのイノベーションなども使いこなして、高齢者が「人生は生きていく価値がある」と思える生活を送れるよう支援していくプロフェッショナルが介護の仕事になっていくと思います。

介護分野はイノベーションの宝庫。異業種とのマッチングが鍵を握る

―― 今後の介護ビジネスは、異業種とのコラボレーションにも期待が高まりそうですね。

永田 この分野はまだまだ発展途上ですから、多くのイノベーションの可能性を秘めています。そこで今年2月には、異分野の人々との接点を生む場として、ITエンジニアやクリエイター、大手企業の新規事業開発担当者、介護事業者のマネジメント層などを招き、介護ビジネスのニーズに対してアイデアを開発していくアイデアソン「Open Innovation Session for Healthcare」を開催しました。これは介護業界に存在している課題を抽出し、業界横断のチームで課題解決に取り組むイベントで、介護業界外の人にも、介護業界での様々なビジネスチャンスがあることを知ってもらう場にもなりました。

―― これからの介護に向けたイノベーションには、どんなものが登場してくると思いますか?

永田 最近、サンフランシスコのベンチャー企業が開発した、便意を10分前に知らせてくれるアプリ「D Free」が話題になりました。肌の上から直腸の空隙率を超音波で検知して、排便のタイミングをスマホに通知してくれるウェアラブルデバイスなのですが、これは高齢者にも確実に需要がある。ほかにも、例えばグラス型のウェアラブルデバイスなどで、高齢者の顔をカメラで認識し、その情報からその人の症状や状態を判断して、その人に適した介護のアドバイスをグラス上で支援する技術なども実現可能なのではないかと思っています。こういう視点で見ると、介護サービスとウェアラブルデバイスをはじめとするIoT(インターネット・オブ・シングス)は相性がいいでしょう。柔軟な発想と行動力を持つ若者が、こうした確実にニーズがあって、圧倒的な勝者がいない領域に目を向けたら、大きなチャンスにつながると思います。介護というテーマをもっと気軽にいじってもらいたいですね。

介護への投資が、地域の未来とハピネスをつくる

―― 今後の介護ビジネスは地域活性化とも大きく関連してくると思いますが、地域の取り組みなどで興味深い事業があれば教えてください。

永田 面白いのは藤沢市と京都府です。まず藤沢市は、30代から40代くらいの若手の介護職たちが連携して、街全体で高齢者を支えていこうという取り組みを行っています。ここでは、介護度が重い高齢者もどんどん元気になって街に帰っていきますし、高齢者と子供の交流も自然に起こっています。介護をする人、される人という関係性ではなく、地域の人々が支え合うコミュニティの中心に介護職がいる。そんな社会ができ始めています。こうした取り組みが増えていけば、高齢化や人口減少が進む日本においても幸せに暮らせる地域社会を創っていけるのではないでしょうか。

 また、京都府では二極化していると言われている介護事業者に対して認証制度を導入しています。認証制度に参加するためには、指定の基準をクリアするまでは、府から派遣されるコンサルタントとともに自社の経営を改善することが徹底的に求められます。ここまで徹底している事例はなかなかありません。地域の福祉サービスの充実によって住民の愛着を一層高め、地域の魅力を生み出そうと考えているんです。高齢者やマイノリティに優しい街というイメージは、その地で暮らす人々の将来の不安を取り除き、街全体のハピネスを上げ、それが京都全体のブランディング向上にもつながります。

―― なるほど、介護への投資は、「街の未来」への投資になっているんですね。

永田 面白いことに、うまくいっている事例というのは誰も「介護事業者のために」がんばっていないんですよ。先行きの見えないものではなく、自分たちのため、または子どもたちの将来のため、地域のために投資をしている。誰しも自分の将来を考えたとき、介護は必ずやってくる問題です。今は関係ないと思っていても、実はみんなが不安を抱えている。こういうテーマに取り組むということは、間接的にそうした不安をケアしていくことにつながり、一見お金にならない価値のように見えても、実はめぐりめぐって大きな効果が生まれているのだと思います。

―― 最後に、今後の『HELPMAN JAPAN』の展望を教えてください。

永田 質の高い日本の介護サービスは、これから高齢化を迎える海外諸国への展開が可能です。そのとき、『HELPMAN JAPAN』のサイトが世界から注目される存在になっていたいですね。これまでお話ししたようなHELPMAN JAPANの取り組みの先には、介護業界全体の価値を高めながら 日本を超えて世界をよりよくしていくエコシステムが作り出せると思っています。

※注1・・・ 厚生労働省. "2025 年に向けた介護人材の確保 〜量と質の好循環の確立に向けて〜".

プロフィール

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永田 隆太(ながた りゅうた)

株式会社リクルートキャリア HELPMAN JAPANグループ マネジャー

1982年神奈川県生まれ、横浜育ち。早稲田大学院理工学研究科建設工学専攻卒業。2007年リクルートに新卒入社。

HR領域で編集企画、商品企画、営業推進、プロジェクトマネジャーなどを経て、2011年に介護業界の人材確保を支援するプロジェクトであるHELPMAN JAPANを立ち上げ現在に至る。

介護業界に深く関わって5年目。業界のスピードに驚きながら、業界の問題解決に向き合う。

好きな言葉は、「Keep it simple & stupid」


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