インタビュー
» 2015年09月24日 19時15分 UPDATE

日本先行でiOS版も登場――「360セキュリティ」のキーマンに聞く日本進出の狙い

ダウンロード数が多く、評価も高い無料セキュリティアプリ「360セキュリティ」。同アプリの日本本格進出にあたり、2人の“キーマン”に話を聞いた。

[井上翔,ITmedia]

 皆さんは「360セキュリティ」というAndroidアプリをご存知だろうか。全世界で2億人のユーザーにダウンロードされた実績を持つ(AppAnnie調べ)、無料の総合セキュリティアプリだ。

 無料ではあるものの、コンピューターウィルス・マルウェア(悪意を持ったアプリ)の監視・検出・駆除だけではなく、スマートフォン・タブレットを快適に使う上で便利な機能も搭載しており、Google Playでの評価平均が5点満点中4.6点と、評価が高い。

 海外では知名度の高い360セキュリティだが、日本ではこれから普及を図る、という段階だ。アプリの開発元である360モバイル・セキュリティは、2015年6月から普及に向けた活動を本格化し、同8月からはテレビCMの放映を開始している。2015年内には、世界に先駆けてiOS版を日本でリリースする予定もある。

 360セキュリティの日本市場本格進出にあたり、360モバイル・セキュリティのCOO(最高執行責任者)の黄炎(コウ・エン)氏と、バイスプレジデントの夏凡(カ・ハン)氏にインタビューする機会を得た。日本進出にあたり、両氏は何を語ったのか。

photo 360 セキュリティの黄氏(左)と夏氏(右)

―― 今日はよろしくお願いいたします。まず、「360モバイル・セキュリティ」とは、どのような企業なのか教えてください。

黄氏 製品としての「360セキュリティ」は、2013年6月に全世界に向けて発表されました。

 企業としての360モバイル・セキュリティは、中国企業である「奇虎360(Quihoo 360:チーフーさんろくまる)」の子会社として、香港に設立されました。奇虎360が中国国内の事業に集中しているのに対し、360モバイル・セキュリティは中国以外の海外市場に集中しています。

―― 日本での事業展開はいつごろから本格的に始めたのですか。

黄氏 実は、アプリ自体の日本語対応は、リリース当初(2013年6月)からできていたのです。戦略発表会とテレビCMの放映が、日本での正式なローンチ(立ち上げ)、ということになります。

photo 戦略を語る黄氏

―― 日本市場進出にあたり、事前に準備したことはありますか。

黄氏 まず、最重要かつ最優先課題として、日本のユーザーを理解することに努めました。ここ2年ほど、(日本のユーザーとの)メールのやりとりなどを通して、ユーザーのニーズを理解し、意見を求めてきました。(日本独自の取り組みである)ユーザーによる製品体験チーム(を企画したこと)も、よりユーザーに対する理解を深めるための取り組みです。

 また、ドコモやソフトバンクといった、日本の大手キャリアも訪問し、より踏み込んだコミュニケーションを図っています。

photo アプリの機能を説明する夏氏

―― 大手キャリアというと、自社で販売しているAndroid端末にセキュリティソフトを初期導入(プリインストール)していることも多いと思います。差別化はどう図っていくのでしょうか。

夏氏 多くのセキュリティアプリでは、アンチウィルス機能に焦点を絞っています。それに対し、弊社(の360セキュリティ)は、まず、ユーザー体験に自信があります。また、アンチウィルス以外にも「ブースト機能」(※1)、「クリーンアップ機能」(※2)、スマートフォンの捜索機能、アプリロックなど、ユーザーの生活のあらゆるところでスマートフォンを便利に使える機能を搭載していることも特徴です。

※1 アプリやハードウェアの稼働状況を分析し、アプリの自動実行を抑制することで、端末の動作速度を向上する機能
※2 端末内の不要ファイルを削除することで、ストレージの空きを増やす機能

―― 日本には、海外にはないAndroid端末が少なからずあります。メーカー、あるいは端末ごとの仕様の差異に対応するのは骨が折れるのではないでしょうか。

黄氏 先ほども(夏氏が)言ったように、我々は、ユーザー体験を大切にしています。現在は技術的制約もあり、1回のプログラミングだけで(メーカー、あるいは機種固有の)問題を解決することはできません。なので、ユーザーの使う端末やアプリの特徴や(使い方の)習慣を踏まえて、製品の改善を日々図っていくことが大切だと思っています。

―― 実際に使ってみると、動作がとても軽快です。言える範囲で、秘密を教えてください。

夏氏 弊社では、Android端末をほとんど全機種購入して、システムの検証を行っています。機種に応じて適切な動作をするように細かく調整することで、高速性を確保しています。

―― 日本向けにiOS用の360セキュリティを(2015年内に)先行リリースするという話があったと思いますが、現時点で公表できるiOS版の特徴はありますか。

夏氏 弊社が調べたところ、AndroidユーザーとiPhone(iOS)ユーザーのニーズが異なることが分かっています。

 これを踏まえてiOS版では、見せたくない写真を隠す「プライバシー」機能、画質に影響を与えない範囲で大きな写真をリサイズする機能、サイト閲覧時に悪意のある広告をブロックする機能を搭載することが決まっています。

―― 360セキュリティは、広告収入をもとにした完全無料のビジネスモデルが特徴ですが、どのように広告を表示するのでしょうか。

夏氏 ウィルススキャンなど、機能を使った後の結果画面に表示するようになっています。

photo 各種機能を利用した後の結果画面。別の機能への誘導と一緒に広告が表示されるが、タップエリアのデザインが違うので、広告であることが分かりやすくなっている

―― PCでも、360セキュリティのように広告表示によって無料で使えるセキュリティソフトがあります。そちらは、有料で非表示にするオプションも用意していますが、360セキュリティでは、広告非表示オプションを提供する予定はないのですか。

黄氏 あくまでも“無料”が弊社の基本的な考え方です。有料バージョンを提供する予定はありません。広告が好きでないユーザーに対しては、広告の表示方法や内容を改善することで対処していきたいと思っています。

―― これから、360セキュリティに追加したい機能はありますか。

黄氏 最近、360セキュリティに「ゲームブースト」(※)という機能を追加しました。これからは、ネットショッピング時のセキュリティスキャン機能、広告表示をよりユーザーの邪魔にならないようにする機能、より簡単に操作できるようにするためのユーザーインタフェースの改善などに取り組みたいです。

「ゲームブースト」は、バックグラウンド(画面に表示されずに)実行しているアプリを終了することで、ゲームアプリの実行パフォーマンスを改善する機能

―― 日本のスマートフォンユーザーにメッセージがあれば、ぜひどうぞ。

黄氏 ぜひ、360セキュリティを使って、貴重な意見を寄せていただきたい。製品体験チームにも、ぜひとも参加していただきたい。日本の皆さんの意見で、360セキュリティをより良いものにしてください。

―― ありがとうございました。


 360セキュリティは機能、インターフェース面でとても良く作られたアプリで、インタビュー内でも触れたとおり動作も高速だ。広告表示も、よくある“あからさま”なものではなく、だからといって見分けが全く付かない、というものでもない。

 筆者が「IFA 2015」の取材で出会った多くの海外メディア関係者のAndroid端末にも、360セキュリティのアイコンが表示されていたことは、アプリへの支持、あるいは信頼を裏付ける1つの証拠だろう。今後、日本のユーザーの支持をどれだけ集められるか、360セキュリティを使いつつ、注目したいと思う。

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