実は、HTCがSIMロックフリー端末を発売するのは、今回が初めてではない。2007年には、Windows Mobile 6を搭載した「HTC X7501」をSIMロックフリーで発売。2014年に発売したGoogleのHTC製タブレット「Nexus 9」もSIMロックフリーだ。
なので厳密に言うと、「SIMロックフリーのAndroidスマートフォンを日本で発売すること」が初となる。HTCはなぜ、2015年後半にSIMロックフリースマホ市場へ参入(再参入)することを決めたのか。
HTC 北アジア統括代表取締役のジャック・トン氏は「現在、世界のスマートフォン市場は大きな変化を遂げている。デザインの優れた、進んだ技術を、手に入れやすい価格で提供してほしいというニーズが高まっている」と話す。これは日本も同様で、2014年にSIMロックフリー市場に参入したHuaweiやASUSを筆頭に、2〜3万円台で購入できるSIMロックフリーのLTEスマートフォンが日本でも増加した。
こうしたSIMロックフリー市場が盛り上がる中で、HTCも2015年1月から調査を進め、玉野氏は「どれだけの需要があり、そこに参入して受け入れられるのかをずっと見ていた」と話す。2014年までに発売されたSIMロックフリー端末を見ながら「今までのスマートフォンと違うファッショナブルなデザインで、サービス性を訴求できる商品がまだ出ていない。また、来年(2015年)に向けてまだSIMロックフリー市場は伸びていく」と判断し、このタイミングでのリリースとなった。
玉野氏は「素材や色使いも含めたデザイン」をHTC Desire EYEとDesire 626の差別化ポイントに挙げる。
トン氏は、キャリアが投入する製品と差別化する意向を示す。「日本の通信キャリアは、季節ごとに新製品をローンチしているが、グローバルの流れは違うと思う。スマートフォンはコモディティ化(一般化)した商品として扱われているので、受け入れられるデザイン、スペック、求めやすい価格の競争が激化していくだろう。SIMロックフリー市場では、そこを埋められるような、いろいろなレンジのスマートフォンを提供したいと考えている」(同)
HTCはGoogleやQualcommとのパートナーシップも良好で、製品の品質管理にも余念がない。「HTCは、キャリア向けにハイエンドフラグシップを導入してきたが、その技術を、ミッドレンジや求めやすい価格帯のモデルにも反映できる」とトン氏は自信を見せる。もちろん今回の2機種で終わらず、今後も継続的にSIMロックフリー端末を日本で投入していく考えだ。
一方、HTCはここ数年、日本市場向けにカスタマイズした「HTC J」シリーズをKDDIへ供給しているが、玉野氏によると、通信キャリアへの端末供給をやめるわけではないとのこと。キャリア向けとSIMロックフリーの両輪で端末ビジネスを進めていく形となる。
HTCのスマートフォンといえば、フルメタルボディに高性能な機能を詰め込んだ「HTC One M8」「HTC One M9」などがフラッグシップ機として海外で販売されているが、こうしたモデルの日本展開はあり得るのだろうか。
玉野氏は「SIMロックフリー市場の動向を見つめながら検討したい」と明言を避けつつも、「コンシューマーがお金を払ってでもフラッグシップを購入いただく時代が早く来てほしい。市場が熟したら、グローバルでのフラッグシップをできるだけ早い時期に導入したい。熱いファンの方々から、M9は出ないのかという声もいただいている」と話す。HTCは毎年春にフラッグシップ機を発表する傾向にあるので、2016年には最先端のHTC端末が日本でも発売されるかもしれない。
HuaweiやASUSが海外のフラッグシップ機を日本でも投入しているだけに、端末ラインアップの拡充は大いに期待したいところだ。
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