ソフトバンクが「Nexus 6P」を“独占”販売、Y!mobileとの2ブランド戦略でAndroidを展開通信は実効速度を重視(4/4 ページ)

» 2015年10月13日 21時35分 公開
[房野麻子ITmedia]
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質疑応答の一問一答

 発表会後に宮内社長の囲み取材は行われなかったが、質疑応答は予定時間をオーバーして質問が出なくなるまで続けられた。記者との一問一答は以下の通りだ。

―― 「スマート病院会計」と「パーソナル身体サポート」は個人情報の重要な部分を取り扱うサービスだと思うが、個人情報の取り扱いについてどう考えているのか。

宮内社長 我々のデータセンターのセキュリティを強化すると同時に、できるだけデータが外部に出ないように工夫してやっていきたい。

 Watsonを使ったデータについて心配されているのかもしれないが、アメリカではデータは匿名にして、ガンの情報などがどんどん取り込まれて分析されている。それが医師のアドバイスに役立つような先進的な事例も出てきている。いろんなデータを提供すると、完全匿名になってトータルにデータ分析する。Watson内のビッグデータ分析には使うが、他社に情報提供は一切しない。

 スマート病院会計は支払い部分なので、例えばカルテのような細かい情報が入ってくることはない。

―― 前回の発表会で、宮内社長はケータイは不要と言い切っていたが、ガラホを投入した理由は。 また、PHSはやめるのか。

宮内社長 不要とまではいっていない。私は本質的には一億総スマホ時代が来ると、本音で思っている。

 私自身もスマホでライフスタイルが変わり、毎日エンジョイできるし3倍、4倍の仕事ができると心から感じ、体感している。私の80歳近い親からも、スマホに変えたときに感動の声をもらった。

 ただし、フィーチャーフォンの方がいいというユーザーがまだいる。ユニバーサルなサービスを提供する事業者として、スマホしか扱わないということはできない。スマホをどんどん使ってもらいたいという意味で、スマホアドバイザーをショップに置いたりもしている。今回は、非常に使いやすくしたフィーチャーフォンを提供するということ。

 PHSについては、各社(スマホでも)通話し放題の時代が来ている。今後もちゃんと使えるサービスは提供するが、できるだけ4Gや3Gのケータイに乗り換えていった方がいいのはないかと思っている。PHSの新機種はあまり出ないと思っていただいていい。

―― 9月にiPhoneが発売になり、春商戦に向かう時期にiPhoneのSIMロックを解除できるようになるが、影響はどう考えているか?

宮内社長 先進的な方でそうする人もいるかもしれないが、これまでのユーザーの行動を見てみると、iPhoneの買い替えサイクルはだいたい24カ月か少し短いくらい。

 半年たってSIMをアンロックして(キャリアを)変える人がどれくらいいるか予想がつかないが、多数ではないと思う。いろんなサービスを使って、慣れたところでチェンジするかは疑問。その意味でもいろんなサービスを提供したい。長く使ってもらいたいと思っている。

―― これまでNexus端末はY!mobileが扱ってきたというイメージがある。あえてNexus 5XはY!mobile、Nexus 6Pはソフトバンクで扱う理由は何か。また、この2機種のSIMロックはどうなっているのか。

宮内社長 ソフトバンクとY!mobileの2ブランド戦略はご存じの通り。Y!mobileはデータ定額も1Gバイトからあって、非常に安い料金からスタートできる。

 作戦として、Y!mobileはミッドレンジのハンドセットを中心に、ソフトバンクはどちらかというとハイエンドなスマホを中心としている。昔は「ソフトバンクはiPhoneの片翼飛行ではないか」という批判を受けていたが、オープンな時代になって、新しいAndroid 6.0 Marshmallowに対応したハイエンドのNexus 6Pを、ソフトバンクからも出したいと考えてGoogleさんと話をした。その中で、それなら独占的にやってもいいんじゃないかと合意したというのが経緯だ。

 SIMロックは、今回のNexus2機種にはかかっている。通常の端末と同じように、購入から6カ月以降にロック解除できる。

―― 冒頭でネットワークインフラの優位性を強調していたが、一方でNetflixなど大容量のトラフィックが発生するサービスを積極的に展開している。一般ユーザーもどんどんデータを使うようになって、3Gバイトから4Gバイトといわれている平均データ量が増えていくと思う。通話は定額制が増えているが、データ量が増えていくと値ごろ感が感じられにくくなっていくと思うが、データ料金面で何か工夫する余地はあるか。また、一般ユーザ―が爆発的にデータを使うようになっても、4Gの技術でトラフィックを受容できるか。

宮内社長 ネットワークのトラフィックは毎年どんどん上がっている。平均データ量はおっしゃるように4Gバイトくらいまできていると思う。ソフトバンクとしては、トラフィックをたくさん収容できるように小セル基地局をうまく活用する。1つの基地局に入る人数、それによって実効速度が変わる。新端末、新OS、動画サービスなどで、考えてる以上のトラフィック増になるが、それにネットワークを対応させていく。

 一方で、今注力しているソフトバンク光、光回線を家に入れてもらって、Wi-Fiで使うことを勧めていきたい。(光とセットの)スマート値引きなどは、単に競争政策上やっているのではく、トラフィック対策の意味もある。

 料金プランについて、一応、今の提供プランで満足して使ってもらっていると思っているが、将来、5年後、10後年、どんなプランがいいのか、いろいろ研究しなくてはいけないと思っている。

―― ソフトバンクは通信の最適化をかけていると聞く。通信速度の優位性を主張していたが、最適化がかかるとデータ量が本来と変わって、減ったりすることもある。他社はユーザーの希望に応じて最適化を有効/無効にできるが、ソフトバンクは無効にする方法がない。無効にできるような検討はしているか。

宮内社長 通信の最適化は、混雑している特定の時間帯、特定の場所で、大多数のユーザーに影響するような大容量の通信の影響を、最低限に抑えるために使っている。ユーザーごとにオン/オフするというより、どうしても混んでしまう場所、時間帯で行うという考え方に基づいている。そんなにひんぱんにやっているわけではなくて、本当に逼迫したときだけだ。逼迫すると何百、何千というユーザーに迷惑をかけてしまう。そのときに最適化をかけるだけで、常日頃からやっているわけではない。

―― 前回の発表会でSurface 3のLTE版が出て非常に驚き、iOS、Android、Windowsの3つのプラットフォームをバランスよくやっていくのだろうと思った。今日はGoogleのNexusが前面に出たが、Windowsデバイスの今後の見通しはどうなっているのか。

宮内社長 Surface 3は結構良い出だしだと思っている。Windows Phoneについては、まだ検討段階。ここでスタートするとかしないとか、お話できる段階ではない。いえるのは、我々の責務として、通信をまんべんなく提供するということがある。いろんな趣味嗜好に合わせて提供できるバラエティを作っていきたいと思っている。

―― 動画に強い端末や新しいサービスなどを発表し、データ量が増えてデータ通信料金も上がる流れに見える。キャリアが提供するリッチなデータ通信サービスをユーザーはそれほど望んでおらず、データ通信をしない/したくない人も多い中で、サービスを削ることでデータ料金を下げることはできないか、といった議論が総務省などで始まろうとしている。改めて社長の考えを知りたい。

宮内社長 今の内容は少し僕の理解と違うかもしれないが、確かに総務省や政府は、データ量の上限が500Mバイトや1Gバイトでいいという人もいるのに、それらに対するサービスがないということをいっていて、先日もそういったヒアリングがあった。

 我々はソフトバンクとY!mobileという2つのブランドがあり、1Gバイトでいいという人にはY!mobileの「スマホプランS」がある。これだと10分以内だったら何度でも電話ができて、なおかつ1Gバイトまでのデータ通信ができ、月額2980円という値段。データをいっぱい使って上限をオーバーしたユーザーには、簡単でスムースにデータ容量を増量できるサービスもやっている。

 たくさんのユーザーにきちんとセグメントされ、使っていただけるサービスを我々は念頭に置くべきだと思っている。PHSをやっていた時代から我々は「LCCだ」といってやっていた。飛行機に乗るときに航空会社に選択肢があるように、僕らもそういった対応をしていけばいいと思っている。

―― これまでのソフトバンクはiPhoneの片翼飛行という印象が強い。Nexus 6Pを扱うことを発表したが、どのくらいAndroidに力を入れていくのか。

宮内社長 全体の数字は分からないが、量販店の数字では、Y!mobileとソフトバンクを足したAndroidの新規契約のシェアは、もはや5割を超え、ときには6割を超す勢い。ソフトバンクはiPhoneというイメージで、今もAppleは非常に重要なパートナーであり、一生懸命拡大したいと思っている。

 以前、Y!mobileはまさにAndroidのスマホという位置付けでやってきた。それに加え、2015年の春くらいからGALAXY端末も扱い始め、ラインアップが増えてきた。(白戸家版ドロイド君の)シラトロイドというキャラを作った広告展開や、Y!mobileのふてニャンのキャンペーンなど、いろいろやっている。

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