サムスンが投じる“変化球”スマホ「Galaxy Active neo」の秘密開発陣に聞く「Galaxy Active neo」

» 2015年11月06日 22時04分 公開
[石野純也ITmedia]

 ドコモの冬春モデルとしてラインアップされたサムスン電子製「Galaxy Active neo」は、MIL規格対応のタフネスモデル。高い耐衝撃性を備えているのはもちろん、寒冷地や高温環境下での使用などの汎用性もあわせ持つ1台だ。

 サムスン電子は、これまでも「GALAXY S5 Active」を投入してきたが、こちらはハイエンドモデルの「GALAXY S5」をベースにしているのに対し、Galaxy Active neoは「Galaxy Xcover 3」という海外モデルをもとに開発されている。スペック的にはミッドローといったところだが、その分、価格は抑えられている。

photo 「Galaxy Active neo」

 このGalaxy Active neoの開発秘話を機構設計を担当したベク・ウォンソク氏と、デザインを担当したハン・ウンス氏に聞いた。なお、インタビューは韓国・ソウルのサムスン電子本社でプレスツアーの一環として行われたもので、両氏は報道陣からの質問に答えた形となる。

photo デザイン担当のハン氏(左)と、機構設計担当のベク氏(右)

「屋外での片手使い」を考慮

photo ハン氏

―― 耐衝撃性を備えたスマホというとゴツめなデザインの端末が多かった中で、最近では普通のデザインの端末も増えています。この機種のデザインは、どのような層に向けているのでしょうか。

ハン氏 年齢層というより、ライフスタイルを想定してデザインしました。オフィスで働いている方というよりも、どちらかというとアウトドア向きです。職業でいえば、宅配をしている方のように、頑丈なものを持って外で活動する方を想定しています。

―― そういった方を想定したときに、なぜこのようなデザインに落とし込んだのかを教えてください。

ハン氏 ラグド(rugged:丈夫な)のセグメントとして、弊社にはGALAXY S5 Activeもありますし、Galaxy Active neoもあります。フラッグシップを利用したい方がいる一方で、屋外で片手で使うというニーズがあるとも考えています。そういったニーズを踏まえて、こうのデザインになりました。

グローバルモデルとの違い

photo ベク氏

―― ベースモデルとして、海外ではGalaxy Xcover 3が存在します。日本のGalaxy Active neoとの違いはどこにあるのでしょうか。

ベク氏 まず機構のことからお話ししますと、ベースは同じです。一方で、変更されている点もあり、例えばGalaxy Xcover 3はNFCですが、Galaxy Active neoはFeliCaが搭載されています。こうした点で、厚さに差分が出ています。

 ハードウェアにも変更があります。カメラやチップセットも違うため、Galaxy Xcover 3と同じ品質を担保できるよう、気を付けました。

 また、グローバルモデルとチップが変わっている部分もあるため、同じ機構でも発熱するポイントが違います。そこで発熱する部分により空間を多く設けるなどの工夫はしています。

―― 具体的には、どういったところに気を付けたのですか。

ベク氏 ラグド端末なので、一般的なスマートフォンよりも高い品質管理が必要になります。試験をする数を増やしたり、(部品の)スペックを高めたりという点で気を配っています。

―― デザインについてはいかがですか。

ハン氏 デザイン的な差分という意味では、まずカラーが変更されています。また、FeliCa搭載により、端末のセットサイズが上がっているため、デザインは若干ですが修正してあります。

―― カモ柄(迷彩柄)は日本だけのものなのでしょうか。

ハン氏 そうですね。

photo カモ柄を採用したCamo White(左)とベーシックなSolid Black(右)

―― この柄を、日本用に選んだ理由をお聞かせください。

ハン氏 カモ柄は、もともとは軍人が身を隠すために使っていたものですが、最近ではファッションとしても流行しています。そこからコンセプトを持ってきています。

 GALAXY S5 Activeにもカモ柄はありますが、こちらのものは一段進化した、デジタルカモです。グローバルでは、アメリカ(北米)のキャリアから出ているGalaxy S6 Activeと同じパターンですが、Xcover系の機種としては唯一のものになります。

―― 背面のカバーを取り外すことができますが、これはやはり耐衝撃性能を保つためにこのような仕様にしたのでしょうか。

ベク氏 いえ。基本的にバッテリーカバーを外せるかどうかは、商品企画の観点です。機構担当としては、外れても外れなくても、品質やスペックは同じにしなければなりません。今回は屋外で長時間利用することが多い点を考慮して、カバーが外れるタイプになっています。一体型は一体型で苦労があるので、ここは一長一短ですね。

―― 以前よりカバーが外れにくくなったと伺いました。

ベク氏 日本のユーザーの方々が外れにくい仕様を希望していたので、グローバルよりも若干硬めにしています。(編注:サムスン電子によると、カバーが外れやすい点に不満の声が上がったのは、日本だけだったという)

photo 最近のスマートフォンでは珍しく、カバーは取り外しが可能

MIL規格よりも過酷な環境でテスト

―― MIL規格対応ということですが、難しかった部分を教えてください。

ベク氏 苦労したのはアイシングです。端末を凍らせて溶かす、凍らせて溶かすを何回も繰り返しました。凍った状態ではもちろんですが、一度凍ってから溶けた状態でもきちんと動作しなければならないので。水分が出るので、ここが一番苦労した部分です。

 バッテリーのカバーを外せるため、凍った過程で加圧される可能性もあり、フックの部分にも影響が出ます。このバランスも考慮して設計しました。

―― 実はMIL規格を上回っているということもあるのでしょうか。

ベク氏 MIL規格は公開されているのでそちらを参照していただきたいのですが、試験は、それ以上に過酷な環境で実施しています。例えば、床の材質はいろいろなものを想定してテストしていたり、MIL規格よりより高い位置から落下させたりしています。

取材を終えて:サムスンの“変化球”がどこまで支持されるか

 Galaxy Active neoは、単にグローバルモデルを日本に導入したのではなく、さまざまな部分に日本向けの特別仕様が入っていることが分かった。スペックは高くないが、そのぶん価格は押さえられる。こうした点を考えると、個人利用だけでなく、法人利用にまで広がりを見せるかもしれない。実際、端末も、そうしたユーザーを意識したデザインになっている。

 一方で、チップセットはもちろん、ディスプレイの解像度やカメラなども、最新モデルより見劣りする。性能が底上げされていることもあり、普通に使うぶんには十分なレスポンスだが、ハイスペックが好まれる日本市場で、どこまでユーザーに受け入れられるのかは未知数だ。サムスン電子が投入した“変化球”がどのような成果を残せるのか。発売後の動向にも、引き続き注目していきたい。

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