“生活を変える”コンセプトに合致――トリニティが初スマホにWindows 10を選んだ理由SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/4 ページ)

» 2015年12月14日 12時30分 公開
[石野純也ITmedia]

Windows 10 Mobileでスマホを作ることにした経緯

―― なるほど。規模に見当たったコスト構造になっているというわけですね。しかし、なぜ、Windows 10 Mobileだったのでしょうか。

星川氏 タイミングとしては、2015年の5月に、キャリアと端末が一緒だったところを、別々にしなさいという話(SIMロック解除義務化のこと)があり、端末は端末として選べるようになってきています。しかも、Windows 10 Mobileはまだ新しいOSなので、同じスタートラインに立てます。

 例えば、今さらGoogleさんのAndroidを作ろうとしても、恐らく「ハーン? トリニティ?」と返されてしまうだけだと思います。Microsoftさんなら、ローンチカスタマーとして、いろいろとサポートしていただける。そのタイミングもよかったので、始めています。

 また、もともとはケースメーカーとしてやってきて、NuAnsを始めて、ケーブルや照明で、生活の形が変わることをやっていますが、Continuumを含めて、そこにマッチするのがWindows 10 Mobileだったというのもあります。

―― Windows 10 Mobileは置いておくとしても、そもそも、なぜスマートフォンを作ろうと思ったのでしょうか。

星川氏 トリニティの創業は10年前(2005年)で、その時は輸入代理店をしていました。最初は他の人たちが作ったものを、輸入していたわけですね。ただ、実際にお客様と話している中で、スピード感、製品とニーズや価格がだんだんとマッチしてこなくなりました。だったら自分たちで作った方がいいと、オリジナルで「Simplism(シンプリズム)」を始めたのが、8年ちょっと前のことです。

 今も(トリニティは)小さい会社ですが、当時は数人でやっていました。ケースは参入障壁が(数名規模の会社でもできるぐらいに)低いといえば低い。中国の工場が金型を所有していて、それで作ったケースにロゴを入れているだけ、という会社がある中で、自分たちのオリジナリティを出そうと(Simplismを)やってきました。広島の職人さんに作ってもらった3万円、4万円もするものや、生地から自分たちで開発するなど、いろいろなことに挑戦しています。

 とはいえ、ケース(だけ)だと、今までに見たことがないよね、というものは正直もう出てこないかもしれない。その次の何か新しいことを考えたいと思いました。ケーブルやモバイルバッテリーは他の人に委ねている状況でしたが、金属(筐体)のものが多く、カバンに入れると他のものが傷つくから巾着に入れていたりする。Appleですら、ケーブルはコネクタにビニールの被膜がついたもので、そこから脱却した製品がありません。あんな長さが本当に必要なのかというのもありますね。

―― 確かに、Apple Watchの充電ケーブルは「長い!」と思いました(笑)。

星川氏 多分、皆さんもそう思っていたし、私もそうです。モバイルバッテリーもそうですが、もう少したたずまいを、リビングやソファ、ベッドサイドに合ったものにして、「ガジェット、ガジェットしていない」ものが必要だと感じました。革小物や木など、素材にこだわり、手帳、ペン、メモ帳になじまない物を変えたいというのがありました。

 そこで始めたのが、NuAnsのケーブルやバッテリーです。照明は、僕自身が欲しかったものがなかったので、作ることにしました。つまり、自分の生活の中にいてほしいものが、NuAnsなんです。これで、iPhoneに対しては「New Answer」を示したつもりです。おかげさまで、デザイン賞もいただき、ある程度いろいろなお店で展開できました。

 ただ、日本ではiPhoneが圧倒的なシェアで、50%ほどですが、言い換えると50%はiPhoneを使っていません。その50%には、同じような(NuAnsの)世界観を提供できていないのです。iPhoneは不動の存在だとしても、逆の50%を見渡すといろいろな端末があります。そこで、2015年は1月にCESに行き、2月にMWC(Mobile World Congress)に行き、Apple以外が出展している一通りの端末を見ました。ただ、一通り見た上で、やはり、みんな似ている。Appleのフォロワーになってしまっているのです。

 どれも金属、ガラス、プラスチックを使っていて、この3つをみんなが使い続けています。Appleも金属から樹脂になり、ガラスを使ってからもう1回金属になっています。一時期は、「iPhone 5c」でプラスチックをやっていたこともあります。この3つ(の素材)を、ちょっと変えたい。何か、手触りや質感を提供できるのではないかと考えるところから始めました。スマートフォンなら、中心になるものが作れますからね。

Lightning端子付きLEDライト「TILE」Lightning端子・スピーカー付きLEDライト「CONE」 Lightning端子付きのLEDライト「TILE」(写真=左)と、Lightning端子・スピーカー付きのLEDライト「CONE」(写真=右)は、星川社長が「欲しいもの」としてNuAnsブランドで作った。なお、NuAns NEOの発売に合わせて、Lightning端子をUSB Type-C端子に変更したものも発売する予定

―― その中で、Microsoftさんとの出会いがあったわけですね。

星川氏 Microsoftさんは、OEMチームがサポートしてくれますからね。Windows 10 Mobileの端末を作れるODM(※)をリスト化していて、ここはこういう仕様が得意、ここは日本での販売実績があるなど、いろいろなアドバイスやご紹介をいただき、そこを1社1社回っていきました。

※Original Design Manufacturing:委託者の要望に添う形で製品の設計・開発から製造までを行うこと。

 ご存じのように、中国に行くと何百、何千という単位でODMがいるカオスな状態です。その中で、Microsoftさんは技術提供もされ、(ODMの)規模や得意な分野をちゃんとカテゴライズした上でご紹介しています。よく分からない状態で展示会に行き、1社1社回っていくのとは次元が違うスピード感で(ODMの選定を進めて)いけます。MicrosoftさんのCTE(チャイナ・テクノロジー・エコシステム)という仕組みがあったおかげで、スクラッチ(全くのゼロ)から作ったにしては早く作ることができました。

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