端末に目を移すと、2016年は話題性の面で、ミッドレンジ端末が注目を集めた1年だったといえる。これは、MVNOの市場が拡大しているため。もともとの通信料が安いMVNOでは、MNOのように端末購入に対する割引を付けておらず、「実質価格」のように割安に見せる手法が取りづらい。結果として端末の“素の価格”が浮き彫りになり、MNOで主流の7万〜10万円程度するハイエンドモデルはヒットに恵まれていない。
現状で主流になっているのは、3万円前後のミドルレンジモデル。2014年発売したASUSの「ZenFone 5」に続き、同じASUSの「ZenFone 2 Laser」やHuaweiの「P8lite」、FREETELの「雅(MIYABI)」など、好調な売れ行きを示す端末が増えている。メーカーの新規参入も相次ぎ、HTCやTCL(ALCATELE ONETOUCH)、Acerなどが新たにSIMロックフリースマートフォンを発売したほか、2014年はテスト的に端末を投入していたZTEも、ラインアップを大幅に拡大した。
この動きはAndroidだけにとどまらず、Windows Phone、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンにも波及した。Windows 10 Mobileの登場に合わせ、FREETEL、ヤマダ電機などが端末を発売。マイクロソフトのイベントでは、VAIOやトリニティなど、6社が開発意向を表明するなど、市場が拡大しようとしている。Windows 10 MobileはPCのWindows 10と共通のユニバーサルアプリが利用でき、法人市場からの引き合いが強い。まずは、このニーズに応えていく格好で、各社が端末を投入する予定だ。
一方で、新規参入が相次いだことで、クオリティの幅が広がっていることもうかがえる。ブランドをVAIOから借りたものの、あまりにも“普通”の端末で名前負けしてしまった「VAIO Phone」、安易なコラボレーションに走った「エヴァスマホ」、技適未取得のまま発売してしまった「UPQ Phone」などは、ユーザーからの反発も大きかった。
その意味では、キャリアのコントロールがきき、一定のクオリティを担保していた(それでも、スマートフォン黎明(れいめい)期には当たり外れもあったが……)以前より、ユーザーが端末を選びにくくなっているといえるのかもしれない。
また、ミドルレンジに端末が集中することで、端末ごとの差が出しづらくなっている。3万円前後だとどの機種もおおむねスペックは同じで、HDディスプレイを搭載し、チップセットはSnapdragonの400番台で、メモリは2GB程度……と、それぞれの端末の特徴が薄いのだ。もう少し高いレンジの端末は、デザインなり、付加機能なりで特徴を打ち出せているため、こうしたところまで市場が広がってくるのかは、注目しておきたい。
今はまだMVNO市場向けの端末といった色合いが強いミドルレンジ端末だが、この波は、MNOにも波及するはずだ。総務省のタスクフォースでは、過度なキャッシュバックが問題視されており、とりまとめには「実質0円」も好ましくないと記載されていた。各キャリアが、これをどこまで反映させた施策を展開するのかは未知数だが、少なくとも、今よりは割引額が減っていくことになるだろう。そうなれば、MNOにも“素の価格”が安い端末が求められる。各社とも徐々にミドルレンジの端末を増やしているが、2016年は、この傾向に拍車が掛かる可能性がある。料金だけでなく、端末についても2016年は激動の1年になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.